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ラヴェルーニュのたたかい7

 ポッツォは何か言いたげな部下の言葉を遮り、それ以上の発言を許さなかった。そしてこのやり取りを通して怒りを激発した彼の精神は、理性を遠ざけることに成功してしまう。


「おいっ、弓を持ってる兵を集めろ」


「しかし、こんな密集したところで弓など・・・・・・」


「うるさいっ!早く集めろっ!」


「わ、わかりましたっ!」


 部下が慌てて弓を持っている兵士たちを集めると、ポッツォは密集している部隊のなかで弓隊に命じる。


「あそこで暴れてるオーラ持ちに向けて射るんだ」


 それを聞いた弓隊からどよめきが湧く。そのなかのひとりの兵がポッツォに疑問を呈した。


「しょ、将軍、お言葉ですが、前衛には我々の兵が戦っていますが・・・・・・」


「構わん。奴らを倒さねば犠牲はもっと増える!」


「し、しかし・・・・・・」


「つべこべ言わずにさっさとてっ!」


 ポッツォの剣幕に圧されて、弓兵たちは震える手で矢を打ち込んだ。無数の矢が後続部隊から放物線を描きながらアルスたちのいる最前線に落ちる。矢の大半は、前線で戦っているマクシミリアン軍の兵士たちの背中を突き刺した。


「な、なんで俺たちがいるのに後ろから矢が!?」


「ぐああ!い、いてぇ」


「ちくしょう、何考えてんだっ!?」




 あそこにいるのが指示を出した将軍だな。冷静な判断を失って、味方の兵士ごと僕らを殺すつもりか。三度も降伏を勧告したが拒絶された。あんな奴がいるから戦争が終わらないんだ!アルスは、オーラを展開して矢を防ぎつつサシャを見つけると指示を出した。


「サシャ、あそこにいる将軍を狙えるか?」


 サシャは、大袈裟な身振りで額に手をかざす。


「おー、あそこに見えるのがそうかなぁ」


「あいつを狙ってくれ、たぶん彼が総大将だ。彼を倒せばそれで終わる、もう終わりにしよう」


 サシャは、アルスの疲れた様子を眺めてニヤッと笑う。


「我らが英雄はお疲れのようですねぇ。んじゃ、このサシャさまが終わりにしてみせましょう!」


 サシャは、少し高さがある岩まで下がって登る。風に乗って血の匂いが流れて来た。サシャはその血の匂いを嗅ぎながら、意識をターゲットに集中させていく。900トゥルク、1バース近くも離れたところからの超長距離による狙い射ち。目を瞑って深呼吸を何回かすると魔素を身体に巡らせて強化する。


 エミールは、サシャの纏う空気が急速に変わっていくのを感じた。なんだろう?この感覚。川のせせらぎ、木々が風に揺れている・・・・・・。見たわけでもないのに、風景がサシャを通して伝わって来る。


 僕が集中してる時と似てるけど、それとも違う。彼女のは、もっとなんていうか・・・・・・。そうだ、自然と一体になってるんだ。エミールはそこまで思いを巡らせて、改めてサシャを見た。遠くの山々から川が流れ込み、木々が風にそよいでいる。彼女だけは血生臭い戦場とは、全く別の世界に立っていた。


 やがて、サシャはゆっくりと目を開ける。そして、巨大な弓に矢をつがえると限界まで弦を引き絞っていった。ギリギリと軋む音が弓から聞こえる。風が止んだ瞬間だった。


 ドンッ!!!という、発射音とともに続いて轟音のような風切り音が響く。矢は超高速で大気を斬り裂きながら真っすぐに飛び、ポッツォ将軍の胸を貫いた。


「ひゃっほーう!当ったりぃぃぃぃぃぃ!!!」


 アルスはポッツォ将軍が倒れたことを確認すると、サシャに声を掛けた。


「サシャ、頼む」


 サシャは親指を立てて、アルスに応える。


「オッケェー!」


 サシャは思いっきり息を吸い込んで叫んだ。


「敵将っ、このサシャが討ち取ったぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!勝ちどきを上げろぉぉぉぉぉ!!!」


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!」」」」」


 サシャの声は周囲の兵士に伝わり、兵士から兵士へと勝ちどきの叫びが伝播していく。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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