表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

150/241

ベルンハルト戦開始

 アルスが悩んでいると、フランツが首を突っ込んで来た。


「ギュンター、おまえクルトってのも知ってそうな反応だったよな?」


「ああ、知ってる。というか、戦ってないからわからんが。俺が戦ったエルヴィンが大人しくそいつの命令を聞いていた。恐らくもっと強いのかもしれん」


「じゃあ、決まりだな。アルス、俺はトーレイに向かうぜ」


 フランツはニカッと笑い、さっさと馬を進めようとする。アルスは内心呆れた。この男、さっきまで真剣に語っていた熱い男はどこへ行った? 戦闘バカの本領発揮だ。


「ちょっと、待って!勝手にみんながバラバラに行動したら収集がつかなくなるでしょうが!」


「いや、スマンスマン。だが、俺とパトスが王都で闘り合った連中はたいしたことはなかったんだよ。そんで、もうちっと手応えがある奴と戦いたいなと思ってさ」


 フランツがニヤニヤしながら話しているのを無視してアルスは考えていた。ベルンハルトは十傑と呼ばれる自分の部下を5カ所の村や街に分けて派遣している。問題はその十傑の強さ。ベルンハルトは戦術や戦略なんかより、武技だけを頼りに戦おうとする傾向が非常に強い。


 であれば、こちらから部隊長を救援に向かわせて十傑を抑え込んでしまったほうがいいのか?恐らく一騎打ちも喜んで応じる連中ばかりだろうが・・・・・・。現在、作戦が進行している場所は、カッセル、パール、トーレイ、キルケル、ティッツの5カ所だ。ギュンターの話ではキルケルのエルヴィンという隊長は相当の強さだという。


 また、トーレイのクルトに至ってはさらに上回るかもしれないとのこと。アルスはしばらく考えて、各部隊長にティッツ以外の4カ所にふたりずつ救援に行ってもらうことにした。その際、一言だけ付け加えた。


「ベルンハルト兄さんの考えに忠実なら、連中は一騎打ちに応じるだろうけど、戦術的思考は常に持っていてね」


 トーレイにはフランツとベル。リース軍が戦ってるキルケルにはパトスとギュンター。フリッツ軍がいるパールにはガルダとマリア。そして、一番遠いカッセルにはドルフとアジル。ここには、フリードリヒ陛下自らが軍を出していた。


 アルスの出した指示により、各部隊長はそれぞれ100人の部隊を引き連れて向かって行く。部隊長たちが兵を連れて離れて、しばらく行軍すると、目的地であるティッツ村が見えて来た。すでに、村からは煙が上がっていた。


「アルスさま、すでに敵の攻撃を受けてしまってます!急いだほうがいい」


 ジュリが、前方のほうを見ながら叫ぶとアルスも頷いた。


「そうだね、騎馬隊だけ先に先行して突撃する。歩兵は後からついて来いっ!」


 アルスは騎馬を引き連れ一気に加速した。



「ルドルフ、来たみたいだぞ」


 ルドルフの影からスーッと現れた影はやがて輪郭をはっきりさせていくと、ルドルフに話しかけた。


「もう来ちゃったか~。もうちょっと遅く来てくれたら全部終わってたんだけどね~」


「どうする?」


「どうするって、そりゃ戦うしかないっしょ。手ぶらで帰ったらベルンハルトさまに怒られるだけだしさ~。ちなみに敵の数ってどのくらい?」


「倍近くはいる」


「うーん・・・・・・俺を倒すんなら、もっと連れてきた方が良かったんじゃないかな?」


「相手はアルトゥース王子の部隊だ、甘く見てると火傷するぞ」


「なるほどね。それならこっちとしても多少は楽しめそうかな?」


 ルドルフはニヤッと笑う。エルヴィンから聞いていた話によれば、王子の部隊にはかなり手練れの連中がいるらしい。それは、今話しているギレからも同じ報告を受けている。ルドルフは迫り来るアルスに向けて軍を対峙させると、ギレに伝えた。


「ギレ、前に戦った連中がこの中にいたら、殺しておいてくれないか?」


「わかった」


 ギレは短く答えるとそのまま影の中に溶け込んで消えて行く。


「さて、そんじゃ俺もやりますか!」


 ルドルフは槍を左手で持つと、馬の手綱を引きながら部隊に合図する。


「突撃する!」


 ルドルフ軍とアルス軍はティッツ村の南西で激突した。ルドルフはすれ違うアルス兵を全て一撃で屠っていく。アルス麾下の古参兵も含めて、ルドルフの周りだけ溶けるようにして周囲に空間が広がる。しかし同時に、それはルドルフ軍にも起こっていたことだった。アルスやジュリ、エルンストなど錚々たる部隊長たちの突破力によりルドルフ軍も減少していく。


「こりゃ、やばいな。早めに頭を潰しておくか」


 ルドルフはアルスを見つけると一直線に、馬で駆けて行く。アルス騎馬隊の一画が熱せられたバターのようにルドルフを中心に溶けていった。ルドルフから繰り出される槍の突きは、一般の兵には全く見えない。ルドルフを止めるためにアルス騎馬隊が迫ると、いつの間にか身体に風穴が開いている。それがひとりずつというスピードではない。ルドルフに迫る周囲の兵が、一瞬の内にまとめて命を吸い取られるように絶命していった。 


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ