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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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ゴドアへの道

「ソフィア殿は少し背が伸びましたね」


「フフ、まだまだですわ。背が低い悩みは当分続きそうです」


「ははは!まだ、これからですよ。フランツ殿もお変わりないようで。ケガをしたと聞きましたが、もう身体のほうは大丈夫なのですか?」


「ああ、まぁな。お陰でこの国を平定する戦にゃ参加出来なくてよ。つか、相変わらずよく知ってんな?」


「商人にとって情報が何よりの武器、でしたよね?」


 マリアがにこやかにジェルモのかつてのセリフを真似ると、ジェルモは苦笑した。


「いやはや、覚えてらっしゃいましたか」


「もちろんです。こうしてこのメンバーで話してると、少し懐かしい気もしますね」


 マリアが言ってるのは、ローレンツの王都ヴァレンシュタットでの会合のことを言ってるのだろう。ジェルモの脳裏にアルス救出のために集まった時の記憶が蘇った。


「あの時は苦労しました。ですが、私がアルスさまに投資させて頂いた分以上の見返りがありそうですね」


「あはは。これが見返りと言っていいのかどうか・・・・・・。でも、助けてもらって感謝してるよ。それで、今回の話なんだけど。出来れば早急にゴドアと国交を結びたい」


「率直に申し上げますが、帝国に対しての牽制をなさりたいのですね」


 アルスは短く溜め息をついた。さすが、ジェルモだ。下手に誤魔化すより腹を割って話したほうが良さそうだ。


「まさしく、その通りだよ。四方を敵に回したまま帝国まで相手にはとても出来ない。まして、経済活動は——」


「間違いなく彼らは妨害するでしょうね」


 ジェルモの言葉にアルスは頷いた。


「それともうひとつ懸念がある。誓いの聖騎士団セイント・オースリッターの動きもわからない」


「帝国は二重構造ですからね」


「なんだその二重構造ってのは?」


「帝国のヴラディスラフ皇帝とガーネット教の教皇イゴール・ドゥラスキンは、ほぼ同等の権力を有しているのです」


「ふたり王様がいるみたいな感じってことか?そうなるとどうなるってんだ?」

フランツの質問にソフィアが代わって答える。


「つまり、帝国軍は皇帝の下知で動くけど、誓いの聖騎士団セイント・オースリッターは教皇の下知でしか動かないってことですわ。でも、それだと帝国の動きはすごく読みにくくなりますわね」


 ソフィアの説明にジェルモは頷いた。


「面倒くせぇ国だなぁ」


「アルスさま、帝国は我が国がファニキアと正式に国交を樹立すれば下手に手出しはしないと思われます。ですが、教皇の動きまでは抑えられるかわかりません」


「わかってる。今は詳しく話せないけど、その点はミラとも話をして、すでに動いてもらってる」


「そうですか」


「それと、兄さんだけでなく、ルンデルのゴットハルト王ともすでに話をつけてあるんだ。彼もゴドアとの経済交流を望んでる」


「それは願ってもないことです。それでは、貴国のためにも出来るだけ急いだほうが良いですね。準備が出来次第、ゴドアに向けて出立致しましょう」



 こうして会談はまとまり、ジェルモ達は二日後にファニキアを出ることになった。ゴドアへ向かうメンバーはソフィアとジェルモ、加えて護衛役としてフランツである。彼らは旧レーヘの北側からヘルセを抜けてゴドアへ向かうことを危険と考え、一旦ローレンツに渡りルンデルを経由した。


 すなわち、旧レーヘの東側からローレンツのヴァール城を通り、最北端の城フライゼン城を抜けてルンデルに入るルートだ。フライゼン城を抜けると、東側には、かつてゴットハルトが北の大侵攻の拠点としていたモンシャウ城が見えてくる。


 フランツたちはルンデルに入国する際はファニキアから来たと伝えるだけで、特に何も言われず通過出来た。これも、アルスが先んじてルンデルと国交を結んだ成果である。モンシャウ城を北に向かえば、いよいよヘルセ国に入ることになるため、その日は城塞都市モンシャウで休むこととなった。


 陽も傾きかけた頃、モンシャウの城門に辿り着く。城塞都市モンシャウは、ルンデルの北の守りを担う要衝だった。巨大な石壁は苔むし、夕陽を受けて赤銅色に輝く。門の上には鉄製の棘が突き出し、かつての侵攻を退けた無数の傷跡が刻まれている。門をくぐると、馬車の車輪が石畳を鳴らし、街の喧騒が一行を包んだ。


 市場からは焼き立てのパンの香りと、鍛冶屋の鉄を打つ甲高い音が響き合い、商人たちの呼び声が重なる。通りにはルンデルの毛織物や毛皮を積んだ荷馬車が列をなし、武装した衛兵が鋭い目で往来を見張っていた。だが、ゴットハルトの統治下に入ってからのモンシャウは、軍事的な緊張感だけでなく、商業の活気も取り戻していた。通りを抜ける風には、市場のスパイスと馬の汗が混じった独特の匂いが漂い、フランツが思わず鼻を鳴らした。


「こりゃ、ヴァレンシュタット並みに人が溢れてんな。ゴットハルトのおっさん、案外やるじゃねぇか」


「フランツさま、声が大きいですわ」とソフィアが小声でたしなめるも、彼女自身、市場の色鮮やかな織物の屋台に目を奪われていた。


 一行は門番兵にローレンツから来た商人だと名乗った。ジェルモの話によれば、商人と聖職者は世界中を放浪するのが常だそうだ。だからというわけではないが、とりあえずこう名乗っておけば何処へ行っても敵国の使者と疑われることは少ないらしい。


 ルンデルは既に敵国ではないが、無駄な面倒ごとを避けるためにジェルモの提案でそう名乗ったのだ。そして、何事も無く門を通過しようとしたところで、呼び止められてしまう。



※ガーネット教:誓いの騎士団(7師団)を有するザルツ帝国の国教。

※アルスの兄:ローレンツのフリードリヒ国王を指す 


挿絵(By みてみん)


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