新王国樹立
「あの、ミラ侯爵、それは・・・・・・?」
「黙っとれ。今は儂とフリードリヒ王との話じゃ」
あのー、僕の意志の確認とかそういうのはないの・・・・・・?アルスが困惑していると、フリードリヒは豪快に笑い始めた。
「これが噂に聞くシャルミールの魔女か。なるほど、合点がいった」
ミラは黙ったままフリードリヒの様子を、腕組みをしながら見ている。彼女の様子を見ていてわかることがある。とても人の下に立つような人物ではない。そんな彼女が僕を推すとは・・・・・・。
「わかった、その要求受け入れるとしよう。元々アルスがいなければ我々は亡国の危機だったのだ。ただし、私からもひとつ条件がある」
「なんじゃ?」
フリードリヒからの条件にミラが一瞬、怪訝な表情を見せる。フリードリヒはその彼女の表情を見ながら構わず続けた。
「アルスを補佐してやってくれないか?アルスがレーヘを治めるにはいささか荷が重いだろう。貴女がいてくれたらきっと助かると思うのだが」
「もちろんじゃ。端からそのつもりじゃからな」
ミラはフリードリヒの条件を聞いて、破顔一笑する。アルスの未来は、完全にふたりの間で決まってしまった。
「おいおい、お嬢!それってつまりお嬢はアルス王子の傘下に入るってことかよ!?」
ジャンが驚いて、リザ将軍やシャル、エルザたちを見る。彼らは呆れながらも笑っていた。ミラは言い出したら聞かない。そのことは長年彼女に付き合ってる彼らが一番よくわかっていたことだった。
「まぁ、なんとなくこうなるんじゃないかぁと私は思ってましたよ」
「そうだな、ミラさまの判断なら私は従うまでだ」
エルザはニヤニヤしながら感想を漏らすと、リザも頷いた。
「おいおい、俺だけ何にも気付かなかったってのか?」
「儂はアルスが気に入った。そのほうがこれから面白そうじゃしの。じゃが、シャルミールの自治は譲らんがの」
ミラはニヤッと笑いながら戸惑うジャンを振り返った。
アルスは、自分の頭の上で勝手に自分の人生を決められたことを抗議したが「ここまでやった責任を取るのが筋じゃ」と言ってミラに一蹴されてしまう。フリードリヒとしては王位継承争いで落とした国力を回復させることに注力したいという思惑もあった。ふたりから言われ、アルスは不承不承、受け入れるのだった。
その後、フリードリヒは王都ヴァレンシュタットに帰還した。残ったアルスとミラはそのまま連合軍を維持して次々とレーヘの州を平定していく。リヒャルトとフリッツは彼らの希望で、そのまま残ってレーヘの平定のために尽力してくれた。こうして三か月後、異例の速度でレーヘは完全にアルスの統治下となる。
アルスは新しい国の名をファニキアと名付けた。古文書に出て来た古い帝国の名前である。それから一年、再び初夏が訪れ新しく生まれた国はさまざまな経験をすることになる。シャルミールの魔女ことミラは、アルスを補佐し次々と新しい改革を行っていった。
新王国を樹立した少年王アルス。時代はこのアルスという少年を中心にして、大きく動き出していく。エルム歴738年というこの年、大陸は大きな変化の波に飲まれつつあった。
アルスは戴冠し、この一年近くで無事マリアとの婚姻を果たす。新たに生まれた国の王と妃。結婚式は盛大に行われ、もちろん兄であるフリードリヒも駆けつけ祝福した。まさにファニキアの希望となったアルスだが、まだ解決していない課題が山積みである。国内の問題に加えて、3大ギルドやガーネット教、それに帝国の脅威は消えたわけではなかった。
第三部 完
これにてミラ編終了となります。
やっと、タイトル回収出来ました。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
尚、次回第四部からは一日1回の投降に戻ります。よろしくお願いします。
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