とある本の虫の思い出 1)懐かしのヘンテコ冒険譚
「面白いおじさんだな」
子供の時に読んだ古典の一つ、とある男性主人公の冒険譚は、なかなかに面白かった。ちょっと変わっているけど誠実で優しいおじさんが、痩せこけた馬に跨がり、オンボロ鎧に身を包み、お供を連れてヘンテコな旅をする物語だ。本当に良い人なのに現実と幻の区別がつかないおじさんと、そのおじさんを放って置けない人の良いお供のヘンテコ冒険譚は、おじさんが幻から覚めて、あっけなく終わってしまう。
私は少し悲しかった。おじさんは幻から覚めて幸せだったのだろうかと、子供ながらに疑問に思った。
月日が流れたある時だ。テレビで「ラ・マンチャの男」というミュージカル映画を見た。
薄暗い牢獄から始まる物語だが、ミュージカルの場面になった途端に私は思い出した。これは、子供の頃に読んだ、あの楽しいヘンテコ冒険譚だ。
あの話のはずなのに、眼の前のミュージカルは、全く違うお話だった。とある田舎領主が、なぜか騎士道物語に嵌まり込み、現実と物語の区別がつかなくなり、騎士ドン・キホーテと名乗りをあげる。面白いおじさんどころではない。
奇想天外を突き抜けており、現実にこんな人が目の前に現れたら、正気を疑う。しかるべき公的施設に是非、お引取りいただきたい。絶対に関わり合いたくない。
あの楽しいヘンテコ冒険譚は、こんな話だったのか。ちょっと変わっているけど真面目で優しいおじさんは、これ程までにぶっ飛んだ人だったのか。その驚きは感動で終わった。素晴らしい映画だったと私は思う。
映画なので、セルバンテスが書いた原作そのものではない。監督や脚本家、その他大勢のスタッフ達、主演を演じた俳優達が銀幕の上に描き出した幻が、「ラ・マンチャの男」だ。
子供の頃の楽しいヘンテコ冒険譚と、「ラ・マンチャの男」はどちらも私にとって大切な「ドン・キホーテ」の物語だ。
ミュージカル映画「ラ・マンチャの男」1972年制作公開 は検索をかけたらすぐに見つかると思います。劇場でミュージカルが上演されることもあります。
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