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勝利と苦悩と

 残ったマクシミリアン公爵は、全方位から聞こえる勝ちどきの声を聞いてその場で自死した。その情報が後方にいたジョゼ将軍に伝わる。


「マクシミリアン公爵が・・・・・・。では、私だけが生き残ったのか・・・・・・」


 ジョゼは、しばし言葉を失った。我が軍は4万いた。相手の二倍の兵力を擁して包囲され今や風前の灯だ。本来ならあり得ないことだ。ここまでの奇策、見たことも聞いたことも無い。ジョゼは周囲を見渡すと、4万いた軍勢は1万以下にまでその数を減らしていた。完敗だな・・・・・・。


「降伏しよう、これ以上の戦いは無意味だ」


 ジョゼの指示によって白旗が掲げられた。


「アルスさま、敵将が降伏を申し出ております!どういたしますか?」


 アルスは、その伝令を聞いてようやくホッと胸を撫で下ろした。


「受諾する」


 それを聞いた瞬間、サシャが喜びながらジャンプする。


「英雄アルス王子、バンザーイ!!」


「「「「「アルスさま、バンザーイ!!!!」」」」」


「ミラさま、バンザーイ!!」


「「「「「ミラさま、バンザーイ!!!!」」」」」


 アルスは、それを聞きながらどっと疲れが出ていた。周囲には敵兵の死体の山が累々と続き、血の匂いで溢れている。


『勝っても負けても業は積み重なる・・・・・・』


 アルスの脳裏にドルフの表情が浮かんでいた。


 歴史上、英雄と呼ばれる人物と虐殺者と呼ばれる人物の違いはたったひとつ。よりたくさんの『敵』を殺したか『敵以外』を殺したか、それだけだ。今回の戦、終盤はもはや戦闘と呼べる代物じゃなかった。酷い勝ちだな・・・・・・。アルスはため息をつくと、拳をぎゅっと握りしめた。


「アルスさま、大丈夫ですか?」


 いつのまにか隣にはマリアが立っている。アルスはマリアに気が付いて無理に笑顔を作った。


「うん、大丈夫だよ」


 マリアはアルスの目をじっと覗き込む。


「無理してますよね?」


「あ、いや・・・・・・」


 言葉では否定しつつも、アルスはマリアには隠し事は出来ないと思った。


「今回の戦いなんだけど・・・・・・」


「やり過ぎたって言いたいんですよね?」


「どうしてそれを・・・・・・」


 マリアは寂しそうに微笑んでアルスを真っすぐに見つめた。


「アルスさまの傍で、どれだけアルスさまのことを私が見てきたと思ってるんですか?」


 そう言いながらマリアは珍しく少し怒っているようだった。


「ひとりで抱え込まないでください。アルスさまが仲間を守ろうとしてるのは知ってます。でも、だからってひとりで出来ることじゃないですよ。辛い時は私にも分けてください」


 マリアにそう言ってもらえてアルスの心は少し軽くなった気がした。これからもずっとこの業とは向き合わないといけない。アルスは少しはにかんだ笑顔でマリアに感謝した。


「ごめん、ありがとう」




 ヴァール城は山城であり、攻め落とすのは容易ではない。攻めあぐねていたラザール王の元にレバッハからの報せが届いた。


「イヴニールが陥落しただと!?」


 報せを聞いたラザール王の怒りは激しかった。報せに来た兵士を何度も蹴りつける。


「愚物どもがっ!レバッハを落とすどころか、逆にイヴニールを失うだと!?どうやったらそんな失態を犯せるんだ!?」


「父上、私が行ってイヴニールを取り返して来ましょうか?」


 父ラザールの憤慨する様子を見ていた息子のドミニク王太子が提言するも、ラザールの怒りは収まらなかった。テーブルの上にあった大皿を兵士の頭に叩きつける。兵士は倒れ、大皿はバラバラになって天幕のなかに飛散した。


「いや、援軍などいい。奴らの失態だ、奴らに責任を取らす。マクシミリアンめ、余の期待を裏切ったこの罪は大きいぞ!」


☆彡おしらせ:第三部終わりまでしばらく一日二話の投降します。

いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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