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85話、メリーさん講座の答え合わせ

「はぁ~っ、おいしかった」


「いや~、普通のたこ焼きも美味しかったなぁ。思い出したら、また食べたくなってきたや」


 ハルが高速で食べ終えてしまい、慌てて買い足してくれた『ねぎたこ』。シンプルなたこ焼きもおいしかったけど、私はねぎたこの方が好きかもしれない。

 まさか、たこ焼きとおろし天つゆの相性が、あそこまで抜群に合っていただなんて。シャキシャキとしたネギと、プリプリなタコのハーモニーも最高だった。

 食べ歩きを『銀々だこ』だけに留めていたら、四十個ぐらいはペロリと食べれていたわね。今度お金が貯まったら、こっそり『アリオン』に来て食べちゃおっと。


「ねえ、メリーさん。二件目は、私がリクエストしてもいい?」


「いいけど、どのお店に行くの?」


「えっとねー。なるべくなら、家の近くや商店街に無い店に行きたいなーって考えてたらさ、『ミスドーナツ』が頭に浮かんでね。今、めちゃくちゃ食べたくなってるんだ」


「『ミスドーナツ』、ねぇ」


 『ミスドーナツ』、テレビのCMでよく観る店名だ。確か、『ポン・ド・リング』や『オールドファッションセンス』という、有名な看板メニューがあったはず。

 見た事があるので、実物は頭に浮かぶ。けれども、肝心の味が分からない。要は、スイーツよね。だとすれば、やっぱり甘いのかしら? 店名を聞いたら、だんだん食べたくなってきちゃった。


「ええ、それでいいわよ。お店はどこにあるの?」


「おお、ありがとう! 場所は~、ちと待ってて。スマホで、ここのフロアガイドを調べてみるよ」


「あら、調べれば出てくるのね」


 邪魔にならない場所で立ち止まったハルが、スマホを取り出していじり始めた。いいなぁ、スマホ。私の折り畳み式携帯だと、インターネットに繋がらないのよね。

 そもそも、ちゃんとした携帯電話なのかも怪しい。充電なんて一回もした事がないのにも関わらず、ずっと動き続けているし。何を動力にして動いているのかしら? 私の携帯電話。


「あったあった。どうやら、この階にあるみたいだね。場所は~……。あっ、通り過ぎてんじゃん。戻らないと」


「そう。なら、こっちね」


 知らぬ間に通り過ぎていたようなので、来た道を戻る。数分前に去った『銀々だこ』の前に、再び来てしまったけれども。

 辺りを漂うソースのいい匂いが、もう一度食べてくれと誘惑してきている。そう焦らなくてもいいわよ。かなり近い未来に、また来てあげるから。


「そういえば、メリーさん。さっきの答えって、結局なんだったの?」


「答え? ……ああ、時間帯や階数についての話?」


「それそれ。階数だけ聞きそびれちゃってたから、気になってたんだよね」


 話まで戻してきたハルが、両手を後頭部に回した。へえ、気になっていたんだ。さっきもそうだったけど。普段のハルなら、この話をするとドン引きしていたというのに。

 今日は、やたらと食いついてくるじゃない。まあ、いいわ。話していて楽しいから、答えを教えてあげましょう。


「いいわ、教えてあげる。その前にあんたは、何階だと思ってるの?」


「それがさ、いくら考えても分からないんだよね~。やっぱ、高ければ高いほどいい感じ?」


 なるほど、ハルは高さを選んだようね。違う違う、それは素人の考えよ。


「確かに、階数が高い方も悪くないわ。けど、それだとベランダから飛び降りて逃げるっていう選択肢が、最初から取れなくなっちゃうでしょ?」


「ベランダから、飛び降りて逃げる? ……ああ、そういう訳ね? だったら、私が住んでる五階でも、ちょっと高いんじゃあないの?」


「大正解! ベストな階数は、ここから飛び降りれば、まだ助かる見込みがあるかもしれないと悩みに悩む、三階か四階よ」


 そう。下の階のベランダに足が届き、無事に飛び降りられる二階では駄目。無論、そのまま逃げ出せる一階も然り。

 そして五階は、ハルの言う通りね。茂みやら木々が運良くクッションになり、奇跡的に助かる可能性も無くはない。しかし、それ以上の階数は、ほぼ論外だわ。


「うわぁ~、言われて気付いたや。そういう時って、やっぱ背後からじわじわ迫ってくるんでしょ?」


「そうそう! 汗が噴き出した焦り顔で、地面と私を何度も見返してくるのよ。でも、その場合だと二つ欠点があるのよね」


「二つの欠点……。近所の人に助けを求められたり、襲う場面を見られるとか?」


「あら、正解よ。やるじゃない」


「おっ、マジで? やったー」


 追い込まれた人間って、やたらと張った声が出るのよね。

 なので、外に向かって叫ばれると、どうしても近所の注目が集まってしまい。怖い物見たさに、外野がチラホラ集まってくるから、狩り辛くなるのよ。


「どうする? この調子で、応用編もやっておく?」


「あいえ。目的地に到着したので、また今度にしておきましょうぜ」


「え? あ、本当だ」


 立ち止まったハルが、私を誘導するかのように、とある方向へ両手をかざしたので、そちらへ顔を移してみれば。

 見えた先には、飲食スペースとカウンターが一体型になっている店があった。

 店内はモダンチックな雰囲気になっていて、ここから見える限り、テーブル席は十ぐらいある。四つほど空いているから、店内でゆっくり食べられそうだ。


「うっし。んだば、行きますか」


「そうね。何を食べようかしら? いっぱいあるから悩んじゃうわ」


 確かここでは、食べたい商品があったら、トングを使ってトレイに移すのよね。

 一度でいいから、やってみたかったんだ。トングをカチカチって鳴らすの。列の流れは遅そうなので、思う存分鳴らしちゃおっと。

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