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69話、おかわりをする時は、二人で一緒に

「私、メリーさん。今、もっと褒めて欲しいと思っているの」


『話を聞いた限り、火加減はバッチリ、麺やもやしの固さも丁度いいんじゃない? 洗い物もちゃんと出来てたし、皿や鍋も元の場所に戻ってた。台所の後掃除も完璧だったから、始まりから終わりまで文句無しのパーフェクトだね。全部初めてやった割には、マジでちゃんと出来てたよ。すごいじゃん』


「ふふんっ、でしょ? 最強の都市伝説である私に、出来ない事なんて無いのよ」


 あのハルから、全ての工程でパーフェクトを貰ってしまった。なんだかすごく嬉しいわ。やっぱり、水浸し状態だった台所周りを、綺麗に拭いておいて正解だったわね。

 洗い物を済ませた後、見ていてすごく気になったのよ。このまま放置して、ハルが帰って来て台所を見たら、不快な気持ちになるかもしれないと。

 結局、どこまで掃除をすればいいのか分からず、掃除に対して熱が入った事もあり。インターネットで調べながら掃除をしたら、元々綺麗だった排水口の中までやってしまった。

 どうやら、ハルも小まめに掃除をしていそうね。排水口にぬめりや黒ずみが無かったし、匂いもまったくしなかった。


『しっかし、作ったのがまさかの味噌ラーメンだったとはね。バターともやし、コーンしか使わないとばかり思ってたから、思い付かなかったよ』


「あんたが作ってくれたおにぎりと、相性が抜群によかったわよ。本当においしかったわ」


『おお、そりゃよかった。食べたくなったら、どんどん言ってね』


「ええ、分かったわ」


 ハルが握ってくれたおにぎり。ウィンナーと一緒に食べた時よりも、更においしくなっていたのよね。

 今でも私の好きな料理ランキング、十位以内にいるけど。その内、五位以内にまで食い込んでくるかもしれない。


「お待たせー」


「わあ、酸味が利いてそうな匂いがする」


 いつもより、多めに湯気が昇るお盆を持ってきたハルが、皿をテーブルに並べていったので、湯気を浴びつつ中身を覗いてみれば。

 見るからに赤々しいスープを纏う、ほんのりと赤みを帯びたロールキャベツがあった。この、食欲をそそるトマトの香りよ。間違いなくご飯をかき込めるわね。

 それに、スープに浮かんでいる大きめにくし切りされた玉ネギ。これ、私が好きなやつだ。スープの旨味を吸っていそうだし、絶対においしいはずよ。


「ああ、良い匂い」


「でしょ? まあまあ自信作なんだ~。はい、メリーさんの分」


「ありがとう」


 ハルが新たに渡してきたのは、フォーク、ナイフ、スプーン。お皿を持ってスープを飲もうと思っていたけど、渡されたからには仕方ない。行儀よく飲もう。


「んじゃ、いただきまーす」


「いただきます」


 まず初めは、やはりロールキャベツから。左手にフォーク、右手にナイフを持ち、ロールキャベツを崩さないように切っていく。


「うわぁ~、肉汁がすごい滴ってる」


 断面から溢れ出てくるは、キラキラと輝く透明な肉汁。止めどなく流れていく様は、まさにおしとやかな清流の滝。……本当にすごい量ね。いつまでも流れているわ。


「う~ん、トマトがしっかり利いてる」


 最初に感じた風味は、やはりトマト。スープにとろみがつく程の濃さだから、強い酸味がくるのかと思いきや、案外そうでもない。

 確かに強いけど、あまり尖っていなく、食べやすいまろやかな酸味だ。

 コクや旨味もしっかり感じるので、たぶんコンソメで調整されていそうね。けど、トマトの酸味をちゃんと活かしている。

 しんなりと柔らかいキャベツからは、薄っすら甘味が出ているかも? 全体的にトマトが強いし、意識して噛まないとちょっと分かり辛い。


 中身の肉だねは、シンプルに塩コショウだけかしら? ダイレクトに肉々しさが伝わってくる。更に、噛み進めていく内にも、旨味が凝縮された肉汁がじゅわりと増していく。

 ハルの事だから、ニンニクを多めに入れていると踏んでいたけれども。ロールキャベツという料理のバランスが崩壊してしまいそうだし、これなら入れない方が正解ね。

 あと、肉だね自体も相当柔らかい。上顎と舌さえあれば、簡単にほぐれていく。

 そして、キャベツも然り。しかし、各材料から旨味を引き出していきたいから、しっかり噛んで味わおっと。


 玉ネギは、言わずもがな。予想していた通り、トマトの濃厚な風味に負けず、優しい甘さを主張してくる。

 一つ文句があるとすれば、口の中に入れた瞬間、ほろっと溶けてしまう事ぐらいかしら。


「う~ん、おいしい。ご飯が進むわぁ」


「やばいなぁ、三回ぐらいおかわり出来そう」


「スープにご飯を浸したら、三回じゃ済まないかもよ?」


「ありえるね。その上にとろけたチーズとか乗せたら、もっと進んじゃうかも」


「あんた、とんでもない事を考えるわね。絶対においしいじゃない、それ」


 ただのチーズではなくて、量を調節出来る、粉チーズも悪くない。どうしよう、本当に試したくなってきちゃった。


「ああ、ダメだ。ご飯が全然足りないや。おかわりしよっと」


「じゃあ、私も付いてくわ」


「よし。なら二人して、山盛りにしちまいましょうぜ」


「ええ、そうしましょ」


 ついでに叶うならば、ロールキャベツのおかわりもしたい。無かったとしても、せめてスープだけはしたいわね。

 そうすれば、スープの中にご飯を入れた締めが食べられる。あわよくば、チーズを乗せたちょっと贅沢な締めをね。

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