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死闘の果てに・・・・・・

バートラムの超重量級の大剣が容赦なくエルンストに降り注ぐ。身体強化をしたエルンストも例外ではなかった。バートラムの超高速の剣撃を真正面から受け止めるたびに破壊的な衝撃が彼の身体を、槍を持つ指先から何度も何度も駆け巡っていく。


 一合、また一合と矛と大剣が凄まじい速度で衝突するごとに両者の骨と筋肉が(きし)む。


 そのとき、一陣の風が吹いた。ざわざわと周囲の木が揺れ葉を揺らす。はらはらと木から葉が舞い落ち、そのなかの一枚がエルンストの顔の前を踊るように落ちていく。エルンストの目線を遮る一瞬を、バートラムは見逃さなかった。その驚異的な動体視力と超精密な剣筋でオーラを込めた斬撃を狙い飛ばす。


 エルンストは反射的にオーラを硬化させ防御を展開するも、僅かに遅れた。時間にしてコンマ、いや、マイクロ秒単位だろう。下がった矛先の上を抜けた斬撃は防御展開したオーラを突き破り、エルンストの肩当てを弾き飛ばした。鋭い斬撃により切り裂かれたエルンストの肩から鮮やかな血が吹き飛ぶ。


「ぐっ!」


 一瞬、エルンストの身体は仰け反ったが、これが逆にエルンストに火を付けた。


「おおおおおおおおおっ!!!!」


 エルンストが叫び、同時にオーラを全解放する。ビリビリと大気を震わせながら凄まじい連撃をバートラムに叩き込む。バートラムも叫び、エルンストに合わせてオーラを解放するとエルンストのオーラとぶつかり合いバリバリと大気が裂けるような音がし始めた。


 バートラムの大剣とエルンストの槍がぶつかり合うたびに先ほどとは打って変わって轟音がとどろく。一撃、一撃の激突が周囲に軽い衝撃波となって伝わってくると、周囲の兵士たちは眩暈(めまい)を覚えた。


 それほどにバートラムの剣圧も重かったが、それを弾き、捌き切っているエルンストもデタラメな強さだといっていい。お互い攻めに転じた戦いは苛烈を極めた。鎧を形成するパーツが吹き飛び、血の飛沫が双方の身体から飛び散る。そのまま両者とも数百合を超える数を打ち合うも辛うじて致命傷を躱す戦いが続く。


 血が流れ、互いに意識が飛びそうになるのを堪えながら、永劫とも思われる打ち合いの均衡が遂に崩れた。無理に限界を超えて全解放し続けたバートラムの魔素が先に尽きてしまったのだ。大剣の振りが僅かに遅れたのをエルンストは見逃さなかった。


 エルンストはバートラムの大剣を弾いて軌道を逸らすと同時に、バートラム将軍の左胸を貫いた。ぐらりとバートラム将軍の身体がゆっくりと傾き姿勢が崩れたが、すんでのところで落馬をせずにあぶみを蹴飛ばし身体を支えた。


 バートラムは残ったありったけのオーラを大剣に込めて斬撃を放った。エルンストはバートラムが斬撃を放つタイミングに合わせて、槍の穂先をスーッと移動させバートラムの喉元にピタッと照準を合わせていた。そして、バートラムが斬撃を放つと同時に槍の穂先からバートラムの喉元へ、そして首の後ろを突き抜けて一筋の光が貫いた。  


牙龍槍(がりゅうそう)!」


 バートラムの首は吹き飛び、身体だけが馬上に残される形となった。やがて、バートラムの身体はバランスを失い揺れ落ちる。それを見てエルンストは槍を掲げて叫んだ。


「敵将バートラム!討ち取ったり!!!」


「おおおおおおおおおう!!!勝ったぁぁぁあああ!!」


 エルンストがそう叫ぶと周りのローレンツ軍の歓声は森中に響き渡った。その声でルンデル軍は自分たちの将軍が討たれたことを知らされたのだった。


 エルンスト、ヴェルナー、エミールの三人は隊を引き連れてルンデルの残党を蹴散らしながらそのまま南に抜けた。驚いたのは中央の前線でフランツ、マリアを相手に戦っていたリンドラとエメルである。後方で剣戟が交わされる音が響くと、続いて叫び声と悲鳴が上がった。ローレンツ軍が何故我が軍の後方から!?


「誰か!誰か事情を知ってる者はいないか!?」


 リンドラが叫ぶと北から逃げて来たルンデル兵のひとりが叫んだ。


「リンドラさま!我が軍の本陣が奇襲攻撃され、バートラム将軍は討ち死にされました!」


「なっ!?なんだとっ!?確かか!?」


「間違いありません!」


「信じられん・・・・・・あのバートラム将軍が」


 しばらくリンドラが呆然としていると、伝令兵が急報を伝えた。


「リンドラさま!ローレンツ軍より伝令です!」


「・・・・・・なんだ?」


「我が軍は既に大将バートラムを討ち取った。武器を捨て投降せよ。投降するならばこちらもこれ以上の戦闘はせず、諸君らに手出しをすることもしない、約束する。繰り返す、これ以上の戦闘は無意味である、降伏せよ」と。


「・・・・・・わかった、エメルを呼べ」



 アルスは中央軍の後方からローレンツ軍が現れたときこの戦場での勝利条件を満たしたのを確信した。さらに、エルンスト、ヴェルナーとの挟撃によりみるみる数が減っていくルンデル軍を見てこれ以上の戦闘は無意味だと判断し、伝令を出した。


 その後、リンドル、エメル両隊長はローレンツに対して降伏したのである。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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