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レオノール大商会の誤算

 ゴットハルトがやろうとしていることは、三大ギルドの排除だろう。三大ギルドはこのルンデルに於いて今や王をも取り込んでいる。それを排除する方法はたったひとつしかない。それが失敗したら、この和睦自体なかったことになる。


 それならゴットハルトに持てる最大戦力を与えて、勝ってもらわなくてはならないのだ。彼らがこれからゴットハルトのやることにどう反応するかはわからない。人質の扱いも含めてゴットハルトの判断に任せればいい。   


「三大ギルドみたいな言い方で嫌なんですが、ゴットハルト将軍への投資みたいなものです。これからのことを考えれば少しでも戦力は多いほうがいいのでは?」


 アルスはニヤッと笑った。


「はっはっは!こりゃ一本取られたな」


「他ふたりの将軍については交渉次第ですが、これについても出来る限りスムーズに事が運ぶように提言しましょう」


 そこまで聞いてゴットハルトは思わず頭を下げた。


「すまない、何と言っていいか。恩に着る」


「ゴットハルト将軍が国を憂う気持ち、よくわかります。うまくいけば、今後両国は強固な関係が築けると信じています」


 ふたりは、ガッチリと握手をして交渉の場を後にした。



 交渉中、リース将軍の使いからリヒャルト将軍に報せが入った。無事にヘルネ城を攻略したとのことだった。リヒャルト将軍はその報告を受けて、城の防備を固めて留まるようにとの下知をリース将軍に下した。


 その後、早馬が王都へ飛びアルスの手紙を読んだフリードリヒは和睦を受け入れることとした。これで和睦交渉は一気に進み、和睦がまとまったその日のうちにルンデル軍は退いて行った。アルスも自領へ戻ることになる。


 その後すぐにルンデル国内で大異変が起こる。ゴットハルト大将軍が反乱を起こし、王都を占拠したのだ。他の二大将軍はもうこの世になく、ルンデル国内でゴットハルト大将軍に対抗できるような力はなかった。


 ゴットハルト大将軍は各州に檄文を飛ばしつつ、その最大の軍事力を用いあっという間に首都であるレムシャイト城を落としてしまったのだ。




 このゴットハルトの反乱の成功により、最も衝撃を受けた人間がいる。


 ローレンツの王都ヴァレンシュタットの商業区のなかでも、高級地区といわれる一画にレオノール大商会の建物がある。


 その最上階で仕事をしているビルギッタに一報がもたらされたのは、アルスがゴットハルトと和睦をしてから数日後だった。


「ビルギッタさま!大変です」


 慌ててノックもせずに入って来た部下のヘルマーに、眉間を寄せたビルギッタは内容を聞く前に叱咤する。


「あなたね、ノックもせずに上司の部屋に入るのは犬と同じよ!次同じことをしたら人間を辞めて犬にでもなったらどう?」


 ヘルマーは、頭ごなしに叱る女上司に対して、怒りで眉をピクピクさせながらも報告の内容が内容だけに平静を装いながら非礼を詫びて報告をすることにした。


「申し訳ございません。緊急の事態が起きまして」


 緊急という言葉を聞いて、ビルギッタは思わず立ち上がる。


「何があったの?報告なさい」


「ルンデルの王都レムシャイトがゴットハルト将軍によって落とされました」


「ナ、あ・・・・・・嘘・・・・・・」


 ビルギッタにもたらされた報告は、数百もの火薬樽を間近で爆発させたような衝撃をもたらす。レオノール大商会の狙いは、ルンデルからローレンツに向けた北南大侵攻を再度実現させることだった。


 ゴットハルトや諸侯が二重命令を受けたのも、その影響が出ている。ベルンハルト、もしくはフリードリヒ本人が王都を離れて防衛出動せざるを得ない状況を作り出すことで、混乱に乗じフリードリヒを暗殺する手筈を整えていた。


 こういう日のために、オルノア王の時代から長年に渡り浸透工作をかけ、遂にはエドアルト王を傀儡に仕立てたのである。その計画がゴットハルト将軍の反乱により全て水泡に帰してしまった。


 また、彼らは知り得なかったが、アルスは人質解放によりささやかな後押しをしている。ヘルマーから一報を受けた彼女は、その場で立っていることも出来なくなり、顔面蒼白のままへたへたと座り込んでしまったという。





 アルスたちが自領に戻ってから数日後、王都から褒賞授与の儀について報せが届く。出席者にはアルスを始め部隊長全員の名が記されてあり、アルスは主だったメンバーを集めて定例会議を開いた。


 今回はコレットとディーナが作ったホールケーキがテーブルの上にドンと乗っている。遠征中にふたりで色々と試作品を作っていたらしく、どうやらそのひとつらしい。


 このふたりのお菓子作りの腕も最近メキメキと上がっている。この腕前なら王都の有名店にも負けないんじゃないだろうか?コレットがひとつひとつホールケーキから切り分けていくと、ケーキの甘い香りが部屋中に広がった。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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