表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/41

とある家族の日常の風景 3)語呂合わせの有効活用

 フィクションです。舞台は、パンデミック前です。

「パスワード何にする。数字で4桁」

ホテルの部屋にある金庫の前で、妹が言った。

「いいくに(1192)作ろう鎌倉幕府」

「今それ違う」

私の提案は、一瞬で却下された。

「今は、あれ? 何だっけ」

私の提案を却下した妹の言葉に私は苦笑する。

「いいはこ(1185)作ろう鎌倉幕府」

「何だ。知ってるのに」

「というか、人に違うと言って、知らないのはどうかと思う」

私の言葉を妹は無視した。


「鎌倉幕府は使えないね」

御家人達の耳に入ったら大変なことになりそうな言葉を、妹が口にする。

「何にする? 4桁」

妹は、金庫の前から動かない。


「鉄砲伝来」

「種子島」

「あってるけど違う。いごよさん(1543)がかかる」

「ほう。さすが日本史選択のお姉様」

「残念だったな。世界史選択の妹よ。ついでに、キリスト教伝来」

「フランシスコ・ザビエル」

「正解。で、いごよく(1549)広まるキリスト教」

「なるほど。鉄砲が先か。なんか、血腥いね。でも、どっちも覚えてない」

「パスワードには無理か。一応付け加えると、鉄砲は難破だったはず。キリスト教は、布教しにきたけど。それにカトリックの布教も色々と、色々よ。世界史選択の方が詳しいはず」

「そうでした」


 私達は顔を見合わせた。姉妹だが、お互いに知らないことはあるものだ。

「みんないくいく(1919)」

「ヴェルサイユ」

「いいねぇ」

第一次世界大戦終結の講和条約ともなると、共通の知識だ。

「繰り返しはだめかな」

「それは一理あり」


 妹がニヤリと笑った。

「フランス革命」

「ギロチンが大活躍したとか、フランス国歌が当時を反映していて、なかなかの歌詞だとかしか、思いつかない」

「そのとおりだけど、1789年」

「並びか」

「並びだ」

「ナポレオン関係は良い? 」


「無理、知らない。悔しいから、最期の言葉が、フランス、軍隊、ジョセフィーヌだということはアピールしておく。ただし、諸説あり」

「そう。諸説ある」


 妹がもう一つ捻り出した。

「みなごー(375)」

「ゲルマン大移動」

「いいね」

「でも、誰にでもわかるね」

歴史の授業の最初に出てくる語呂合わせだ。

「よくないね」

妹はあっさりと己の提案を取り下げた。


「うーむ。仏教伝来」

「なにそれ。聖徳太子は知ってるけど」

「ごさんぱち(538)」

「それいけそう」

「何故?」

「語呂が面白いから、覚えやすい。よし、覚えた。頭をゼロにしとく」

「さすが天才、一度で覚えるとは。設定ありがとう」

「いやぁ、それほどでもあるけど」

使い古された言い回しに、二人で笑う。


「では豆知識ついでにもう一つ教えてしんぜよう」

思わせぶりな私の言葉に、金庫を設定し終わった妹が、振り返った。


「聖徳太子は、今、厩戸王になった」

「今になって改名? いつの時代の人よ。平安より前でしょ」

「飛鳥時代。あをによし奈良の都の頃よ。詳しいことは忘れたけど、聖徳太子って後世の人がつけた名前で、当時の名前ではないから、というのが理由らしい。厩戸王も本名とは限らないらしい」

「何それ」

「私もそう思う。というより、それを延々調べている人たちって凄いと思う」

「思うわ」

「結局、全部諸説ありよね」

「タイムマシンないからね。専門家って大変よね」


「では、確認です。仏教伝来?」

「ごさんぱち(538)」

思わず笑った私に妹が不貞腐れた。

「どうしたの。合ってるでしょ」

「いや、ごめん。合ってる合ってる。ただ、ホテルの金庫なのに、仏教伝来って。内張りが金箔の金庫とかならわかるけど」

「それは、御利益ありそうな金庫」

「きっと今回の旅行、御利益あるよ」


 私はカーテンをあけて外を見た。

「ほら、快晴」


 一旦完結にしましたが、エッセイに、舞い戻ってまいりました。


 では、来週またお会いしましょう。


 宣伝です。

現在、連日投稿しているお話もございます。ぜひお越しくださいませ。

「かつて、死神殿下と呼ばれた竜騎士と、暴れ竜と恐れられた竜が、竜の言葉がわかる人の子と、出会ってからの物語」

https://ncode.syosetu.com/n0207ht/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ