フランツ、そして、アルスへ・・・
フランツの剣速が限界を超え、正確無比に黒いオーラを叩き落す。無限に湧く闇の奔流を、ただひたすらに斬り続ける。傷口からの出血で意識が飛びそうになるたび、足を地面に踏ん張り、意志で身体を繋ぎ止める。ここで倒れりゃ全て終わりだ!
やがて、フランツの剣先に極小の光の玉が現れる。それはゆっくり回転を始め、剣先から離れると、クルトの黒いオーラを吸い込み始めた。
「な、なんだ!?」
クルトが驚愕する中、光の玉はオーラを飲み込むたびに質量を増し、戦場を照らす輝きを放つ。やがて、クルト自身がその引力に引きずられ始めた。
「ば、馬鹿な! どうなってる!?」
「バーストゼロ! てめえの敗因は、俺に剣筋を見せすぎたことだ!」
光の玉は周囲の大気を吸収し、クルトのオーラを圧縮。直前まで彼を引きずり込んでいた輝きは、刹那、反転逆流。指向性の爆発がクルトを包み込んだ。
「ば、あ、ガぁぁァァァ・・・・・・」
爆発のエネルギーは戦場を焼き尽くし、クルトの姿を跡形もなく消し去った。漆黒のオーラは霧散し、蛇行剣が地面に突き刺さる。
「アルス、後は……任せた……」
フランツは呟き、力を失ってその場に倒れた。血に染まった身体は動かず、戦場の静寂が彼を包む。だが、彼の顔には、仲間への信頼と勝利の確信が刻まれていた。
カッセルの戦場は血と土煙に塗れ、天地が震えていた。
「ア、ルス、さま」
ジュリは傷口から溢れる血で視界を赤く染めながら、アルスの姿を見た。その目は、彼女がかつて見たことのない怒りに燃えていた。ベルンハルトはジュリを無視し、すべての興味をアルスに移す。
アルスはジュリとドルフに視線を向け、悲壮な決意を込めて呟く。
「ふたりとも、遅れてしまってすまない。あとは僕が決着をつける」
「アルス、今さらおまえが出てきたところで何も変わりはせん。それになんだ?貴様は王族の端くれだ。部下に頭を下げるなぞ、情けない姿だな」
「僕にとって、彼らは仲間だ。彼らのお陰で僕やフリードリヒ兄さんは助けられたんだ。部下だなんて思ったことはない」
「ククク、王族でありながらおまえのような卑賎な思想は聞いていて虫唾が走るな。アルス、貴様も所詮フリードリヒと同じような考えに過ぎん。王族にとって駒は所詮、駒に過ぎん。犠牲にいちいち涙していては大道を誤ることになる。国の運営とは常に大道を歩むことだ。仲間がどうの犠牲がどうのと喚いているようでは、到底国家100年の計は立てられぬ」
「ふざけるなっ!!!それはおまえにとって都合が良いだけの詭弁だ!人が集まって村や街が出来る。さらに村や街が集まったのが州だ。その州を束ねているのが国という、ただの単位に過ぎない。国は誰が支えてる?王か?違う!国を支えているのは民だ!民あっての国だ、おまえは3大ギルドの思想とは対極だが、結局どちらも国を破壊するだけだ。ましておまえみたいな奴が王になる資格などないっ!!」
「フリードリヒと同じことを言う。俗物の思想に染まった者と話す価値など、もはやない」
ベルンハルトは剣を抜いた。黒いオーラが揺れ、剣を包み込むと刀身は黒く染まっていく。ひと際黒いオーラが大きくなったかと思うとベルンハルトの剣が唸りを上げてアルスの頭を目掛けて振り下ろされた。アルスの刀にオーラが集束されていく。
「抜刀術、紫電・一閃」
アルスが抜刀と同時にベルンハルトにオーラの斬撃を叩き込む。互いの剣圧と剣圧がぶつかり合い、その衝撃は周囲に拡散した。そして、そのまま凄まじい剣撃の応酬が繰り広げられる。互いの剣圧がぶつかり合うたびに弾かれた衝撃波で地面が抉られる。
彼らのオーラに当てられ馬がダメになると、そのまま馬を捨て地上戦へと移行した。互いの攻撃の応酬は目まぐるしく「攻」と「防」が恐るべき速度で入れ替わっていた。やがて、アルスとベルンハルトの周囲には遠巻きに両軍の兵士たちが集まり始める。彼らもわかっていた。この勝負によって国の行く末が決まるであろうことを。
「フェザースラッシュ!」
ベルンハルトのオーラが瞬間的に剣に集約され、横に剣を薙ぐとそのまま半月状の黒いオーラが放たれた。アルスの刀が収束されたオーラによる光を発する。
「紫光昇龍!」
ラヴァの赤とオーラの色が混じり合い、紫色の光がベルンハルトの黒いオーラとぶつかり合う。直後、ふたつのオーラは弾け合って爆発した。爆発した瞬間、ドンッ!という音が周囲に響く。そこにいたはずのアルスの姿はなかった。爆発と同時に、アルスは全力で飛んでいた。
あの技は・・・・・・!?アジルが姐さんから受けた技か・・・・・・。ドルフは思わずジュリを見る。
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