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メンヘラ重井さんの恋は重すぎる  作者: こーへい
第一章 「重井さんとの出会い」
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重井さん 第四話「明日」

放課後ということもあり、比較的静かな空間が続いていた。

俺たちは活動場所である部室に着きガラガラと響き渡るドアを開ける。

外観はちょっとアレだが中は少しマシであってくれ

しかし俺が抱いていた理想の空間とは真逆の光景が目に焼き付けた。

「えー…」

と頭の中に途轍もなく不安が頭をよぎる。ここで部活動が出来るのかと思うような、すぐにでも廃部になりそうな部屋である。

部屋を見渡すと、太陽の光もほとんど届かないであろう薄暗い空間。そして埃が目立つ程ではないが目を凝らして見るとあたり一面に埃が被っており、ご丁寧に蜘蛛の巣まで張られている。物置小屋なのに使えそうなものは何も置かれていない。

そしてなによりも部屋が小さい。

あちこちに無造作に積まれている段ボールが余計に部屋の圧迫を感じさせる。


「渡辺君。わ、私も初めて見たけどこれは酷いね…あはは」と重井さんも絶望したかのように声に元気がなかった。

「と、とりあえず今日は活動せずに部屋の掃除をしようか」


あれから1時間ほど経っただろうか掃除を続けていたがまだ四分の一程度しか終わってなく、まだまだ先が長いことを痛感した。

「そういえば重井さん。今日半袖なんだね。寒くないの?」とこの時期に半袖はおかしいなと思い聞いてみる

「あ、今日はちょっと暑くなるってテレビで言っていたから半袖にしてみたの。この学校半袖とか長袖の指定がないから」

「この学校いろいろと規則がゆるいよね」

そんな他愛もない会話をしながら掃除をしていた。

「渡辺君この段ボール運ぶのを手伝ってくれない?」と4つくらい上に積み上げて持っており今でも倒れるかと思うほどふらふらしている。

そう思っていると「わぁ!」と言いバランスを崩した。

「おっと…重井さん大丈夫?」運がよいのか俺の方向に倒れてきたので上手く支えることができた。

「あ、あ、ありがとう…。渡辺君」

耳元で喋っているかのような小さな声で言う。

その時の重井さんの顔は少し赤かったような気がした。


「よし!これで段ボールは全部だね」

20個位ある全ての段ボールの束をゴミ置き場に捨て疲労が溜まっていた。

「あ、ありがとう渡辺君。そろそろ下校時間だね」

時計をよく見ると下校時間の5分前となっており慌てて帰り支度をした。

空を見上げると暗くなっていた。


正門を出て重井さんに話をかける。

「じゃあね、重井さん。また明日」

俺と重井さんは正門を出てすぐに違う方向に足を向ける。

帰り道は俺と真逆なんだな。

そんなことを思っていると重井さんが振り向いた。

「わ、渡辺君。今日はありがとう。明日も学校で」

そう言い残し帰っていく彼女の後ろ姿に少し目を奪われていた。


挿絵(By みてみん)

家に帰りベッドで横になると一気に疲労が押し寄せる。

今日が高校生活で初めての部活だったが片付けをしただけである。恐らく明日も片づけに追われると思うのでいつになったら本格的に活動できるのか全然分からずにいた。

そんな不安を抱えつつも疲労のほうが勝りすぐに眠りについた。


次の日になり、学校に着くも昨日の事を考えていたらあっという間に放課後になっていた。

重井さんに声を掛けられ、俺と重井さんは一緒に部室へと向かっていた。

慣れない小さな倉庫に入りドアを開ける。

昨日までの不安とは裏腹に、意外にもほとんどの荷物を片付け終わり、埃もほとんどなく昨日の頑張りが報われたような気持ちであった。


「よ、よし。先生から貰ったホワイトボードと机を置いて取り敢えずは完成だね」

傷が入っている机、文字を書いた後が薄っすら残るホワイトボード

これは完全にいらないものを押し付けられたな。

しかし、これが意外にも部屋の雰囲気とあっておりいい味を引き出している。


俺と重井さんは少し残っている荷物を片付け軽く掃除をした。

「あー、疲れた」

「ありがとう、渡辺君。これでようやく活動できるね」


今日は活動するには遅すぎるので明日から本格的に『アニメ研究部』の活動を始めることを重井さんと話し合った。

俺たちは帰る準備をして荷物を背負う。

重井さんからどのような活動をするかは言われていないため、一瞬内容を聞こうかなと思ったが明日の楽しみに取っておくことにした。

「渡辺君。また明日」

その一言だけを残し帰っていく。

その一言だけで俺は、明日の放課後が楽しみになった。

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