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エルザ

「アルスさまっ!」


「は、はい・・・・・・?」


「今回は、私が作戦考えていいですか?」


 アルスはエルザの圧に負けて思わず許可する。たぶん、バカにされたようで悔しいのだろう。ミラの紹介の仕方も良くなかったよなぁ、などと考えていたらミラも何故か焚きつけていた。


「よくぞ言った!それでこそ我が軍師じゃ。あっと驚く作戦で見返してやれ!」


「はいっ!ミラさま」


 なんか良い感じで連帯感出ちゃってるけど、この流れ作ったのはミラだよ・・・・・・?アルスが微妙な表情で見ていると、エルザが地図をまとめ始めた。


「アルスさま!ちょっとこの地図お借りしますね。向こうですぐ作戦考えて来ますので!」


 そう言って、地図を抱えて部屋の外に走り出す。かと思ったら、地図を抱えたままコケた・・・・・・。ミラの呆れた目と周りの哀れみの眼差しが彼女に注がれるなか、燃えるような瞳でキッと振り返ると再び地図を抱えて走っていった。それを見てリヒャルトが心配そうに呟く。


「あの、大丈夫ですかね・・・・・・あの子」


「まぁ、たぶん大丈夫じゃろ・・・・・・」


 部屋のなかには微妙な空気が漂ったが、しばらくしてエルザが地図を抱えて元気よく戻って来た。表情から察するに、どうやら作戦を思いついたらしい。おもむろに地図を机上に広げると意気揚々と説明を始めた。


「シャトンの北東すぐの場所にレラ湖という湖があります。この湖の北側は丘になっていて、湖との間には細い通り道しかありません。この丘に兵を伏せて迎え撃ちます」


「なるほど、それは良い作戦ですね。隣は湖、攻撃されたら敵には逃げ場もありません。兵を伏せるならこれ以上ない好条件です」


「確かに良い作戦だ。この場所ならラクに敵を殲滅できる」


 リヒャルトとフリッツが感心してエルザを褒めた。エルザはここぞとばかりのドヤ顔になっている。


「作戦は分かったけど、ヴァールからここまでは二日の距離だから、この湖なら明日には会敵するね。でも、どうやって引き込むの?」


 アルスが疑問に思ったのは、斥候から聞いていた敵の進路が、エルザが指摘するレラ湖からは少し西にずれていたからだ。ひょっとして、囮をやれとか言われるんじゃ・・・・・・。アルスがその質問をした瞬間、エルザが両手を組んでお願いのポーズをする。


「ミラさま、アルスさま!囮になってくれませんか?」


「・・・・・・ああ、やっぱり」


 アルスがげんなりしていると、ミラは豪快に笑って快諾した。


「いいじゃろう。どうじゃ、アルス王子?」


「わかったよ。でも、ラザール国王はそんな簡単に引っ掛かってくれるの?」


 アルスの問いにエルザとミラが勢いよく同時に答える。


「引っ掛かります!」「奴は信頼できるブタじゃ!」


 ちょっとミラの言ってる意味がわからなかったが、間違いなくラザールは引っ掛かるということなのだろう。


「ああ、なるほど。えと、その信頼できるブタっていうのは?」


「期待を裏切らないバカ君主ってことじゃ!」


「・・・・・・あー、なるほど」


 アルスは思わず苦笑いする。ミラとエルザの間で、ラザール王が今までに犯した数々の失態について悪口合戦が始まっていた。君主と臣下の間で、いったいどんな信頼関係が成り立っているんだろう。そんなことを考えていたら、いつのまにかミラがアルスの傍に立っていた。


「アルス王子、今回はエルザの策に乗ったわけだが。彼女が言わなんだら、どんな策で挑んだんじゃ?」


 そう問われてアルスは返答に困った。正直、考えていないわけではなかったがエルザのような罠を張ることは考えていなかったからだ。


「攻撃の戦術には大きく分けて迂回、包囲、突破の三種類があるんだ。敵の出方にもよるけど、僕が漠然と考えていたのは、突破だったよ」


「突破というのはなんじゃ?」


 アルスは少し考えてから説明する。


「突破というのは、相手の陣を突破して包囲したり裏を突くことかな?もちろん、そのまま突破出来ることは少ないから相手を崩す必要があるんだけど」


「なるほど。すると、前回アルス王子がやったのは包囲というわけじゃな?」


 アルスはミラの指摘に頷いた。あの戦術は第二次ポエニ戦争の戦術をアレンジしたものだ。


「エルザがやろうとしてるのはどれになるんじゃ?」


「迂回戦術だね。迂回することで、自分に有利な戦場を指定する戦い方だよ。でも、普通はこんな露骨なやり方しないけどね」


 アルスの困惑した感想を聞いて、ミラは愉快そうに笑った。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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