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国王裁判1

「大変です皆さん!明後日の国王裁判ですが、どうやら国民公開の裁判となるようです!」


「なんと!?確かですか?」


 パトスが思わず聞き返す。


「ええ。なんということだ!全てが異例尽くしだな、これは」


「ということは、俺も見れるんだな?」


 フランツがニヤニヤしながら聞くと、アチャズは不承不承頷いた。


「聴衆のひとりとして見学することは出来ます。ですが、やはり身バレする危険がある以上、私はとてもお薦め出来ません」


 アチャズとしては既に精神的に疲弊していたが、そこへパトスが「それなら私も」などと言うので、抑えるのに必死だった。さすがに鬼人族は角がある分目立ち過ぎる。パトスの「それならフードを被ればいけるのでは?」などという安易な発想は無茶が過ぎると説得した。


 騒ぎが起きれば最悪、裁判自体が中止になる恐れもあると伝えてようやく納得してもらうのだった。結局、鬼人族以外は全員行くということになるころには、彼の精神的体力はゼロに。そんなやり取りのせいで、次の日は昼過ぎまで起きて来れないという状態だった。



 ジェルモが屋敷を訪ねてから二日が経った。しかし、国王裁判の当日になってもジェルモは姿を現さなかった。


「まずいな、もう裁判が始まってしまうのに・・・・・・」


 アチャズが気をもんでいると、窓越しに屋敷の前に馬車が止まるのが見えた。


「来たか!」


 アチャズが急いで門の方へと駆け寄るとジェルモ本人ではなく、彼の部下であった。彼がジェルモからの手紙をアチャズに手渡すと彼はその場で手紙を読み始める。手紙には短くこう書かれてあった。


「証拠は信頼できる者が現れましたので、その方にお渡しいたしました。本来は私が詳しく説明したかったのですが、時間が無く出来ないことをお許しください。例の件、お楽しみに」


 アチャズにはどういうことなのか理解が出来なかった。ジェルモの部下にも尋ねたが詳しいことは聞いていないとのこと。とにかく、一旦手紙を持って屋敷の中に入る。


「なんて書いてあるんですか?」


 マリアが気になって尋ねたのでアチャズはその場にいたアルスの仲間に読んで聞かせた。


「どういうことですか?」


 改めてマリアが尋ねたがアチャズも訳が分からなかった。


「さっぱりわかりません。なんでこんなことになってしまったんでしょう、こんな手紙の内容では」


「手紙では露見する恐れがあるから詳しくは書けなかったのだろうな」


 ジュリが腕を組みながら呟いた。その場で、ジェルモの手紙の内容について推測を重ねたがこれといった結論は結局出ることはなかった。


 そこで彼らがわかることといえば、証拠を渡すほどの信頼できる協力者が現れたということ。裁判での発言が可能な身分であることから貴族の可能性があることぐらいだ。それならリヒャルト伯爵ではないかという話もあったが、連絡が無いのもおかしい。


「とにかく行ってみましょう。もう時間もギリギリです、リヒャルトさまなら何か知っているやもしれません」


 マリアとアチャズは急いで馬車に乗り込むと国王裁判が開かれる行政区に向けて出発した。フランツたちは馬車では行かずにフードを被り、平民の群れに紛れて裁判の場所に向かうこととなった。フランツたちが王立裁判所まで着くとすでに人でごった返している。


「おいおい、これじゃ中に入る頃には終わってるなんてオチはないだろうな?」


「まさかこれだけの人が既に集まってるとはな」


 フランツのぼやきを隣で聞いていたエルンストが、周囲を見て驚きの声を上げる。


「まぁ、それだけ人々の関心が高いって証拠だろうな」


 辺りを見回すと入口までの間に多くの人がひしめいており、既に彼らの後ろからも続々と人々が押し寄せている状態である。


 ようやく彼らが裁判所の中に入れた時には裁判もかなり進んでいる状態だった。裁判所の中心には裁判官が立ち、左右に被告であるフリードリヒとアルス、彼らの傍に三人の貴族が立っている。


 恐らく弁護人として立っているのであろう。その中のひとりはリヒャルトであった。そして告発者であるベルンハルトが右側に分かれて座っている。周りには貴族たち200名ほどが座っていた。この裁判が性急に開催されたということなのだろうか?


 フランツたちにはよくわからなかったが、席の割には空きが多かった。何らかの理由で欠席してる貴族もいるということなのかもしれない。


 地方の裁判であれば、領主裁判制度により領主が裁判官を務める。しかし、アチャズによれば、今回の場合は国王が被疑者であるため、裁判官が判決を下すことはない。最終的には貴族の投票に任されるとのことだった。裁判官はあくまで進行役としての役割だそうだ。



 コンッコンッ!


 裁判長がガベルを打つ。


「それでは、次の証人を呼んでください」


 呼ばれて出て来たのは、格好からして召使いだろう。尋問するのはベルンハルト側の人間だろうことはすぐにわかった。


 証人はイシスの神々に誓いを立て、嘘偽りのないことを裁判官の前で宣誓する。それが終わると証人尋問が始まる。


「あなたはフリードリヒ陛下並びにアルトゥース殿下とレーヘのファディーエ王子が会食をしていた現場にいたという事で間違いありませんか?」


「はい、間違いありません」


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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