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必中必殺の矢

 ドレンはスラスに城の守備を頼むと、自らは2000の騎兵を率いてイヴニールの南に軍を展開した。


「『魔女の騎士団』か・・・・・・。ポッツォ将軍の情報によれば、相手はリザ将軍だという話だが」


「ドレンさま、私は一緒の戦場で戦ったことがありませんが、そんなに『魔女の騎士団』というのはヤバイ奴らなんですか?」


「ヤバイ奴らなんてもんじゃねぇよ。魔女が集めた精鋭中の精鋭だ。出来れば相手にしたくはなかった」


 ドレンの副長は、それを聞いてごくりと唾を飲みこんだ。


「それでは、数で劣る我々はどうすれば?」


「勝とうなんて思わなくていい、一撃離脱を繰り返して時間を稼ぐのが目的だ。そうすりゃアルル城や、レバッハから救援が来るはずだ。敵に騎兵はいないし、それまでのらりくらりやってりゃいいんだ」


 ドレンは各隊に指示を飛ばすと、やがて前進の角笛が鳴った。騎兵2000が一斉にリザ軍に向けて土煙を上げながら駆けていく。ドレンは弓を構えながらリザ率いる歩兵部隊に迫る。


「いいかっ!俺が合図したら弓で一斉射撃して離脱するぞっ!決して突っ込もうなんて思うなよ!?」


 ドレンは、軽装騎馬兵を率いながら目測で距離を測っていく。1200,1100,1000、900まで数えたとき共に先頭を走っていたはずの隣の副長の身体が消えた。


 と、同時に後方から叫び声と馬のいななきが聞こえる。ドレンは周りを確認するが、いったい何が起こったかわからなかった。


「何があった!?」


「ドレンさまっ!敵ですっ!矢がっ!」


 矢だと!?バカな、いったいここからどれだけ距離があると思ってる!?ドレンが部下の声に導かれるようにして、再び前を見た瞬間、ズドンッッ!!!という音とともに、またドレンの周囲にいた兵士が消えた。


 いや、消えたのではない。今度はドレンにもはっきり見えた。槍ほどもある矢が前方の兵士を貫き、槍に貫かれたまま次から次へと後方の兵士を貫いていったのだ。それに巻き込まれた兵士たちが次々に落馬していく。


「ひ、怯むなぁ!射程圏内まであと少しだ!」



「サシャ、頼むぞ!」


「リザさん、任せてください。さあ!サシャ弓隊、気張れよぉぉ!!」


 サシャの後ろに控えている弓隊の持つ弓は、通常の弓よりも遥かに大きい弓である。そんな弓隊が500、彼女の前にズラっと並んだ。


「全体構えぇ!」


 サシャの号令で、弓兵は弓を矢につがえて構える。ドレンの騎馬隊が迫って来たところに、再びサシャの号令が飛んだ。


「射てぇ!!」


 500の弓兵から500の矢が一斉に放たれ、夕日の空を埋め尽くす。ドレンはその光景を見て色を失った。


「なっ!?すでに向こうは我々が射程圏内に入っているというのか!?」


 打ちあがった無数の矢は、放物線を描きながら夕空に無数の矢の雨を降らせた。弓を構えながら駆けていたドレン騎馬隊は、盾を構える余裕も無く次々と矢の餌食となっていく。


「くそっ、ここまで来て引き下がれるかぁぁっ!!全軍、射程圏内まであと200、突っ走れぇ!」


 ドレンは矢の雨を潜り抜け、先頭を突っ切っていく。その様子を見ていたサシャはニヤリと笑った。


「ほほーぅ、いーまので退かないんだぁ。かよわーい乙女を、ナメんじゃねぇよ!隊長さんは・・・・・・なるほど、あれだな」


 サシャのオーラが戦場で輝きを増すようにほとばしる。巨大な弓を構え長大な矢をつがえると、一気に弦を引き絞った。弓がギ、ギ、ギ、ギと不気味な音を立てながらしなる。矢にオーラを流し込んでいくと、矢が光を放ち始めた。狙いを研ぎ澄ますと、サシャは呟く。


「これでオ・ワ・リ♪」


 ドンッッ!!!


 弦を放した衝撃音が辺りに響いた。解き放たれた巨大な矢が、矢羽根で風を切り裂いていく。オーラに包まれた矢が一直線にドレンに向かう。ドレンに見えたのは、巨大な光の塊だった。咄嗟に前面にオーラを展開するも、ドレンのオーラはサシャの矢によって一瞬で溶けていく。



 ドッパァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!



 凄まじい衝撃音が戦場を駆け巡った。ドレンの周囲にいた兵士たちはその衝撃波でバランスを崩して落馬する。至近距離から放たれたサシャの矢の威力は、ドレン軍の想像を遥かに超えるものだった。


「ド、ドレン、隊、ちょ・・・・・・?」


 近くを併走していた騎馬隊員のひとりが、ドレンがいた場所を確認する。だが、そこにはすでにドレン隊長の姿はなく、下半身だけが馬の鞍の上に乗っかっていた。


「た、隊長がやられたっ!狙い撃ちにされるぞ、散れっ散れぇぇっ!」


 射程圏内まであと少しというところまで迫っていた。しかし、サシャの一撃でドレン隊長を失うと、散り散りに散開しながら逃げ帰った。


「よっしゃあ!リザさん!どうですかぁ~?」


 サシャがドヤ顔で手を振りながら、リザのいる下に駆け寄って来る。


「50点!」


 リザは厳しい表情でサシャに無情な点数を突きつける。


「えぇぇぇっ!?なんでー?」


「なんでー?じゃない。どれくらい削った?精々500がいいとこだろう。相手に射たせてしまえばよかったんだ。おまえの弓隊なら後二回は斉射出来たはずだ」


「それじゃこっちも被害が出たじゃないですかー」


「こっちは垣盾かいたて持ちだ、出たとしても被害は最小限で済んだはず。それより部隊長の撃破にこだわって追撃出来なかったほうが悔やまれる」


 ふくれっ面で抗議するも、ため息交じりのリザの一言で一蹴されてしまった。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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