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メンヘラ重井さんの恋は重すぎる  作者: こーへい
第二章 「重井さんの変化。仲間の絆」
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重井さん 第十話「初めての打ち上げ」

体育祭が終わり一週間経った。

体育祭で、重井さんは綾香と辻崎君と仲良くなり昼休憩の時間に一緒に食べたりするほど仲良くなっていた。しかし、まだ人見知りが出ているのか喋る声は小さいため少しずつ見守っていこうと陰で支えていこうと決意した。

そして今日は『打ち上げの日』である。参加する人数は半分ほどであり、およそ十五人である。打ち上げ場所は定番のカラオケであり綾香と辻崎君は勿論、参加するクラスメイトと仲良くできる絶好の機会である。

どのように他の人と仲良くできるか考えながら支度をしていると一本の電話が掛かった。

「俊一、起きているか」

「うん、支度していたところ」

「そうか、だったら一緒に行こうぜ。一人で行ってもなんか気まずいだけだしよ」

「いいよ、一緒に行こう。俺が辻崎君のところ行くね」

辻崎君と一緒に行くことが決まり支度をする。辻崎君と行くのもいいが折角なので重井さんと綾香を誘おうとそれぞれにメールをした。


「渡辺君おはよう」

綾香を誘って一緒に重井さんと約束した集合場所へと集まった。ここから三人で辻崎君のところへと向かうからだ。唯一、辻崎君の家を知っているのは俺だけなので家が近い綾香を誘って重井さんと合流した。

「いやー、待ちに待った打ち上げだね。あはは」

「綾香はいつも色々な事を楽しんでいるよな」

「当たり前!どんな嫌な事でも楽しくやれば何でも楽しくなる!そういう俊一はどうなの?」

小さい頃から綾香と一緒だったため色々な事を楽しくやることはよく知っていた。体育祭や文化祭、修学旅行といった行事は勿論、勉強でさえも楽しく取り組んでいた。

「俺は別に普通かなって感じ。今まで打ち上げをしたことなかったから楽しいかよくわからなくてさ」

「私も打ち上げに行くのは初めてだよ。初めてだからこそ楽しまなくちゃ!重井さんはどうなの?」

「え?わ、私…。えっとそんなに楽しみじゃないかな。渡辺君が行くというから来たけど。人と喋ること苦手だし…」

「そっか。でも楽しいと思うよ!滅多にない機会というのもあるけど沢山の人と仲良くなれるいい機会だよ。それでこの打ち上げを思い出して楽しかったなって思えばいいんだよ」


三人で雑談をしていると辻崎君の家の目に着いていた。

「あ、ここだ」

「あ、ここが辻崎君の家?話に夢中だったからあっという間だったね。あはは」

「そうだね。じゃぁ…押すね」

「誰も来ないね。俊一本当にここ辻崎の家?」

家の呼び出しを押しても家に居そうな雰囲気がないほど静かだった。

「あれ、間違えたかな」

苦笑いをしていると横から綾香の冷たい視線がこちらを指していた。辻崎君の家は特徴的であり、外見は二階建てと普通の一軒家に見えるが、家の門の前に猫とドラゴンを混ぜたような謎の置物があるのだ。

「俊一。なにあの置物…気持ち悪い」

置物の大きさは小さいが謎すぎる置物に気持ち悪いという言葉がでるのは仕方ないことだと勝手に思い込んでいる。重井さんを一瞬だけ見てみると言葉こそ出していないが顔が引いていることがよくわかる。

辻崎君が家に居ないため、どうするか迷っていたら遠くから声が聞こえてきた。

「おーい」

声のする方向を見てみると自転車に乗った辻崎君がこちらに向かってきていた。

「すまん、買い物してて遅れたわ...綾香と重井さんも一緒なんだな」

辻崎君は、自転車から降り手を合わせ謝っていた。謝っている辻崎君に対して綾香はゆっくりと近づいて行った。

「辻崎…来ると分かっているのにコンビニに行ってるんじゃないわよ!」

見ている側でも痛みが伝わって来そうなほどの強烈な足蹴りをかました。

「うっ…いい蹴りだ。マネージャーより女子サッカーすればいい選手になれるぜ…」

「ま、それより本当にごめんな。もうちょっと時間が掛かるって思ってコンビニに行ってしまって」

「全然気にしてないから大丈夫だよ。それより打ち上げの場所に行こ」

辻崎君の家から打ち上げの集合場所までは距離があるため電車を使って移動すると決めていた。

辻崎君の準備が整い、歩いて駅へと向かい電車に乗った。電車の中は休日ということもあり満員状態であった。全員電車に入れたのはいいがお互いの顔が見えないほど人で溢れていた。

「やばいな、これ。満員過ぎて降りられるか分からないな」

降りる駅まで三駅でありどうするか考えているうちに徐々に迫っていた。俺の目の前には綾香と辻崎君の二人が目の前にいるが重井さんは人と人の間におり顔は見えないがピンクの色をした服を着ているためすぐに分かった。

これ以上人が増えると見失ってしまうためどうするか考え一つの答えを導き出した。

重井さんだということをしっかりと確認し重井さんの手を力強く握った。

初めて異性の手を握ったためこれで大丈夫なのかという不安があった。

しかし次の瞬間、重井さんの方から握っている手を更に強く握り返したてきたため不安が消し飛び安心へと変わった。

無事、全員駅に降りることができベンチに座っていた。

「あはは…酷い戦いだったわ…無念」

「いや、死んでいないだろ」

「うるさいわね!それほど疲れたってことよ」

綾香と辻崎君が言い争っているのを見て苦笑いをした。

「あ、あの…ありがとう。手を握ってくれなかったら降りられなかったかも」

「ううん、それよりいきなり手を握ってごめんね。それしか思いつかなくてさ」

「よし!集合場所まで行くか!って、重井さんと俊一なんで顔赤いんだ?風邪か」

「いや、これは満員電車の中は暑くてね」

お互い恥ずかしさのあまり顔を赤らめており辻崎君に気づかれたが適当に誤魔化し集合場所へと向かった。


集合場所に着くと俺たち以外、全員揃っていた。

「お、来た来た。これ全員だね」

「よし!今日は楽しもう!」

クラスの人が言い、カラオケの中まで入っていった。

部屋の前にたどり着きクラスの人がドアを開ける。ドアを開けるとクラス全員が余裕で入れる程の広さであり、いつも辻崎君と行くときの部屋の何倍も大きかった。

それぞれ席に座り食べ物や飲み物を注文した。

「みんな飲み物持った?それじゃお疲れ!」

その言葉を合図にみんなで乾杯した。


「よし、自分から歌うわ!」

クラスの人が歌いそれぞれ歌を入れていた。

「重井さんなにか歌う?」

「ううん、私歌うの苦手だから遠慮しとく」

「そっか。なんかごめんね。無理に連れてきたみたいで」

話したことがない人が沢山いるのと歌が苦手ということもあり下を向いていた。

「ううん、来るっていたのは私のほうからだし気にしないで」

重井さんと俺の間で気まずい雰囲気が流れていたためなんとか元気を出してもらいたいと重井さんが好きなアニメの曲を入れた。

俺の番がきて、アニメの曲が流れ始めると、下を向いていた重井さんは上を向き、目を輝かせた。それを一瞬だけ見て元気になってくれてよかったと思い歌い続けた。


―――


「重井さん」

横に座っていたクラスの女子が重井さんに話しかけた。重井さんは驚いた表情をしていた。

「このアニメ好きなの?」

「う、うん。一番のお気に入り」

俺が歌っている最中のため、重井さんの声がクラスの人になかなか聞き取れていない気がしたが相手はなんとか聞き取れていた。

「重井さんって確かアニメ研究部だよね?今年できた部活って耳にしたけど、部活を作るなんてすごいね!」

「う、うん。アニメ好きだから作り上げたんだ。渡辺君と私しかいないけどね」

「え、渡辺君いるの?」

クラスの女子はなにか察した様子で首を頷いていた。

俺が歌い終わり重井さんの方を見てみるとクラスの人と喋っているのが目に入り何故か安心していた。

「あ、次私だ。重井さん席に戻るね」

そういい手を振りながら元にいた場所へと戻っていった。

「早速、仲良くなれたみたいだね」

「そ、そうなのかな」

思わない展開が起きたが、重井さんを楽しませる目標は何もせずに達成した。


あれから三時間程経ったが盛り上がりは続いていた。

俺はクラスメイトの歌を真剣に聞いていた。

「渡辺君」

「うわっ」

いきなり耳元に喋り掛けてきたため思わず驚いてしまった。

「どうしたの重井さん」

「えっと…何言おうかわすれた。それにしても、真剣に聞いているね」

「ご、ごめん。何故かわからないけどずっと聞いていたよ」

「あ、思い出した。みんな気づいてないみたいだけど後三十分しかないよ」

その言葉に慌ててスマホを開いた。時計を確認して重井さんの言う通り後三十分しかなかった。

クラスの人が歌い終わるのを確認しクラスのみんなに伝えた。

「みんな後三十分しかないよ」

「え、嘘もうそんな時間!?」

時間経過の早さにクラスの人は驚いた表情をしていた。

「重井さんちょっと早い気がするけど、すぐ出られるように帰りの準備しとこう。」

「うん、ありがとう渡辺君。今日は楽しかった」

「よかった。楽しくないんじゃ無いかなと心配だったよ」

「ううん、楽しかった」

重井さんと俺は準備をすまし雑談していると時間が来た。それぞれ帰る準備をして会計を済ませた。会計の時に料金を割るのに時間が少しかかったが、初めての打ち上げはいい思い出作りとなった。

外に出ると夕方が近づいており、少し暗くなっていた。

「みんな、今日はありがとう!また学校で」

手を振り見送った後、時間も遅いので寄り道せずに帰ることにした。

「よし、私達も帰ろっか」

綾香が右手を挙げながら大きな声で喋る。俺たちは綾香の声に体を飛び跳ね行きと同じく、電車に乗り辻崎君の家まで行った。

「今日はありがとな、楽しかったぜ」

「こちらこそありがと、また学校でね」

辻崎君が家に入るのを確認して最初に集まった集合場所まで移動した。道中、打ち上げであったことを話し合ったりして笑いあった。

「俊一、重井さん今日はありがと、また学校でね」

綾香は元気よく手を振った後に、スキップをしながら楽しそうに帰っていった。

「重井さん家まで送るよ」

「ううん、大丈夫。今から食材の買い出しに行かないといけないから」

「そっか、また学校でね」

重井さんと別れ、今日の帰りにみんなで撮った写真を眺めゆっくり家に向かった。空はオレンジ色の夕方から夜に移り、星空が広がっていた。写真を眺めながらゆっくりと歩いていると少し人にぶつかってしまった。

「あ、ごめんさない」

下を向いて歩いていたため、前から来ている人に気づかず危うくぶつかりそうになっていた。

「いえ、こちらこそごめんね」

透き通るような声であり、顔を上にあげ顔を確認すると声を奪われてしまった。身長は高く耳にピアスをし、黒い革ジャンをきていてモデルでもやっているかと思ってしまうほどの人物であった。

「怪我はない?」

「はい、大丈夫です」

「そう、よかったわ。それじゃ」

急いでいるのかほんの少し小走りで歩いて行った、後姿をみてなにか違和感を感じていた。

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