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185話、きっと、再会は早く

「それじゃあ締めて、二千百円だね」


「二千百円ですね。丁度でお願いします」


「丁度ね、助かるよ」


 会長さんの言葉に甘え、夏祭り初日に行われる花火大会の鑑賞席を、二つ分貰う約束をした後。茶飲みを早々に切り上げ、店内で二つの和菓子を購入した。

 私がチョイスしたのは、水ようかん。こちらは五本入りで九百円。ハルがチョイスしたのは、普通の水ようかんと食べ比べてみたいと決めた、芋ようかん。

 なんとこちらは、八本も入っている。合計で十三本もあるので、一週間ぐらいはおやつに困らないわね。ようかん類は初めて食べるから、楽しみにしていよう。


「それでは、春茜はるあかねさん、メリーさん。夏祭り当日を、心待ちにしておりますわ」


「はい! こちらこそ、楽しみにしています!」


「今日は色々と、ありがとうございました」


 茶筅ちゃせんと湯飲みの返却から始まり、唐突な茶飲みの誘い。ド緊張していたハルが、会長さんの悪意無き剛速球デッドボールを食らって失神し。

 会長さんへ、胸の内に留めていた印象を明かし、打ち解けて。そこから終始、和やかで笑顔が絶えない会話を交わし続け。そして最後に、えこひいきとして、自治会専用の花火鑑賞席を分けてもらった。

 時間にして、約二時間前後。内容がずっと濃密で、感情の起伏も激しかったから、少々気疲れしたものの。いざ終わりを迎えると、やはり名残惜しさを感じてしまうわ。

 入り口前で、ハルと一緒に振り返り、笑顔で見送ってくれている二人に軽く会釈をする。自動ドアを抜けると、セミの鳴き声と共に、夏の暑い日差しが出迎えてくれた。


「うわ~、茶室の涼しさが恋しくなってくるや」


「あの部屋、暑くなくて快適だったわよね」


「ねー。めっちゃくちゃ過ごしやすかったや」


 私の感想に共感してくれたハルが、ゆっくりと歩き出したので、ハルの横へ付く。

 土曜日の三時過ぎともあってか。人間で溢れる商店街は、夏の暑さをものともしない活気に満ちている。

 さてと、ここから家まで、おおよそ十分前後の帰り道。語り合うには短い距離だけど、とりあえずハルの感想を聞いてみよう。


「ハル。今日はどうだった?」


「う~ん、そうだなぁ。波乱万丈な最初を抜かせば、ちょっと非日常的で貴重な体験が出来た一日になったよ」


「その波乱万丈な最初ってのが、とにかく凄かったわよね」


「あっははは……。人は見た目で判断しちゃいけないと、改めて痛感したよ」


 乾いたハルのから笑いが、セミの鳴き声に溶け込んでいく。会長さんの場合、本来の人柄を見抜くのが難しいから、痛感するのも無理はない。

 なんせ、元恐怖を与える側の私ですら、慄いてしまったのだから。


「けど実際、優しくて良い人だったでしょ?」


「うん、すごく良い人だったよ。話してて楽しかったし、笑顔が素敵だったし、お茶や団子も美味しかった。正直、もう少しあそこに居たかったなー」


「そうね。あと一時間ぐらい居たかったわ」


 しかし、会長さんが私達を誘った時、長くても三、四十分の茶飲みだと先に時間を設定してしまい。

 その時間を優に超えてしまったものだから、延長するという選択肢が生まれず、早々に切り上げちゃったのよね。

 なので次回は、時間の設定なんかしないで、のんびりしながら茶飲みをしたいわ。


「そうそう。この時間に帰るのが、なんだか勿体なく感じちゃってるんだよね。特に予定が無かったら、来週も行っちゃおっかなー」


「あら、いいじゃない。きっと、会長さん達も喜ぶわよ。それなら、今日か明日にでも『ハリーポルター』を観て学ばないと」


「おっ、いいねー! 私も観直したいから、一緒に観ましょうぜ」


「なら、ポップコーンとコーラが必須になるわね。ついでに買っていっちゃう?」


「オッケー! 前回の反省を活かして、大量に買ってこっか」


 そうはにかんだハルが、体をスーパーのある方へ向けたので、私も遅れて帰路を変更し、ハルの背中を追い掛けていく。

 一人で観るよりも、ハルと一緒に観た方が断然楽しくなる。会長さんとハルが視聴済みの『ハリーポルター』。一体、どんな映画なんだろう?

 ファンタジー系の内容らしいので、料理が出てくる場面って、たぶんあまり無いわよね。けど、私も二人と語り合いたいから、楽しみにしていよっと。

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