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シャルミールの魔女

「私は今、最も気を付けないといけないのはレーヘだと思いますわ。そして、すぐに手を打たなければ大変なことになるかもしれません」


「どうしてそう思うんだい?」


「伯父さまから、レーヘのファディーエ王子の為人ひととなりを聞いておりますの。どうにも普段から思い通りにいかないことがあると父王に頼っていたそうですわ。つまり、父王がファディーエ王子を溺愛していたという証左になりませんか?」


 アルスは、彼女の言ってることが的を得ていることに気付いた。なるほど、確かに会食の場での会話を思い起こせば、彼はアルスとマリアが婚約したことがわかると、父に言って破棄させると言っていた。


 この発言の裏を返せば、今まで父親に言えばどうにかなってきたのだろう。だとすると、レーヘ王は今回の犯人を突き出してどうにか収まる人物ではない可能性がある。とはいえ、逆上して宣戦布告もしくは同盟の破棄はまだ通達してきてはいない。

 

 話し合いの余地があるのか、それともそう出来ない事情があるのか・・・・・・?フリードリヒ兄さんは、すぐにレーヘに向けて使者を送ったと聞いたが、どうなってるんだろう・・・・・・。アルスが考え込んでいると、目の前の少女はアルスの返答を待たずに続けた。


「アルスさま、私を連れてってくださいませ。必ずアルスさまのお役に立ちますわ」


「え!?」


 いきなりの提案にポカンとしているアルスに、クスっと笑いながらソフィアは自信ありげに言った。


「私に案がありますわ」




              シャルミールの魔女




 レーヘ国内、ノルディッヒ州の隣に位置するところにシャルミールという州がある。元々はアダム・バティスト侯爵が治めている土地であったが、馬車に乗っている最中、崖下に転落。


 彼の息子であるパルテルミーが爵位を受け継ぐが隣国ハイネとの戦で戦死してしまった。そこで、長女であるアリシアが爵位を継いだが元々病弱だった彼女は流行り病で病死。


 現在、爵位などまったく興味もなく、好き放題やって生きてきた次女ミラが爵位を継いでシャルミールを治めている。


 ミラは子供時代に、王であるラザール・フィリップ四世の不興を買っている。王太子であるドミニクがミラに悪戯をしようと身体に触れた際、ぶん殴ったうえに股間を蹴り上げるという荒業を繰り出した。


 その結果、王太子は余りの痛さに悶絶し、泡を吹いて倒れるという事件に発展してしまった。それを知ったラザール王は怒りの余りミラを処刑しようとするが、父が土下座をして助命嘆願をしている。幸い王太子の身体が無事だったのが幸いして、相応の謝罪と賠償で済んだ。


 それ以降、ミラはラザール王と変態王子をずっと嫌っている。さらに、その話が広まり彼女の花婿候補の縁談が全て立ち消えとなった。ラザール王が圧力をかけて全ての縁談を破棄させたのだ。そこで、ミラは学んだ。国王に従順に従って生きていくことは出来ない。


 それならば、何があっても邪魔されぬよう、自衛が出来るよう、政治や軍事を学ぶ、と。それからの彼女は淑女としてのたしなみなど、一切捨ててひたすら己の信じる道を進んで来た。その過程で、国内外の強者を呼び集め独自の私兵団を創設。国内最強の騎士団を作り上げた。


 そんな感じで好き勝手やっていたところに、爵位と領地が彼女のところに転がり込んで来る。彼女は若干16歳で領主になると、ガーネット教も3大ギルドも追い出してしまい好き放題やり始めた。


 数年後には「シャルミールの魔女」などと呼ばれ始める。そのためミラが任命した騎士を『魔女の騎士ソルシエール・シュヴァリエ』、創設した騎士団は『魔女の騎士団』などと密かに呼ばれていた。


「ミラさま、先ほどラザール国王から使いの者が参りました」


「なんじゃ?どうせくだらん用じゃろ?」


 若い執事が不敵な笑みを浮かべる。ミラはなんの興味も無さそうにその執事に尋ねた。


「で、結局なんの用だったんじゃ?」


「ローレンツとの同盟を破棄し、第二王子の弔い合戦をするとのことです。そのため兵を出せとのことでした」


 それを聞いた瞬間、ミラは盛大に笑った。


「ラザールはやはりバカじゃな!いや、思っていた以上の大バカじゃな。我が国はすでに西のハイネ、北のヘルセを敵に回しておる。このうえローレンツとの同盟を破棄して戦争をするじゃと!?自殺願望でもあるのか、あのブタは?」


「で、ミラさま、どうされますか?」


「断るっ!断じて拒否するっ!今まで儂は二度この国のために仕方なく!戦った。ヘルセ、ハイデとの戦では軍功並ぶもの無しと言われるほどの戦果を上げたが、論功行賞にすら呼ばれなんだ。当然、褒賞も無しじゃ。そして、今度は変態王子の弔い合戦だから兵を出せだと!?どこまで儂を愚弄する気じゃ!」


「フフッ、そう仰るかと思って、すでにお断りしておきました」


「おいっ、そこは勝手におまえが断るなっっっ!!そういうことは、まず儂に聞けよっっ!!!」


「フフッ、冗談です」


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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