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ラヴェルーニュのたたかい

「それなら、我々は勝ちをみすみす逃すということになるではないか!」


 ニコラ伯爵が怒りで地団太を踏んでいるのを横目に、マクシミリアン公爵がジョゼに尋ねる。


「兵を分けて敵に当たるというのはどうなのかね?」


「情報によれば、イヴニールにいる敵兵の数は1万8000。ロアール付近にいた敵兵の数と合わせれば2万3000ほどです。少なくとも同数は欲しいところでしょう。そうなると、ここの包囲はもう出来ませんよ。それならいっそのこと全軍で叩くべきです」


「今のジョゼ将軍の意見についてはどう思うかね?」


 マクシミリアンが尋ねると、他の将軍も賛同せざるを得なかった。


「致し方ない。では、我々はイヴニール奪還を優先する。それにしても、敵がこんなに大胆な動きをするとは・・・・・・。そういえばジョゼ将軍、君が対峙していた連中はどうなったのかね?」


 マクシミリアンに尋ねられるとジョゼは首を横に振った。


「撤退しました。南の方角に向けて撤退していったので、我々も深くは追撃しなかったのですが。今考えると不気味ですね」


「魔女め!ジヴェルーニでは、卑怯にも我々の補給物資を狙ってきおった。今回も補給路を狙うとは小賢しい女だ!」


 ニコラが地図を乗せているテーブルを激しく叩く。ジョゼはニコラの怒り狂う姿を見て、頭のなかで考えていた。敗残兵によれば、敵はイヴニールから希望者を募って、わざわざこちらに逃がしている。なぜそんなことをする?レバッハの包囲を解かせて我々と戦うため?情報によれば敵の数は1万8000ほど。


 城塞都市の守備に割く兵士が3000だとすれば、ロアールから出て来た連中と合流したとしても2万だ。対して我々の戦力は4万。レバッハからの挟撃を狙ってるのか?いや、それは無い。奴らも食料が無ければ追撃することなど出来ない。どうにも敵の考えがよくわからない・・・・・・。いずれにせよ、数で勝る我々が有利なはず。場合によっては、アルル城との連携も図りながらイヴニールを奪還するのが最優先だ。


「ともかく、ヴァール城を包囲している陛下にもこの件は報せておく必要がある」


「公爵、一旦我々もヴァール城まで北上して陛下と合流するというのはどうだろうか?」


 ニコル伯爵の提言を聞いたマクシミリアンは溜め息交じりに首を振る。


「何を弱気なことを・・・・・・。相手の方が数が少ないのだ。陛下の御手を煩わらすようなことなど出来るはずがない」


「そうです。イヴニールを失った今我々は根無し草のような状態です。一刻も早く取り返さなくてはなりません」


 ポッツォ将軍にも諭され、ニコラ伯爵は押し黙った。こうしてマクシミリアン公爵は、夜のうちに軍をまとめて西へ引き返すことになる。もちろんレバッハには偵察をつけていたが、ジョゼ将軍の推測通り追撃隊が城から打って出るようなことは無かった。




               ラヴェルーニュの戦い



 次の日、両軍はレバッハとイヴニールの中間地点ラヴェルーニュと呼ばれる地方で相対する。ラヴェルーニュは北にポーヌ川が流れており、南側は丘陵地帯になっている。


 両軍はこの間に広がる平原に軍を展開した。ジョゼは敵軍が視界に入ると少し違和感を感じたが、その正体はわからなかった。特に伏兵をするような場所も見当たらない。敢えて言うならば、川と丘陵地帯の幅が少し狭いので騎兵の機動力が殺される。あとは、我が軍の布陣が縦に厚い布陣になることぐらいか・・・・・・。



 アルス・ミラ連合軍は、ヴェルナー・ガストン連合軍と合流してその数は2万以上になっていた。アルスは合流してすぐに、全部隊長を招集して軍議を開く。その軍議のなかで開口一番、アルスが言ったのは敵を包囲殲滅することだった。


「ホーイ、ホーイ?センメツ・・・・・・!?」


 ガストンが意味が理解出来ずにオウムのようなカタコト喋りになっている。それがミラのツボに入ったらしく、笑い転げていた。


「いやいや、お嬢!笑ってる場合じゃないって。いくらなんでも意味不明過ぎだろ。なんで相手の数のほうが圧倒的に多いのにこっちが包囲殲滅出来んだよ?」


「いや、まぁ。貴様の言いたいことはわかる。儂も初めて聞いた時は驚いたからな。しかし、ホ、ホーイ、セン、センメ・・・・・・アッハッハッハ!ダメじゃ!オモシロすぎるぅ」


「うーん、しばらくダメだなありゃ。ガストンの奴はむくれてるし、何がおもしれぇんだか・・・・・・」


 ジャンが呆れていると、アルスが苦笑いをしながら説明を進めていった。アルスが全てを説明し終わっても、ほぼ全員がポカーンとしている状態である。


「ジャン将軍、仕方ないですよ。私もこの場所に来るまでは半信半疑でしたから。こんな方法、普通の人は思いつきませんもん。だから説明されてもよくわかんないですよね」


「エルザの嬢ちゃんの言う通りだぜ。聞いても全くわからん!だが、勝てるんだなそれで?」


 ジャンがアルスに尋ねるとアルスは真顔で頷いた。第二次ポエニ戦争、雷帝と呼ばれた将軍の策をアレンジするって言ってもどうせ伝わらないだろう。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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