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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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新たな脅威

              新たな脅威


 

 エルム歴738年5月。アルスにもとに緊急の使者が来る。


「アルス陛下、エヴァールト・フォン・バイエルライン筆頭将軍の部下でジスと申します。お会いできて感謝いたします」


「エヴァールト将軍・・・・・・」


「はい。ゴットハルト陛下の筆頭将軍です。私は元々バートラム大将軍の副官をやっていたのですが、今は彼の下で副官をしております」


 アルスはバートラムの名前に反応した。バートラム大将軍との激戦で、副官は捕虜になってなかったはず。そのときの記憶が蘇り、アルスに様々な想いが去来した。


「バートラム大将軍の副官・・・・・・」


「いえ、お気になさらず。国同士の戦の結果に過ぎません。それよりも、ヘルセが動きました。それで、アルス陛下の手を貸して頂きたいとの思いで参った次第です。ここにゴットハルト王よりの書状もお持ち致しました」


 アルスはちらっとミラの方を見ると、彼女は頷いた。彼らがいくつか推測を立てたひとつの未来が、嫌な形で確定したことを意味する。



 時は遡る。エルム歴737年10月、アルスがレーヘを平定した直後から周辺国の動きが慌ただしくなってきていたのをアルスは感じ取っていた。まだゴタついている時期である。ミラが間に入って国内の統治に手を貸してくれていなければ、もっと難儀したのは明白だった。ミラの政治的手腕は、アルスよりも大胆且つ、的確でもある。そのミラからアルスに提案があったのがアルスがようやくレーヘを平定した直後だった。


「アルスよ、この国はまだまだ生まれたてのヒナみたいなもんじゃ。遅かれ早かれ間違いなく周辺国は動いて来るじゃろう」


「そうだね。西にハイデ、北にロアール、東にヘルセ。攻め込まれない理由を探す方が難しいかも」


「そうじゃな。じゃが、それよりもっと気をつけねばならぬ相手がおる」


 ミラは組んでいた腕をほどいて、執事のシャルがカップに注いだ紅茶を口に持っていく。アルスもミラが言わんとしていることはすぐに察したが、アルスが答えるより早くシャルがその答えを言った。


「帝国ですね、ミラさま」


「うむ。最も警戒すべきは彼の国じゃ。どこぞの馬の骨が分捕ってファニキアなどと勝手に名付けたんじゃ。帝国がそのまま放っておくわけがない」


「ミラさま、馬の骨の前でそのような言い方はいけません」


「あのー・・・・・・色々突っ込んでいいかな?」


 アルスが張り付いた笑顔をピクピクしているのを見たミラがシャルを叱責した。


「シャル、おまえが口を挟むと話がややこしくなる。引っ込んでおれ!」


「ミラも大概だけどね!」


「ん?ああ、いや、すまんかったの」


 ミラは大袈裟に咳ばらいをすると、話を続けた。


「話を元に戻すが、帝国が簡単に手を出せない動きが早急に必要になる。そこでじゃ、ルンデルとゴドア。この両国とひとまず国交を結ぶというのはどうじゃ?」


「なるほど。ルンデルもゴドアも3大ギルドの活動をほとんど国内で認めていない。しかも、ゴドアは大国だ。この国がファニキアを国として認めてしまえば、帝国も手が出しづらくなるっていうことだね?」


 そこまでアルスが話すと、ミラは「そうじゃ」とばかりに大きく頷いた。


「もうひとつは経済圏じゃ、3大ギルドを追放した後は悉く邪魔をされてきた。ルンデルの新王ゴットハルトも長年蔓延ってきたユーベルタール北方商会を追放したと聞く。恐らく苦労しているじゃろう」


「ゴドアは3大ギルドのやり方を嫌って、独自の経済圏を築くために長年3大ギルドと対立してきている。そこにルンデル、ローレンツ、ファニキアで新しい経済圏を築くことが出来れば、あるいは——」


「ゴドアは恐らく乗って来るはずじゃ」


 ミラはニヤッと笑う。アルスはミラの考えに感嘆した。さすがに、たった一州で一国に抵抗し続けて来たシャルミールの魔女と呼ばれるだけはある。僕は戦略や戦術に偏っているけれど、ミラの場合は政治や経済にも通じてる。そして、3大ギルド追放後の政略は彼女の体験から来るものだ。ゴットハルト王にも十分メリットがある話だ。


「ただ、儂はゴドアとの繋がりはまったく持っておらん。そこがひとつ問題なのじゃが・・・・・・」


 ミラの呟きにアルスは明るく答えた。


「それなら大丈夫。頼れる商人がいるんだ!」



 それから二週間の後、連絡を受けたゴドアの大商人ジェルモ・シャマーリは、褐色の肌に白装束といういつものスタイルでアルスのもとを訪れていた。アルスは謁見の間で簡単に挨拶を終えた後、ジェルモを改めて会食に招くことにした。


「アルトゥース殿下、見違えましたな。いや、失礼。アルトゥース陛下とお呼びすべきですね」


「アルスでいいよ。やること多くて戴冠式もまだだし、まだ正式に王になったわけでもないんだけどね」


 ジェルモと向かい合うようにして座っているアルスの隣には、マリア。そして、同じテーブルをフランツ、ソフィアが囲んでいる。 



※バートラム大将軍:ルンデルの3大将軍のひとり。エルンストが一騎打ちの末に倒した。

※ジェルモ:ゴドアの大商人。アルスが無実の罪で投獄された際に助力してくれた人物

※エヴァールト将軍:ゴットハルト王の腹心の部下、他にアンリ、ジャックがいる。

いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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