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転生魔王は勇者を迎え撃つ

作者: 上杉満

ここはとある異世界、魔王城と呼ばれている場所。

その最奥にある玉座に一人の巨大な魔物が鎮座していた。


「ついにこの時が来たか・・・」


魔物は玉座から重い腰をあげ、戦闘態勢へとはいる。

彼は魔王ラルゴスタ、魔物の国を統率し人間の国へと侵攻した最強の魔物である。

それと同時に・・・


(やっと・・・あとは勇者に勝てば日本に帰れる!)


そう、彼は現代日本からの転生者でもある。

彼が家のベッドでいつものように寝ていると、夢の中に邪神と名乗る男が出てきた。

男は「僕の世界で最強の存在となり最後の決戦に勝つんだ! それまで僕の世界からは返さないよ」と言い夢から姿を消した。

そして、目が覚めると最強の魔王ラルゴスタとして異世界に召喚されており、対人間軍の指揮を執ることになってしまったのだ。

その後魔王として四苦八苦し、実力をのばし続けたがついに勇者の魔界侵攻、魔王城侵入を許してしまった。

しかし、彼は最終決戦に向けて最大限の準備を整え今の状態に至る。


「やれることはやった。さあ来い勇者! 最後の戦いでは俺が勝つ!」


ラルゴスタがそういった瞬間、玉座の間の扉が勢いよく吹き飛び一人の青年が入ってきた。

青年は持っている剣をラルゴスタへと向け、名乗りをあげる。


「魔王ラルゴスタよ、俺は勇者ユウマ。すまんが討ち取らせてもらうぞ!」


勇者ユウマ、この世界の勇者であり、たった一人で魔王城までたどりついた最強の人間だ。


「悪いがそうはいかない勇者ユウマ。俺はこの時をずっと待っていたのだからな!」

「俺もだ魔王。俺はお前には絶対に負けない」


両者は対峙し、剣を合わせ始めた。


(甘くみるなよ勇者。俺がどれだけ努力したかみせてやる)


そう、ラルゴスタはこの日のために努力し続けた。

勇者ユウマはあまりにも強すぎて登場以来、魔王軍の魔物達をいとも簡単に蹴散らしていった。

これをみたラルゴスタはこのままでは勝てないと悟り、魔王軍への指示は最小限にして自分の経験値集めを優先し、こつこつと努力していたのだ。

この世界ではゲームのように戦うことで経験値を得られ、強くなっていくことができた。

強さの上限はあるが魔王である彼は上限も高く、勇者が来るまでの間にかなり成長することができた。

・・・がしかし、


(つ、強すぎるぞコイツ。どうなっているんだよ)


しばしの剣劇でラルゴスタは勇者の強さを見抜き、絶望した。

勇者の攻撃を防御することが精一杯でこちらが攻撃する間が一切なかったのだ。


「さすがだな勇者よ。これが本気か?」

「いや、まだまだいけるぞ魔王! お前もなかなかやるじゃないか」

(余裕そうじゃないか。このまま打ち合っていても勝てない・・・。だったら作戦変更だ)


ラルゴスタは奥の手を発動させることに決めた。


(悪いな。こんなこともあろうかとこの部屋に細工させてもらったぜ)


彼は勇者が自分の強さを上回ってくるということも想定していた。

そのため、もしもの為に決戦場となるこの部屋に魔術を仕込んでいたのだ。

その魔術は彼が行使できる最強の魔法で本来ならば発動するためには長時間の準備が必要なものである。

だがしかし、魔王の技術により事前に魔術を仕込むことで一瞬で発動できた。

これがラルゴスタの最後の切り札だった。


(頼む・・・ 決まってくれ!)


魔法が発動しとてつもない闇の力が勇者を飲み込む。

その直後、激しい爆発が起き魔王の部屋は崩壊した。


(よし! 勝った! これでやっと日本に帰れる)


大魔法が直撃しラルゴスタは勝利を確信した。しかし・・・


「やっぱりすごいな魔王ラルゴスタ。でもすまない、防がせてもらったよ」

「な・・・」


崩壊した部屋に剣の代わりに大きな盾を持った勇者が無傷で立っていた。


「この盾は聖なる大盾でね、どんな闇魔法からでも装備者を守るという力があるんだ。そうだね、これがなければ俺は負けていたよ」

(うそだろ・・・ なんでそんなの持ってんだっ!)


勇者の用意周到さにラルゴスタはもはや打つ手がなくなった。


(ちくしょう・・・ やっぱり魔王は勇者に勝てないのか・・・ )


なすすべがなく打ちひしがれる魔王のところに


「ごめんなラルゴスタ。俺も勝たなければならないんだ」


再び剣を構えた勇者がとどめをさすべく迫ってきた。


(もう駄目だ。俺はここで死ぬのか・・・ そんな・・・)

「これで・・・終わりだ」


剣が振り下ろされ、魔王ラルゴスタは勇者ユウマによって討ち取られた。



(う・・・ ここはどこだ)


朦朧とする意識の中、ラルゴスタは目覚めた。


「あぁ、産まれたぞ」

「ついに・・・ついに誕生したのですね」

(いったいどうなっているんだ。手足もうまく動かせないし、声も・・・)

「あらあら大きな声で泣いて・・・」

「元気な赤ん坊の方がいいじゃないですか。いずれ勇者になる子ですもの!」

(勇者!? 赤ん坊!? いったいどういうこと?)

「そういうことだよ。前魔王、現勇者君」


突然、彼の心の声に答え、不思議な空間を展開しながら一人の男が姿を現した。

ラルゴスタは彼の姿に見覚えがあった。


(お前はいつぞやの邪神!)

「よく覚えていてくれたね。君にはこの状況を説明しなければならないと思ってまた会いに来たよ」


そう言うと、邪神と呼ばれた男はこの世界のことについて話し始めた。


「僕は邪神でもあり、この世界の神でもある存在。この世界は刺激が少なくてねぇ~。だから、人間と魔族を争わせることにしたのさ。そして、それぞれをまとめる最強の存在として勇者と魔王が必要だった。その勇者と魔王になれる存在が君だったのさ」


神と名乗った男は赤ん坊となったラルゴスタを指差し話を続ける。


「だけど君は一人、勇者と魔王には二人が必要。そこで僕は考えた。僕の力を使って一人二役をやってもらおうと」

(は・・・!? ということはつまり)


ラルゴスタはこれからやらなければならないことに気づいた。

「今度は魔王を倒すため頑張ってくれ、勇者ユウマ! なぁに、魔王のことはよく分かっているのだから今度こそ勝って最強の存在になれるだろうよ」

(も、もう1周か・・・)


魔王ラルゴスタ・・・勇者ユウマは今度こそ日本に帰る為に再び最終決戦へと挑むことになる。







読んでいただき、ありがとうございました。

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