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アルスとベルンハルト 最後のたたかい

 ジュリは肩で息をし、血が溢れ出る傷口を抑えながらもニヤリと笑っていた。オーラを飛ばしつつ、自身が飛び込む二段構えの技。


 ベルンハルトの目前に突如として現れたアルスの速度は、ベルンハルトの予測を上回った。そこから繰り出される剣速はさらに速く、衝撃は重い。


「紫電・一閃!」「おおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」



 ギャリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!



 刃と刃が削れ合い、火花が放電されたいかずちのごとく光り、弾き合う強烈な金属音が響き渡る。やがて、濛々と巻き上がる土煙のなかに、ふたりの姿が映し出された。


「と、止めやがった、あいつ」


 ドルフが思わず唾を呑み込む。


 無意識の領域で咄嗟に剣で防御をしたベルンハルトは、アルスの想定以上の剣速と重さに押し流されつつも、耐え切った。ベルンハルトは驚愕する。認めるしかなかった。


 アルスの武、これほどまでとは。以前の俺では、勝てなかった・・・・・・。


 だが・・・・・・。


 再度、そこから激しい応酬が始まるが、その最中、ベルンハルトの剣に膨大な黒いオーラが集まっていく。剣を振り抜くと同時に、ドルフとジュリに放ったものと同じ黒い衝撃波がアルスを襲う。アルスは剣で受け止めると同時に膨大なオーラを流し込む。ジュリのときと同様、黒い衝撃波にヒビが入り始めた。


 よしっ!ドルフがそう感じた瞬間、直線状の黒い閃光がアルスを貫いた。


「スラストスピア」


「ぐぅっ!」


 ベルンハルトの放った技はアルスの左脇腹を貫き抉る。アルスはベルンハルトが何かを仕掛けたのをオーラの揺らぎで感じると同時に身を捻っていた。そのおかげで致命傷は免れることが出来た。痛みに耐えながら、身を転じてそのまま斬り返す。ベルンハルトはそれを弾いて笑った。


「二段構えの技。貴様が良いアイデアをくれたのでな。少し、アレンジしてやったぞ」


 ベルンハルト兄さん、やっぱり武におけるセンスは天才的だ。虚を突いた「紫電・一閃」にも対応された。もうこの技は通用しない。ならば。アルスはオーラを高め、高めたオーラを刀身に流し込んでいく。


「紫電・雷翔らいしょう


 アルスの持つ刀の刀身がバチバチと音を立て始め、青白い雷撃の光が紫色の刀身を覆った。


「貴様、どうやってそれを?」


 アルスは無言で剣を構えながら、ベルンハルトに突進する。アルスの剣とベルンハルトの剣が交錯すると、雷撃の光によってベルンハルトの剣を覆っていた漆黒のオーラが弾き飛ばされていく。途端にベルンハルトの振るう剣圧が弱くなっていく。やがて、ベルンハルトは防戦一方になり始めた。


 俺の剣がオーラごと弾かれる!?厄介だが・・・・・・、そういうことか。

ベルンハルトは、一旦距離を取った。一気に畳みかける勢いでアルスはベルンハルトに迫る。雷撃を纏う剣を振り下ろし、再びベルンハルトの剣と交錯した。


 ギィィィィィィィィィィィィィィン!!!という金属音が周囲に響き渡る。ベルンハルトの口角が上がったのをアルスは見逃さなかった。咄嗟にベルンハルトの剣に視線を移す。黒いオーラは、弾かれて、ない!?もう対応された!


「やはりな。粘質系のオーラで、雷撃から保護すれば問題ない」


「くそっ」


「仕切り直しだな?」


 再び、相対したアルスとベルンハルトは三度目の激しい剣撃の応酬を交わす。袈裟斬り、薙ぎ、斬り返し、打ち上げ、薙いで、突く。両者の剣速はこれまでにないほど、速くなっていく。激しい金属音と共に鍔迫り合いをする。


「貴様、その剣技どこで学んだ?」


「言う必要はない」


「ふふふ、ならば俺からひとつ面白いものを見せてやろう」


 ベルンハルトは鍔迫り合いから、アルスの剣を弾くと同時に剣を振り下ろした。ベルンハルトの剣筋は蛇のように蛇行していく。アルスが剣で受けた瞬間、ベルンハルトの剣筋は蛇行しながら瞬時に方向を変えアルスの腕をかすめ血が流れた。剣筋が、読めない・・・・・・。


 ベルンハルトが使った剣技は、十傑の第一席であるクルトの蛇行剣そのものだった。アルスはベルンハルトの剣筋が読めないままに打ち合いを続ける。アルスにとって初見の技である蛇行剣を防ぎ続けることは、フランツ同様に不可能であった。ベルンハルトの放つ蛇行剣によって傷だらけになりつつも、剣の形状が傷を抉る蛇行剣ではなかったのが幸いする。なんとか致命傷を負うのを避けることが出来た。


 だが、それだけである。「スラストスピア」による一撃と蛇行剣による無数の傷でアルスの意識は朦朧とし始めていた。


「動きが随分遅くなったな。おまえがここまで俺と戦えるとは思わなかったぞ。だが、もうこれで終わりにする。スネークラッシュ!」


 ベルンハルトの剣に黒いオーラが蛇のようにうねり始める。この技は・・・・・・無理だ、今の僕には避けられない。無数の黒いオーラが蛇のように蛇行しながらアルスに向かってくる。


 アルスは、覚悟を決め、その無数の蛇のような黒いオーラの塊を見据えながら剣を構えた。構えながら、アルスはオーラを全解放する。解放されたオーラは白く見えるほどの強烈な光を放った。刀身は紫色の光から、さらに明るくなり刀身自体が白い輝きを放ち始める。光はアルスの身体の中に入り続けた。


「ア、ルス、さま。ダ、メだ。そ、れは・・・・・・」


 ジュリが遠くなる意識のなかで何かを感じ取り、懸命に手を伸ばそうとする。その手の先には、光を取り込み続けるアルスの姿があった。


「奥義、天神雷鳴!」


 アルスの身体がオーラで光り輝く。途端にアルスの全身が雷撃で打たれるような衝撃が身体中に走った。全身の血が熱を持ち、沸騰するような感覚に襲われる。事実、アルスが受けた傷口という傷口から血が蒸発し煙を上げる。雷撃のオーラを身体のなかに取り込むことによって、神経の伝達を直接刺激する。これにより、身体強化の限界を超える、これが「天神雷鳴」である。ただし、身体に対するダメージは避けられない諸刃の技だった。


 アルスの輪郭がゆら~っと揺らめく。アルスが前傾姿勢を取った瞬間、ベルンハルトの目からアルスの姿は消えていた。


「なっ!?」


 偶然かはたまた本能的なものか、辛うじて反射的にベルンハルトはアルスの剣を受けた。が、その衝撃で吹き飛ばされ、地面に三度打ち付けられた。なんとか立ち上がったものの、アルスの力はベルンハルトの想像を遥かに超えていた。


「貴様、その姿。いったい何をした!?」


 アルスはベルンハルトの問いには答えず、無言のまま斬りかかった。アルスの剣速と剣圧は今までの比ではなかった。一撃、一撃のアルスの剣圧はベルンハルトの剣に凄まじい衝撃を与える。


「フェザースラッシュ!」


 ベルンハルトから放たれる一閃。アルスはそれを難なく弾き返す。


「スラストスピア!」


 最速の突きも、空を切る。この俺が、この俺が!あり得ない!!!もっと、もっと力を!!ベルンハルトは急速にオーラを高め、身体強化に費やす。しかし、アルスの次の突進で、ベルンハルトの左腕が吹き飛ばされた。


「ぐはぁぁぁぁ!!」


 くそっくそっくそっ!もっと、もっとだ!もっと俺に力を寄こせ!さらにオーラを取り込もうとしたベルンハルトの心臓がドクンッ!!!!と鳴った。


「がっ、あっ!?ぐああああっ!!」


 心臓の鼓動がどんどん速くなり始める。ベルンハルトの意識が飛びそうになり、思わず心臓を抑えようとしたその時、ベルンハルトは自分の腕が変質していることに気付いた。なっ!?これは、俺の腕が!?彼の腕は怪物のそれになっていた。その時、彼の脳裏にあの邪眼の目の男の言葉が蘇った。


「ひとつだけ注意しておく。くれぐれも力を解放し過ぎないことだ」


 力が、制御、出来ない・・・・・・。ベルンハルトの目には迫り来るアルスの姿があった。


「紫電・天閃!!!」


 アルスが低く構えを取った姿が消えると、青い無数の剣の光がベルンハルトをすり抜ける。半分怪物となりかけたベルンハルトは、バラバラに切り刻まれ絶命した。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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