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98〈はじめての寒冷なる氷雪の都〉

本日、二話目になります。

まだの方は前話からお願いします!


 寒風吹きすさぶ氷の都だ。

 目の前には氷で覆われた家が建ち並んでいる。

 地面は雪で覆われて、見るからに寒そうだ。

 空は重く暗雲が垂れ込めていて、空が近く感じる。

 俺たちが出てきたのは都の入場門だったらしい。

 石壁に囲まれた巨大都市、その中に俺たちは現れた。


「ゐーっ!〈これ、どこに向かえばいいんだろうな〉」


「正面の城じゃねえの?」


 単純に答えたのはムサシだ。


「coinさん、ナビ、よろしくですー」


 サクヤはとりあえずリーダーに任せるスタンスのようだ。


「ナビと言っても、解放されたばかりで分からないことだらけですが、自分が見た小麦らしきものは、あの城の中庭、やはり凍りついてしまった寺院の一角にあったと記憶しています」


「なんだ、簡単そうだな」


 ムサシの言う通り、ここが都で遠く尖塔が見えているのが城なら、正面の大通りを道なりに進めば、城だ。


「ああ、いえ、いきなりダンジョンだと思ってもらった方がいいですね。とりあえず進めば分かりますから……」


 coinの言葉に従って、俺たちは武器を構えて進む。

 急な雪と風で視界が取れない。


「ぶあっ! 前が見えないミザ!」


 目の前に人影がある。


「気をつけて下さい。視界が悪い時だとモンスターとプレイヤー、接敵距離まで来ないとどちらだか分かりませんから!」


「ゐーっ?〈声掛けたら分からないか?〉」


「なんていいましたー?」


 風が強くて分からないな。仕方がないので、ゆっくり前進。

 ようやく人影が判明すると、そいつは氷でできた氷人間だ。


「敵です! 氷の彫像(アイススタチュー)!」


 coinが叫ぶ。

 煮込みとcoinが前衛、俺とムサシ、サクヤが後衛だ。


 coinは騎士盾にメイス、煮込みは幅広剣を構えている。


 俺とムサシのアサルトライフルが、サクヤの火縄銃が火を吹く。

 氷人間に、ビシビシと罅が入っていく。

 coinが騎士盾ごとタックルすると、氷人間は砕け散った。

 あれ? 簡単だったな。


「まだです! 構えて!」


 coinが緊張したように構える。

 砕けた氷人間が、映像の逆回しのように組み合わさり、また氷人間になった。

 透明だった氷人間はかき氷人間になって、襲って来る。

 coinが騎士盾でかき氷人間のパンチを受ける。

 coinがかき氷人間を押し込んで距離を空ける。

 後衛組の銃弾がかき氷人間に当たるが、プスプスと穴を開けるものの、ほとんどダメージを与えられていない。

 かき氷だからか?


 煮込みが剣による斬撃を決める。

 斬撃はそれなりに通るようだ。


 だが、その後のcoinのメイスが大ダメージを出す。

 かき氷人間の体が抉れている。


 かき氷人間は虚空に向けてパンチを放つ。


「爆発します、気をつけて!」


 かき氷人間の腕が切り離されて、俺たちの中心まで飛んで来たと思うと、爆発した。

 細かい氷の粒が俺たちを襲う。


「ゐーっ!〈ぐあっ! 痛っ〉」


 粒系ダメージは嫌いだ。全身が痛くて辛い上に意外とダメージが多い。

 俺は慌ててHPポーションを被る。


「ゐーっ!〈冷てえっ!〉」


「氷にはこれですねー【火球(ファイアボール)】」


 火球がかき氷人間に当たって爆発する。

 足だけ残ったかき氷人間はどうやら倒せたようだ。

 ドロップは氷のコインだ。マジカに似ている。

 coinによると、氷属性武器を作るための素材になるらしい。

 全員で分けて、先に進む。


「くそ……意外と装備にダメージが入ったな」


 ムサシが防寒装備のダメージ肩代わりが減っていることを気にしている。


「防御力があっても今みたいな細かいダメージが累積すると、ダメージ肩代わりが減るの早いミザ」


 そうか、デカい一発ダメージなら防御力で抑えて数点ダメージで済むが、細かいダメージを何度もくらうような攻撃だと、最低保証ダメージ「1」点が何度も入るからな。


 歩いて行くと、正面に透明な壁がある。

 薄らと白い冷気が立ち昇っている。


「氷……?」


 ムサシが壁に触れようとすると、coinが慌ててそれを止める。


「触らないでください。張り付いて取れなくなりますよ」


「お、おお、そうなのか……」


 この壁があるところは通行止め、そういうことらしい。

 なるほど、大通りを真っ直ぐ行けないわけか。


「すいません、マップ作成ができていないので、ここからは道を探りながら進むことになります」


 coinが頭を下げる。

 うん、最初の分かれ道だな。

 いちおう、左右に道は続いていそうに見える。


「なんとなく右から行ってみますかねー」


 サクヤの提案に反対する理由もない。

 全員で右のわき道に入っていく。

 建物は三階とか四階まである高い建物が連なっている。

 意外と道が入り組んでいる。


 氷人間、氷犬が出てくる。

 氷犬はアイスドッグという名前で『氷結』付きの冷たい息を吐く。

 『氷結』は部分的麻痺と打撃、衝撃、爆発などのダメージに弱くなる状態異常で数値はそれほど高くないのかcoinが食らっても5秒とかそれくらいだ。


 前衛が二人なので、上手くスイッチして補い合うことでフォローできている。


 俺たちは迷いながらも、最初の壁の反対側に出た。

 おそらく前進している。


「こういう感じで進むわけですかー」


 サクヤが納得している。

 雪と風がさらに強くなって来た。

 前2mが見えない。


「これは危なくて進めないミザ〜」


「一度、ビバークしよう!」


 ムサシがテントをインベントリから出した。

 既に広げてあって、地面に固定するだけのものだが、出した瞬間に風にさらわれ、どこかへ飛んで行った。

 ムサシが手を伸ばしたまま固まっていた。

 それから、がっくりと項垂れる。


「ゐーっ!〈おい、ほうけてないで手伝ってくれ!〉」


 俺はスコップを取り出して建物脇に簡易的なかまくらを作る。

 全員で中に入る。


「うー、さぶい……」


「風が強くなると途端に厳しいですねー」


「集めた情報だとテントでビバークできるとあったんですが……」


「あ、私もそれ読んだミザ」


 俺も、私もと全員が同じ情報を入手していたらしい。

 攻略スレか何かか。

 まあ、アカマルの情報でテントと明言していなかったから、土いじり用のスコップをいちおう持って来ておいて助かった。


 かまくらの中で枯れ木を取り出して火を着ける。


「おお、用意いいな」


 ムサシが暖まりながら言う。


「ゐーっ!〈NPCに聞いたからな〉」


 俺は『(みの)』の補修をしながら答える。


「なんか、グレンさん、現地の人みたいですねー」


 サクヤが笑う。

 そんなサクヤは装備が壊れそうとのことで新しい物を出して着替えた。


 それを見て煮込みとムサシも着替えている。

 数回の戦闘で千マジカが飛ぶとか、今の俺ではやってられん。


「ゐー……〈借金とリフォームで金が足りない……〉」


 まあ、そういうことだ。


「装備は命綱ですからね。もし『寒冷』の状態異常に掛かったら気をつけてください。

 (フリッグ)が一時的にかなり低下して、武器を落としたり、滑って転んだりしますから」


 coinが知っている注意点を全員に共有する。


 風が収まってきた。


 俺たちは外に出て、前進を再開した。



おまけ

魔法文明世界『遺跡発掘調査』用フィールド一覧。〈現在〉

第一フィールド

『破滅の森の砦』通称、森

推奨Lv1〜

第二フィールド

『静寂に漂う小島』小島

推奨Lv20

第三フィールド

『拘泥する愚者の道行』沼

推奨Lv35

第四フィールド

『荒廃せし黄金の荒野』マヤみてーなとこ、荒地

推奨Lv50

第五フィールド

『無常なる高野の山脈』山

推奨Lv70

第六フィールド

『寒冷なる氷雪の都』氷都(ひょうと)

推奨Lv90



第六フィールドの通称は暫定です。まだそれほどたくさんの人が訪れている訳ではないので。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] スコップ園芸などの小さいやつシャベル土木などで使う大きいやつ東京など東の方だと呼び方が反転するらしいと言うトリビア
[一言] ぶっちゃけこの地に生えてる麦(?)は小麦じゃない気が…大麦かライ麦辺りではなかろうか?
[一言] この主人公、今回はマタギスタイルだなぁ
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