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王都へ向けて

 ガルダとジュリの目がケーキに釘付けになっているのはいつものこととして、パトスはすでにコーヒーカップを揺らしている。リサが淹れる紅茶とコーヒー、そしてケーキの香りが広がるとなんともいえない幸せ空間の出来上がりだ。そんな雰囲気のなか、アルスが今回の褒賞授与の儀の参加メンバーを発表した。


「鬼人族である我々も参加させてもらえるとは思ってもおりませんでした」


「さすがパトスの旦那!種族を超えても認められる実力なんすよ、きっと!」


「姉御も出席になったのはめでたいことですぜ!」


「ドルフ殿とアジル殿はすっかりパトス殿とジュリ殿に懐かれましたな」


 ガルダがその様子を見て笑みを浮かべながら感想を漏らす。ドルフとアジルが揉み手をしながらパトスとジュリに話しかけているのを見ると違和感しか感じない。


「パトス殿、彼らをどうやって懐柔したのですか?」ヴェルナーがこそっとパトスに聞いた。


「ん?ほっほっほ。しっかりこちらで調きょ・・・・・・オホンッ、教育をしたんですよ」


 今、絶対調教って言おうとしてなかったか!?ヴェルナーが疑いの目をパトスに向けるも、どこ吹く風である。彼らのパトスやジュリに対する目。尊崇の念が2割、畏れ8割ってとこだな。


 あれじゃなんだか異形の神を信仰してる信者みたいだ。いったいどんな調教をしたらああなるのか・・・・・・?


「今回は部隊長全員で行けるのはいいね!みんなも大変だったろうし、王都で時間が余ったら余暇を楽しんでもらいたいと思う」


「アルスさまは褒賞授与の儀以外はどうされるのですか?」


「僕はまた戦勝パーティーに参加しなきゃいけないと思う」


「そうなんですか・・・・・・」


 マリアが寂しそうに返事をするのを見てアルスが尋ねた。


「マリアも良かったら参加するかい?余り楽しくないと思うんだけど」


「します!」


「マリアが居てくれたら心強いよ」


「アルスさまと一緒なら私はどこでもお供しますよ」


 嬉しそうにマリアが返事をした。傍から見ててもマリアのアルスに対する好意はわかりやすい。アルスだってわかってるだろうに。いつまでこのままの状態で放っておくつもりなのかあいつは?


 そんなことを感じながらも、フランツは欠伸をしながら興味無さそうに別のことを呟いた。


「王族、ってのは大変だな」


「まぁね。そういえば、レーヘ王国との会食もあるんだった。フランツの突っ込みでさらに嫌なこと思い出したよ」


「ははは!だけどなんでおまえがレーヘと会食なんかしなきゃなんねぇんだ?兄貴に任せておけばいいんじゃないのか?」


「それが、急遽決まったらしくて。ちょうど褒賞授与の儀で僕も王都にいるから参加することになったらしい」      


「ふーん。まぁ頑張れよ!」


「他人事だなぁ」


「他人事だよ。俺は元来、貴族だ王族だなんて嫌いなんだからよ」


 フランツは両腕を思い切り伸ばすと、もう一度大きな欠伸をして眠たい目を指で擦る。フランツにとって王族とか貴族の会食やパーティーの話ほど興味のそそられない話題はない。


 そもそも貴族と聞いて思い出すのはヘヴェテ城での差別的な扱いぐらいだ。そんなフランツを横目に、ギュンターが懸念していたことをアルスに尋ねた。   


「アルスさま、話を蒸し返すようで申し訳ないのですがフリードリヒ陛下は鬼人族のこともご存知で招待されたのでしょうか?」


「もちろん。僕が話してあるからね」


「そうなのですか、それならいいのですが」


「ギュンター、何を心配してるの?」


 話の流れにいまいち乗れてないエミールが尋ねる。


「いや、パトスさんたちには申し訳ないけど、いきなり鬼人族がそのような王宮の場に参加すると、見た目の違いから色者扱いされないかと心配で」


「その点は大丈夫だよ。フリードリヒ兄さんはそういうの徹底するからね。少しでも礼を欠くようなことがあったら首が飛ぶと思う。それに今回のルンデル戦の勝利で間違いなく足元は固まったはず。ルンデル国内は今は荒れに荒れてるからね、こちらが攻め込まれるような心配は無くなった。これだけの功績を立てたんだ。もう兄さんに表立って逆らうような貴族はいないと思うよ。そうでなければ呼ばれないと思うし、この褒賞授与の儀はフリードリヒ兄さんのベルンハルト兄さんに対する勝利宣言でもあるんだ」


「なるほど、そういうことだったんですね」


「そういうこと。だから、パトスもジュリもベルも安心して出席して欲しい」


 それを聞いたパトスたちはそれぞれに頷いた。今回のふたつの大きな戦いにおいて、パトスとジュリはガルダを助け出し、悪鬼隊隊長のドルフとアジルを倒し配下にしている。


 また、ジュリはオイゲン少将を捕らえ、ベルはヘルムート中将を捕らえるなどそれぞれ多大な軍功を挙げていた。こうした情報はつぶさにフリードリヒに伝わっている。これだけの活躍をした者を放っておけないというのも事実であった。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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