襲撃2
「デカいオーラ持ちも何人かいるな。衛兵もどき相手に手加減して戦うよりは、殺意がハッキリしててむしろやりやすいな」
「あまり派手にやり過ぎないことです」
「ちっとくらい暴れさせてくれ。こちとらさっきから鬱憤が溜まって仕方ねぇんだ」
ホルストの入れ知恵で、ベルンハルトはアルスが泊まる邸宅の周囲に網を張っていた。ベルンハルト自身は、部下にアルスが泊まる邸宅を襲撃させるつもりだったが、さすがに裁判もない状態で騒ぎが大きくなるのはまずいとホルストが止めたのだ。
そこで衛兵に扮装させたベルンハルトは、私兵を各所に配置する。これだけだと、アルスの部下は止められないことはわかっていた。そこで、彼らには発見したらすぐに警笛を鳴らすよう指示を出し、十傑をぶつけるつもりでいたのである。
警笛を聞いて駆けつけたのは、第5席レオン・ザルムート、第7席ゴードン・ディルレヴァンガー、第9席カミラ・ハートミット、第10席ブルーノ・シュトルムの4人だった。彼らが現場に到着したときには、すでに兵たちは全員倒されていた後だった。
「もう全員倒されちゃってるじゃん!」
「待て、カミラ。よく見ろ、ふたり残ってる」
「ふーん、ふたりだけで足止めってわけね。私らも舐められたもんだね」
「レオン、ゴードン、まずは遠距離から俺とカミラで行かせてくれ」
「好きにしろ」
「なんで勝手にブルームが決めるかなぁ」
そう言いながらも、カミラとブルームはパトスとフランツに向かって走り出す。
「気を付けろよ、ただの兵じゃない。特にあの角生やした奴はヤバそうだ!」
うしろからレオンの警告が飛ぶ。それを聞いてフランツがニヤッと笑って呟いた。
「そりゃあ、ちっとばかし傷つくな。アルス隊最強をこの爺さんに譲ったつもりはねぇぞ?」
フランツが呟いた直後、カミラからいくつもの細い針が射出される。細い針はフランツが展開した防御オーラを突き破った。
獲った!
カミラの武器は暗器であり、細い針状の先に一点集中させたオーラを纏わせる。そのため、突破力に特化していた。騎士が盾を掲げても軽く鎧まで貫通する威力を誇る。はずだった。
針は確かにフランツのオーラを貫通したが、爆発音と共に全て弾き飛ばされてしまう。パトスに至っては、投げた針を素手で掴んでいる。
「はぁぁぁぁ!?」
カミラはあまりの出来事に思わず声を上げた。その横をブルームが通り過ぎ、鎖鎌の分銅を投げつける。
分銅は唸りを上げてフランツに迫った。今度はフランツに迫るほど分銅の速度は落ちて行く。フランツは速度の落ちた分銅に合わせて抜き放った剣を叩き込む。
「ブラストエッジ!」
ブルームの鎖分銅が一瞬の光と爆発に包まれると、分銅は粉々に破壊された。その破壊の衝撃が連鎖的に伝わり次々と鎖を破壊していく。
彼らを尻目にレオンは大剣で、ゴードンは槍でパトスとフランツのふたりに突撃する。レオンのオーラを乗せた最大の剣圧は、フランツの斬り返しに大剣ごと身体を弾き飛ばされる。
ゴードンの槍による突きは全て紙一重でパトスに避けられる。終いには槍を掴まれ、そのまま投げ飛ばされた。投げ飛ばされたゴードンは、ちょうどフランツによって弾き飛ばされたレオンを真横から直撃する。
受け身も取れない状態のふたりは、そのまま遥か遠くまで吹っ飛ばされ壁に叩きつけられた。レオンとゴードンはそれぞれ最初の一撃で全てを理解した。
「絶対に勝てない」
これが彼らの共通認識になった瞬間、レオンは迷わず撤退を指示した。撤退していく十傑の背中を見ながら、パトスがパタパタと手をはたく。
「それにしても、フランツ殿はまた成長しましたね。形質の合成も見事でした」
「フン、あんな雑魚どもじゃウォーミングアップにもなりゃしない。あんな奴らで俺が倒せると思ってんのか、ベルンハルトって野郎は?」
「連中がまた戻って来る前に、我々も行きましょう」
撤退していく連中を見ながらパトスはフランツに声を掛けると、フランツも頷いた。彼らがアチャズに渡された地図の場所まで行ってみると、二台の馬車はすでに到着している。
そこで、心配しながら待っていた仲間たちとふたりは無事に合流することができた。
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