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110話、アレを求めて

「わたひぃ、めりぃしゃ~ん……。いまぁ、びじぃ~ん……。へっへへへっ……」


「……あ、あんさん。また、入る布団間違えてまっせ?」


 スマホに設定した目覚ましアラームが鳴り出したので、起きようとして布団を捲った矢先。布団の下から、体を猫みたいに丸め、ニヤケ面で寝ているメリーさんが姿を現した。

 私が気付かなかったって事は、深夜に入り込んできたのかな? それにしても君、よく私の布団に入ってくるね。これで二回目ですぜ?


「無理やり起こすのも、アレだしなぁ。まあいいや、そこで寝てんしゃい」


 静かにベッドから抜け出して、メリーさんに布団を掛け直す。鳴りっぱなしだったアラームを消し、目覚めがバッチリ過ぎる体を伸ばした。


「う~ん……。そういや昨日、反省会してないな」


 昨日は風呂に入っている時も、ベッドに入り込んでからも、色んな駄菓子を思い出していたっけ。『ねじりゼリー棒』や『チョコおみくじ』。

 『シガレットココア』と『バットチョコ』でしょ? 『ペペロンチーノ』、『ラムネフエ』、『つけボーヤンヤン』、『漬けすもも』、『棒付き水飴』なんかもあったなぁ。

 こんな調子で思い出していたら、いつの間にか寝落ちしていたようで。駄菓子に対するテンションを維持したまま、朝を迎えてしまった。


「おお~、めっちゃ晴れてんじゃん」


 カーテンを細く開けてみれば、とんでもなく眩しい白光に目が眩み。だんだん目が慣れてくると、白みを帯びた青空が見えてきた。いいね、雲一つ無い広々とした晴天よ。絶好のジョギング日和だ。

 しかし、気持ちが晴々とする陽光を浴びようとも、駄菓子に対する欲は衰えを知らず。寝起きだっていうのに、駄菓子がめちゃくちゃ食べたい。

 現在の時刻、朝六時二分。駄菓子屋はおろか、スーパーすら開いていない。開いているとすれば、コンビニぐらいなもの。

 一応、ジョギングが終わったら、コーヒーを買う為に寄るっちゃ寄るけれども。たぶん、ベビースターダストラーメンより安い駄菓子は、置いていないだろうな。


「くそぅ。なーんか、諦め切れないなぁ」


 もう、頭の中には駄菓子しかない。色んな駄菓子が詰まった、バラエティーパック状態だ。今の私だったら、朝食に駄菓子だってウェルカムさ。


「朝食に駄菓子、ねぇ」


 脱衣場に向かい、歯ブラシを水で湿らせて、歯磨き粉を付ける。そういえば、コンビニにアレって売っているのかな?


「……アレの名前、なんだったっけ?」


 歯を磨き始めながら、視線を斜め右へ上げていく。駄菓子の名前だったら、何でもすぐ出てくるというのに。ちょっと食べたくなってきたアレの名前が、まったく出てこないぞ。

 パッケージの絵は、虎で間違いない。腕が太くて、筋肉質な虎だ。なんなら首に、赤いスカーフを身に付けていた気がする。

 牛乳に浸して、変わっていく食感や甘さを楽しむアレよ。……駄目だ。頭がバラエティーパックになっているせいで、名前だけが思い出せないや。

 歯磨きを終え、口をゆすいで顔を洗う。なんだか無性に気になってきた。インターネットで調べるのが早いけど、それを頼らず、なんとかして思い出したい。


「うっし。私がコンビニで買うのが先か、思い出すのが先か、勝負しようじゃないの」


 これは自分との戦いだ。駄菓子の欲に溺れた記憶を探り当てて、ジョギング中に思い出してみせようじゃないの。

 牛乳は、開けていない新品が冷蔵庫にある。一本あれば足りるとして。問題は、アレがコンビニにあるかどうかだ。

 私が知っているコンビニは、ざっと七、八件。念の為、全部回ってみるか。それでも無ければ、ジョギングコースを変えて、遠方にあるコンビニへ行ってみよう。


「っと、反省会をしてないな」


 反省会は、メリーさんが買ってきてくれた『ブタメェン』や『カステラ串』、『ウルトラBIGチョコ』が最強に美味しかった。以上。

 いや、それだけじゃない。梅雨が明けたら、居酒屋の『楽楽らくらく』へ行く事も伝えねば。この件は、朝食を食べながらでいいか。

 さて、あとはジョギング用の服に着替えてっと。久々に走るから、入念にストレッチもして。お金は、千円あれば十分だ。

 よし、準備万端。待っていろよ、アレ。ジョギング中に絶対思い出して、気持ちの良い朝食を迎えてやるからな!

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