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アルル城 攻略戦1

「ベルトルト、この城を水攻めしたい。どのくらいの堤が必要か測量をお願いしたいんだけど、いいかな?」


「そのために呼ばれたのはわかってましたよ。すぐに取り掛かります」


 ベルトルトはニコっと笑うと、早速仕事に取り掛かった。  


「水攻めも良いんじゃが、一度も攻めないというのも味気なくはないかの?」


「そうだぜ、王子さまよ。水攻めを否定はしないが、それはちっと軟弱な考えだ。城門まで一本道なら俺が強行突破して道を作るってのもひとつの手だぜ?」


 ミラの提案を横で聞いていたジャンは、攻めたくてしょうがないという感じでグイグイ来る。


「うーん・・・・・・じゃあ、お任せしようかな?」


 アルスが苦笑いしながら答えると、ギュンターも勢いよく割って入って来る。


「アルスさま!私も行きます」


「え、ギュンターも!?」


「はい、ぜひ!」


「じゃ、じゃあ、お願いしようかな」


「ありがとうございます!私が突破しますので、アルスさまは安心して見ててください」


 ギュンターにしては、珍しいな。ジャン将軍に対抗意識でも燃やしてるのかな?引きつった笑顔でアルスがそんなことを考えていると、ミラ主導で正面から攻める準備が進んでいた。


 アルル城を正面から攻めるには、まず橋を渡り小さい島に辿り着く必要がある。これは人工で造ったものだ。面積が狭いうえに形が細長い台形になっており、城に近づくほどふたり並んで通るのが難しいほど細長い通路となる。そこを抜けてさらに橋を渡るといよいよ城門に辿り着く構造だ。大軍勢で囲んでも、少人数での突破を余儀なくされる厄介な造り。当然、先頭を率いる者にはそれを任せられるだけの武が必要になる。


 このアルル城を守るのはマクシミリアン公爵の弟リュシアン・ルジェーヌだった。リュシアンは、部下たちに命じて早速、正面の守りを固める。リュシアンの視線の先には、ミラの『魔女の騎士団』の旗とローレンツの旗が揺れていた。


「シャルミールの魔女が、ローレンツと組んで反旗を翻すとはな・・・・・・。狼煙も機能してないところを見ると、既に抑えられたか」


「どうも、これは予想外でしたね。私はてっきり包囲されてるレバッハかヴァールの救援に行くと思っていたのですが」


 部隊長サンドルの呟きに、リュシアンは少し考えてから返答する。


「ここが戦略上の要衝だからだろう。ここを落とせばレバッハを包囲しているマクシミリアン軍は、寄る辺ない赤子と同じだ。レーヘにとってもここは心の臓と同じ。ここを抑えられたら物資や情報は分断される。そうなれば一気に形成は変わってくる」


「それが、やつらにはわかってるということですか」


 シャルミールの魔女が政治だけでなく、軍略にも明るいことは気付いていた。確かに戦に出れば華々しい戦果を上げている。だが、こんなにも大胆な戦略を描けるのか?ローレンツの入れ知恵なのだろうか。


 だが、亡国の危機に瀕しているのはローレンツであってこちらではない。攻撃は最大の防御とは言うが・・・・・・それをこんな形で実行しようとする者がいるのか。そこまで考えてリュシアンは笑った。


「わかってようがなんだろうが、この城が落ちねば意味がない。サンドル、バルナバ、このアルルがなぜ不落の城なのかという理由を敵に教えてこい」




 ミラの部隊1000が城の正面に集結する。先頭にはジャンとギュンターという組み合わせが立つ。本来であれば、もっと兵力を投入したいところだが、城の構造上これが適切と判断した。


「若造、きっちり仕事してくれよっ!」


「言葉遣いもなってない奴に、若造呼ばわりされる覚えはない」


「なんだおまえ、俺が王子に話しかけたときのこと、まだ根に持ってるのか?」


 ジャンが、溜め息をつきながらやれやれという表情になる。


「あたりまえだっ!殿下に対して不敬極まりない」


「おまえんとこは、そんな硬い雰囲気なのか?そうは見えなかったがな」


「そっちはそっち、こっちはこっちだ!おまえはアルスさまの部下でもないだろうが」


「わかったわかった。俺の仕事の邪魔だけはしてくれるなよ」


 ジャンが面倒くさそうに対応すると、ギュンターはますますヒートアップした。


「それはこっちのセリフだっ」


 ふたりの言い争いは、声は聞こえなくとも高台から見ていたアルスやミラにも感じ取れた。


「何をしとるんじゃ、あのバカは!」


 ミラは明らかにイライラしている様子である。ミラから提案したことである、責任も感じているんだろう。参ったな、普段あれだけ冷静なギュンターが、戦を前に言い争いをするなんて・・・・・・。


「シャル!一時、貴様の護衛の任を解く。あのバカが暴走したら止めろ」


「わかりました」


 ミラに命じられて、執事のシャルは風のように走り去っていった。そうこうしているうちに、角笛が鳴り城攻めが始まった。ジャンに率いられた1000の兵は一斉に橋を渡っていく。


 他方、アルル城の城門も開き、こちらからも兵士がわらわらと出て来た。ジャンとギュンターが橋を渡り切り、小さな島に着くとアルルの城兵は一斉に弓を放つ。兵士たちは盾を掲げて防御しながらも前進するが、城門と城壁の上からの矢の雨に加え、出撃した兵たちの斜め角度からの矢で次々と水に落ちていった。


「思ってたよりも城兵の数が多いかのぅ・・・・・・」


「1万以上はいる感じだね」


 ミラの呟きに反応したアルスだが、ミラの行動がどうしても気になってしまう。ミラはさっきからその辺の草をブチブチと抜きながら、じーっと見ている。よくわからないが、さっきので相当ストレスが溜まっているのかもしれない・・・・・・。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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