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32話、移りゆく食欲と、内なる野望

「よーし! ようやくメリーさんを、寿司屋に誘う事ができたぞ」


 一つだけ寄り道が出来たけど、ここまで長かった。私も早くお寿司を食べたいし、土曜日が待ち遠しいや。


「布団も干した事だし、今日は良い夢が見れそうだ」


 最近、メリーさんの帰りがだんだん遅くなってきたから、反省会や振り返りが、浴室内か就寝前にしか出来なくなってしまった。

 テレビを観始めてからというものの。スマホに興味を持っていじり出し、タブレットにまで手を出す始末。

 そして、スマホが無ければタブレットを。タブレットの充電が尽きたら、テレビを観ている。

 何をやっているのかちょくちょく聞いているけど、大体は料理について調べていた。今日なんて、間食で出したスルメイカを探し当てていたっけ。


「いっそ、うちに泊れば? って、軽く誘っちゃおうかなぁ」


 今や部屋に帰ってくれば、メリーさんが普通に居る状態だ。もはや、居ない方が珍しい。会話もそつなく交わせているから、次の段階へ行ってもいい頃合いかもね。


「その前に、寿司屋へ行かないと」


 寿司屋へ行く目的は、メリーさんが生魚を食べられるかどうかの確認。それと、私の魚に対する欲求を満たす為。前者と後者、両方共とても大事な事だ。


「う~ん、楽しくなってきたぞ」


 しかし、まだ決まっていない金曜日の献立はどうしよう? メリーさんは、今週中に何かの揚げ物をお願いと言っていたが……。


「金曜日に揚げ物を入れると、ちょっと重くないか?」


 明日は唐揚げで、明後日は中華料理屋。一つ飛んで、土曜日に寿司屋。

 いや、考えずとも間違いなく重い。財布事情も込めて。栄養が偏っているし、金曜日はサッパリした軽い物か野菜物を挟みたいな。

 でも、そうすると、揚げ物は自ずと日曜日になる。寿司の後の揚げ物は、まぁアリっちゃアリかな? 唐揚げ、中華料理からの揚げ物よりかは、幾分マシか。


「更に欲を言えば、つるっとした物がいいなぁ」


 種類豊富な野菜が入っていて、なおかつ口当たりがいい料理。つるっとした物なら麺類だけど、今だとタンメンしか思い付かない。他につるっとした食べ物は……、ワンタン?

 ワンタンなら、もちろんスープにしてだ。具の肉は少な目で、味付けのショウガを多めに入れてサッパリと。そこに、大量の野菜を入れれば───。


「おっ、悪くないかも」


 半分ぐらい食べてから、ラー油を数的垂らし、味を変えるのもいい。これ、意外にご飯と合うんだよね。ちょっぴり辛くなったスープが、食欲を刺激するんだ。

 油で疲れた胃も休められるだろうし、金曜日の献立はこれで決まりかな? けど、流石にワンタンスープだけじゃ、物足りない気がする。


「……なんだか、無性に春雨サラダが食べたくなってきたな」


 それも、豪快にすすって頬張りたい。冷やし中華だとよくやっちゃうんだよね。頬が大きく膨らんで、みっともない顔になるのは分かっているんだけど。やめられないんだな、これが。

 もちろん、実家でも必ずやっていた。その都度、家族のみんなに笑われていたっけ。まずい、今度は冷やし中華が食べたくなってきたぞ。


「いや~。冷やし中華といったら、やっぱり夏だなぁ」


 これもくだらない固定観念なんだろうけど、やっぱり冷やし中華は夏に限る。だからこそ、お酢を利かせた春雨サラダで代用するべきだ。


「だったら、春雨サラダをメインにしちゃうか?」


 待て待て、それは単なる暴走だ。私一人ならともかく、メリーさんを忘れちゃいけない。夕食だけは堅実にいかねば。

 そういえば……。メリーさんがここへ来てから、少しでも『美味しい』と言わせる確率を高めるべく、メリーさんの要望ばかり聞いていたな。

 ここはあえて、逆の発想はどうだろう? 私が、メリーさんにこれを食べてみたいと聞いてみるんだ。そして反応をうかがい、ダメそうだったらキッパリ諦める。

 うん、いいね。聞くだけならタダだし、機嫌を損ねる事もない。望み薄だけど、私が提案した料理に興味を持ってくれる可能性だってある。


「もしメリーさんと仲良くなれたら、色んな場所に行ってみたいなぁ」


 上京してから数ヶ月も経っていないので、気軽に遊べる友達や知り合いがほとんど居ないんだよね。居るとすれば、調理学校で親しくなれた人達ぐらいかな。

 『ルナバックス』とか『ユニシロ』に連れて行ってくれたし、温泉も行ったなぁ。まあまあの頻度で、スイーツの食べ歩きもしたっけ。


「あー、温泉行きてぇー。スイーツも食べたーい」


 よし、決めた。メリーさんと絶対仲良くなろう。んで、その内にでも、二泊三日ぐらいの温泉旅行へ連れて行くんだ。

 メリーさんも、かなりの頻度で旅番組を観ているしね。多少の興味を持っているかもしれない。たぶん、旅館で出てくる豪華な料理だけだろうけども。

 しかし、それで十分だ。旅の楽しみ方なんて、人それぞれある。なんだったら食べ歩きもしたい。そうすれば、メリーさんも旅を楽しめるでしょう。


「ふわぁ~っ……、ねむっ」


 布団の中が温かくなってきたせいで、だんだん心地よい眠気が襲ってきた。メリーさんを家に泊めるなら、ベッドが来る前に使っていた布団を出しておかないと。

 そういえば、メリーさんって寝るのかな? そもそも、風呂もどうなんだ? いいや。明日の夕食が終わった後、デザートを出して本人に聞いてみよう。

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