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はい、本日、三話目です!
いつまでも、あると思うな、連続更新!これを今後の標語にしていきたいと思います。
書き溜め、あと四つしかないの〜!
鋭意制作中です。
「今の方は?」
レオナが聞いてくる。
「ゐーっ!〈ああ、隣に畑を買った、ましろってプレイヤーだ。畑のやり方が分からないようだったから、教えていた〉」
「やっぱり【農民】スキルを活かすプレイヤーが増えてますね」
「ゐーっ!〈そうだな。食べ方すら知らなかったが〉」
「とりあえず、ブームに乗ったということですか。もっと広めたら、野菜の価値が上がりますから、グレンさんの借金返済も早くなりますね!」
なるほど、そりゃ重要だ。
「グレンさん、僕にも畑のこと教えてください!」
シシャモが腕をぐいぐい引っ張ってくる。
「ゐーっ?〈ああ、どこだ?〉」
「向かいにどーんと三十区画買いました」
俺の畑の向かいか。
シシャモにも先ほどの『ましろ』と同じように畑のやり方を教え、ついでに余っている種もくれてやる。
シシャモは同じレギオンだし、幻想種の種も分けておくか。
「あ、グレンさん、昨日は渡せませんでしたけど、これ、オオミさんと私の種です」
「ゐー?〈いいのか?〉」
「はい。私じゃ素材の変化にちょっと使うくらいで、余ってしまう物ですから」
レオナが使うとしたら、装備作りにってことか。
ありがたくもらっておこう。
ちら、と隣りの畑を見ると、『ましろ』が如雨露で畑に水をやっている。
楽しんでいるみたいで、結構なことだ。
シシャモへのレクチャーが終わったら、いよいよ大物である精霊樹と魔力胡桃の木を抜かないとな。
木はドローンで抜く訳にもいかないからな。
支えるくらいで精一杯だ。
抜けさえすれば、インベントリに入れればいいだけなので、そこは簡単だな。
レオナ、シシャモにも手伝ってもらって土を掘り起こしていく。
ドローンに倒れないよう支えてもらい、終わったらインベントリへ。
「うわぁ! 俺の畑が!」「ひぃ! 突っ込んで来る!」「助けて! 食われる!」
駅の近くが騒がしい。
「どこかのレギオンの作戦行動ですかね?」
「郊外地区に人が増えたといっても、ほとんどプレイヤーですからね。旨みはほとんどないと思うんですが……」
シシャモとレオナが首を捻っているが、悲鳴は拡大して、なんなら近づいてきている。
「ゐーっ!〈こりゃまずいな。たぶんガイガイネンの生き残りだ〉」
「ガイガイネン……」
俺たちがそんな話をしていると、疾風のような影が横を駆けていく。
「皆さん、逃げてください!」
『ましろ』だ。
月の意匠が凝らされた、ブレスレットを掲げる。
「月よ、私を導いて……変身!」
『ましろ』のブレスレットから放たれた光が、『ましろ』へと返って、彼女は光に包まれた。
そこにいたのはヒーローレギオン『ムーンチャイルド』の変身ヒーロー『ホワイトセレネー』だった。
「ゐー……〈ホワイトセレネーだったのか……〉」
「グレンさん、ガイガイネンはヒーロー、怪人関係なく、地球の敵です!
私たちも行きましょう!」
「レオナさん、アレ使ってみてもいいですか?」
「ええ、お披露目と行きましょう!」
俺は『ましろ』が馬鹿じゃありませんよーに、と祈るような気持ちでレオナたちとドローン小屋に隠れる。
アバター変更。俺たちは戦闘員姿になって駆け出した。
「ゐーっ!〈くそ! 大型か!〉」
トラック級の大きさの虫、それが大型ガイガイネンだ。
「皆さん、逃げてください!
私がやります!」
『ホワイトセレネー』が大型ガイガイネンの正面に立つ。
「ぬお! ヒーロー!」「関係あるか! 俺の畑が潰されたんだ!」「やった! ヒーローがいてくれた!」「くそ! まさかお前、ヒーロー側かよ!」「そういうアンタこそ、まさか怪人側とはね……」
畑をやりに来たプレイヤーたちは、その状況に大騒ぎになっていた。
「ダメです! 争わないで!
ガイガイネンの思うつぼよ!」
『ホワイトセレネー』が必死に諌めようとするが、プレイヤーたちは興奮度を増していく。
「俺の畑ー! ガイアー!」「と、とにかく本部へ……」「おお! 楽しくなってきたぞ、シメシメ〜!」「武器なんて持って来てねーよ! 助けてー!」
あちらこちらでヒーロー側と怪人側の戦闘員が本性を表していく。
「ガイアー!」
一人のガイア帝国戦闘員が勇敢にも大型ガイガイネンの脚を取る。
そのまま力任せに投げ飛ばそうとでも言うんだろうが、びくともしていない。
「くっ……こんな中じゃ撃てない! 巻き込んじゃう!」
『ホワイトセレネー』はガイア帝国戦闘員を巻き込むことに躊躇していつもの弓型武器を撃てないようだ。
「武器がなくともスキルがあるぜ。【飛太刀魚】からの【旅立ち】シメー!」
シメシメ団員は腕を硬質化、ジャンプするとお腹から『飛太刀魚』の腹ビレが開いて、地上1mを滑空、大型ガイガイネンに突っ込む。
大型ガイガイネンの脚の一本に、ビーンと突き刺さる。
おお! 飛太刀魚っぽい!
だが、大型ガイガイネンは器用にカニ爪みたいになっている脚を動かして、シメシメ団員を捕まえると、口に運ぶ。
「お、お、ま、ちょっ……食うな、食うな……シメ〜っ!」
「ダ、ダメー!」
『ホワイトセレネー』が放った単発の矢が当たるものの、シメシメ団員はその場にアイテムをバラ撒いて、粒子化してしまう。
他方では世界征服委員会の戦闘員と未来的なツルツル素材のブレザーを着たヒーロー側戦闘員が一触即発になりかけている。
「お前なんかに声を掛けるんじゃなかった……」
「ふん、爽やかそうな顔して、悪の戦闘員とはね……」
「うるせー! 俺の純情返しやがれ!」
「誰も惚れてくれなんて、頼んでないわよ!」
「ちくしょう! 種の分け合いっこなんてするんじゃなかった……ちくしょう!」
「なによ……そんな言い方……」
なりふり構わず、ただの木材を振り上げる世界征服委員会の戦闘員。
小さなスコップ片手にヒーロー側戦闘員は泣きそうになっている。
その二人の間に撃ち込まれるエネルギーの矢が二人の動きを止めた。
「やめなさい! 今は共闘の時間よ!」
割って入ったのは『ホワイトセレネー』だ。
二人の愛と憎しみの輪舞曲も気にならないかと言われれば、気になるが、『ホワイトセレネー』はこの場にいる者が一丸となって大型ガイガイネンに立ち向かうことを望んでいるようだった。
「くそっ! 今はやめだ! 俺が渡した茄子の花が開くまではな……」
「私だって! 私だって貴方の育てたキュウリの花、見てみたいもん!」
キッ! と二人のプレイヤーは大型ガイガイネンを睨む。
これゲームだから、十二時間後くらいにはそれぞれの花、見れるぞとか言うのは野暮だよな。分かってる。おっさん、それくらいの空気は読めるぞ。
大型ガイガイネンにヒーロー側も怪人側もなく戦闘員たちが向かっていく。
だが、大型ガイガイネンは、ぶるりとひとつ震えると、背中の甲殻を開いて何かを飛ばした。
その何かは小型ガイガイネンだった。
まるで、産まれたばかりのように何かの液体に濡れそぼる小型ガイガイネンは自動車クラスの大きさで、やはり虫のような蟹のような形をしている。
「増えた……」「なんだそれ……」「いや、前のイベントの時もあったぞ」「ああ、俺も見た。アイツら戦闘員を食って増えるんだよ!」「やべぇ! 大型がまた食ってる!」
見れば大型ガイガイネンの脚を捕まえていたガイア戦闘員が、もぐもぐされていた。
「早く叩かないと、まずいですね……」
レオナが呟く。
「ゐーっ!〈くそ! 武器なんてスコップくらいしかないぞ!〉」
「大丈夫ですよ! グレンさんは見てて下さい。僕がアイツを仕留めます! 」
シシャモが自信ありげに言う。
それはそうだろう……シシャモがインベントリから取り出したのは体高5mの巨大ロボだったのだから。
人型をしている。全てが重量感のある金属製で、巨人の全身鎧を見ているようだ。
全体的には横に広い印象がある。
「ゐー……〈もしかして、それが……〉」
「はい。装備部がその総力と趣味をまとめあげて作り上げた、人型ロボッ……ではないですが、人型ロボット風、巨大鎧、その名も『動く棺桶一号』です!」
「ゐー?〈ロボじゃない?〉」
レオナは小さく咳払い。
「ロボット風、巨大鎧です……」
レオナは少し悔しそうに呟いた。
シシャモは足元のツマミを動かすと、鎧の腹が開く。
中は明るいピンク色でゼリーのようなものと、身体と繋げる輪のようなものが幾つも中心に向かって伸びている。
「見てろよ、ガイガイネン! 行きます! 【水中行動】」
巨人の腹までよじ登ったシシャモがゼリーの中へ。
そうして、あれこれと輪っかを装着していく。
「おい、なんだアレ……」「ま、まさか……」「どこだよ、あんなモノ作ったのは……」「あ、下にいるの『りばりば』じゃねえか?」「う、動くのか?」「でっか! 怪人か?」「いや、それなら『ホワイトセレネー』に反応してアナウンス出るだろ」
腹が閉じた。よく見れば、腹のところに細かくスリットが入っていて、あれで外の景色を見るらしい。
「リビコフ一型、起動!」
シシャモの叫びが『郊外』の広い畑に谺した。
な、なんだってー! 畑のお隣さんはヒーローだったー!
はい、そうです。予想通りですね。
ここで実は『ロータスフラワー』に変更しようかとも思いましたが、性格が違いすぎて変更したら、変な時空の歪みが発生しそうなので、辞めました。
都合のいいこと言いますよ。『読者の期待を裏切らない』ことにしました。
はい、言い訳ですね。良い意味で読者の期待を裏切れない、それだけの面白い展開を用意できなかったんです。
申し訳ない。
読者様の感想から着想を得た入りでしたが、中身の練り込みが足りませんでした。精進させていただきますm(_ _)m
まあ、こんな物語ですが、もう少しお付き合い下さいませ。
次回「シシャモ、大地に立つ!〈嘘〉」お楽しみに!




