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レーヘの王

 その後は細かい部分を詰めていき、次の日の早朝には出発した。詳細を詰めるなかで、レラ湖の北に兵を伏せ東の奥にも兵を置くことになった。その日の夕刻が迫るなか、レラ湖の西でアルスとミラはラザール軍と相対する。


 彼らは500の兵を引き連れてラザール軍に迫った。西日に照らされた旗がローレンツ王家とシャルミール州の紋章を浮かび上がらせる。それが目に入ったのか、ラザール軍は進軍を止める。ミラはサシャとシャルを伴い、声が届く距離まで馬で出向く。近くまで行くとミラは思い切り息を吸い込み叫んだ。


「おいっ!ブタの王よ、よく聞けぇ!シャルミールの魔女が貴様を豚小屋に戻してやる!今のうちに薄切りがいいか、挽き肉が良いか考えておくがいい!!」


 ミラの声は風に乗ってラザール軍にまで届いた。もちろん、ラザール王の耳にも伝わる。ミラの声が聞こえるや否や、ラザールは全身がわなわなと震え始めた。早口で何かを言ってるがよく聞こえない。それがだんだんと大きくなってくると、周囲の兵はごくりと唾を飲みこんだ。


 ミラは振り向いてサシャに合図を送る。その合図を見てサシャはニヤッと不敵な笑みを浮かべた。背中から巨大な弓を取り出し矢をつがえると、ラザール軍に向かって放つ。巨大な矢がラザール軍の兵士を数人まとめて貫いた。矢の落ちた周囲からどよめきが沸き起こる。その光景を見たラザール王の怒りは頂点に達した。


「あの売女めっ!裸にひん剥いてありとあらゆる恥辱を味わわせ、皮を剝いで城門に吊るしてやる。そうして一枚ずつ爪を剥がして、手足をもいで最後に頭を斬り落としてやる・・・・・・!」


 ラザールのなかでミラに対する一通りの復讐の予定が組みあがると、横にいる兵士の脇腹を蹴り飛ばした。


「何をしているっ!?追うぞ!!追って奴らを八つ裂きにしてやる!」


 ラザールが飛び出し、それに続いてドミニクと騎馬隊が慌てて追いかけるような格好でアルスとミラに迫る。


「まさか、こんな簡単に引っ掛かるなんて・・・・・・」


 半分呆れながらアルスは呟いた。それを聞くと、ミラはニヤリと笑ってアルスに言う。


「だから言ったじゃろ?信頼できるブタだとな!」


 アルスはそれを聞いて苦笑いするしかなかった。アルスとミラは東にあるレラ湖へと馬で駆けていく。夕陽が傾きかけた頃にはラザール軍はレラ湖の北側から隘路へと侵入した。湖面は夕陽の光を反射して、キラキラと美しい光を放っている。北側は丘になっており、鬱蒼とした木々が太陽の光を拒んでいた。湖面と丘に挟まれるようにして細い道が通っており、そこをラザールの騎馬隊が走り抜けていく。その異様さにようやく気付いたのは息子のドミニクだった。ドミニクは先頭を駆ける父に向かって声を掛ける。


「父上!この場所は何かおかしな雰囲気がしませんか?」


「何を言ってる!?奴らにはもう逃げ場がないのだ」


 ラザールは即座に否定したが、息子の不安そうな顔を見て改めて周囲を見回した。すぐ南側は湖であり、すでに夕陽は沈みかけている。草木に覆われた北側の丘は不気味なほど静まり返っており、傾きかけた陽の光では、そのなかまで見通すことは出来なかった。


「父上」


 ドミニクがもう一度ラザールに話しかけようとしたとき、後方に続いていた騎馬隊から悲鳴と叫び声が沸き起こった。続いて複数の剣戟の音が各所から聞こえ始めると、水しぶきと共に何人かが落ちる音が聞こえる。ラザールの顔色が真っ赤になると、周囲に向かって怒鳴り散らした。


「奴ら伏兵などと汚い真似を!貴様らボンクラどもは揃いも揃ってこうなることを気付けんかったのか!?ドミニクしか気付けないとは使えないクズどもめっ」


「父上、こうなれば退路を断たれる前に戻りましょう!」


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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