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コロン様主催企画参加作品。

ゆで卵


『地震だ!』


家で広い敷地内の芝生の手入れを行っていた私の身体が大きく揺すられた。


地震の発生情報を調べようとスマホをポケットから抜いた途端、緊急避難を促す警報がスマホから流れ出る。


スマホの画面には、「近海の海底火山が噴火して津波が発生し全国の沿岸に高さが十数メートル以上あると思われる津波が押し寄せて来ていますから、早く避難しろー!」と絶叫するニュースキャスターが映っていた。


家は大海原が一望に出来る海岸沿いの高台に建っている。


だが万が一の事を考え私は家の中にいる家族に大声で避難するように呼びかけながら、エマージェンシーカプセルが置かれている倉庫に走った。


倉庫に駆け込みエマージェンシーカプセル通称エッグの重いハッチを開け、同じように倉庫に駆け込んで来た家族を次々とエッグの中に押し込む。


エマージェンシーカプセルとは地震や津波などの災害時に使用する、耐衝撃、耐水、耐圧、耐熱など災害時に起こり得る全ての厄災から身を守る為に開発された避難器具。


エッグと通称が付いてるように卵のような形をしていて、丸みがある上側に乗員の身体を固定する椅子があり、その下側には乗員がカプセル内で約2週間過ごせるだけの食料、水、生活必需品、携帯トイレが収められ、尖っている下側にはカプセル内に閉じこもっている間に必要な酸素を供給する酸素発生装置が設置されている。


家族全員をエッグ内に押し込め、私自身もカプセル内に入りハッチを閉めながら目を青々とした芝生の向こうに広がる大海原に向けると、普段なら綺麗な青い海が黒く濁り、二十数メートル以上はありそうな津波が海岸に押し寄せて来るのが映った。


ハッチを閉め椅子に座り、身体を固定してからエッグ内に備えられているモニターを点ける。


モニターに映し出されたニュースから得られたのは……。


噴火したのは近海の海底火山だけでは無く、海底陸上を問わず世界中の火山が次々と噴火して溶岩を噴き出しているという物だった。


日本でも海底火山の噴火を皮切りに富士山や阿蘇山など国内に存在する全ての火山が噴火し、火口から大量の岩石や溶岩を噴き出しているらしい。


その所為なのか、エッグの椅子に固定されている身体は先程からガクガクと揺すぶられ続けている。


ガクガクと揺すぶられていたエッグ内に突然、凄まじい衝撃が走った。


ハッチの脇に備えられた窓から外を見る。


次々と押し寄せる大きな波がエッグを倉庫から押し流していた。


倉庫から押し流されたエッグは、押し寄せる水に押されて内陸部を漂う。


遠くに見える富士山は山頂から黒い噴煙と共に大量の溶岩を噴き出していた。


噴出した溶岩は津波により内陸部まで到達した海水とぶつかり水蒸気を上げている。


ガンガンとエッグに噴煙や溶岩と共に噴き出した岩石が当たる。


此れでは私たちのようにエマージェンシーカプセルに乗れた者や、完全に密閉されている核シェルターなどに逃げ込めた者以外は助からないだろう。




と、2日前にそう思ったものだが、エマージェンシーカプセルに乗っている私たちも今凄くヤバい状態。


世界中の火山から噴き出た溶岩によって海水を含む全ての水は蒸発し、大地を溶岩が覆っている。


壮大な地球の営みを人が想定するなんて烏滸がましい事だったのだ。


大地に広がる溶岩の海に漂う大小のエマージェンシーカプセル通称エッグは、鍋の中で茹でられる卵のように溶岩に茹でられてゆで卵に成りつつあったから……。





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何その石川五右衛門の最期のようなオチは!? 噴火があって二日目だと、そろそろ雨が降りそうではあるが、この状況で雨が降ると今度は大洪水だよね~。 ヤベえ、助かる道がない! この感じだとシェルターの方は固…
あいかわらず恐ろしいシチュエーション……(´;ω;`) こんな怖すぎるゆで卵のお話、未だかつてあったでしょうか。 さすがです……。 子どもの頃図鑑でマグマを見てはびびっていたことを思い出しました。 ア…
肝が冷えるお話でした。 ……いや、肝が熱くなるお話。 あり得なくない未来のお話として、本気で怖くなりました。 人類が滅亡するとしたら、まさにこんな状況なのかもしれませんね。 これはまさに生き延びた方…
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