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今日は二話目があります!
まだの方は前話からお願いします!
俺とレオナとオオミは『シャーク団』の罠にかかって感覚設定︰100%、死んだらこの岩場に復活という、違法コードを打たれた。
普段なら嘆く場面だろうが、元から感覚設定︰リアルでやってる俺には逆に有利じゃねえか?
何度、死んでもここに復活するんだろ?
俺はインベントリから、死んでもアイテムドロップ対象にならない『ベータスター』だけ残して、全アイテムをその場に落とした。
「ゐーっ!〈んじゃ、行ってくる!〉」
「ちょっ、ちょっ、ちょっ……グレンさん!
どこへ行くって言うんですか?」
シシャモが俺に縋り付く。
「ゐーっ!〈いや、フィールドで死んだらデスペナ、アイテムドロップだろ。あっちこっちで死んだら、後で集めるの苦労するだろうからな。先にここに置いときゃ、安心だろ!〉」
俺はシシャモに親指を立ててサムズアップした。
「な、何考えてるんですかっ! 感覚設定︰100……あ……」
「ゐーっ!〈おう、元からだ。何も問題ない。全員、生きてここから返さねえ!
ああ、レオナ。この違法コードって入ってると不味いやつだろ? 俺の仕返しが終わるまで、何とか引き延ばせないか? 復活がないと困るんだが〉」
「えっと、本来なら違法コードは入れた段階で運営に連絡が行くんですけど、おそらくこれはソレを封じる類の違法コードが入ってます。ここを切り抜けてから、運営に連絡すれば問題ないかと……脳波スキャンは生きてるでしょうし……」
「ゐーっ!〈OKだ。お前らは慣れてないだろうから、援護頼む! なんかヒーローレギオンの戦い方みたいだな。まあ、たまにはいいか〉」
一人が戦闘員を相手にして、それを後ろから援護するのは、まさにヒーローレギオン。
まさか、このゲームでヒーロー気分まで味わえるとは!
まあ、死ぬの前提だけどな。
よっしゃ! やってやる!
だが、キウイと俺は鎖で繋がれたまま。
やるしかないか。
狙いを定めて……お、『シャーク団員』が顔を出した。
「ゐー……〈グレイプ……〉」
俺は頭を撃たれて死んだ。
───死亡───
───防衛位置に自動的に復活します。残り30───
やべぇ。無防備過ぎた。
何も感じないくらい一瞬で死んだ。
半透明の俺は、他の三人が動揺している様を見ていた。
三十秒経って、俺は復活した。
キウイとの鎖はなくなっていた。
け、結果オーライとしておこう。
「だ、大丈夫で……」
「ゐーっ!〈許さねえ!〉」
シシャモに最後まで言わせず、俺は走り出した。
おおう、銃弾が雨あられと降って来る。
『ベータスター』を構えて、目につくやつに片っ端からフルオート射撃してやる。
今の『シャーク団』の狙いは俺。
レオナたちの岩場に圧力はない。つまり、レオナたちは狙い放題だ。
「殺せ!」「バカが! 痛みで錯乱してやがる!」「撃て、撃て! ドロップは早い者勝ちだぞ!」
一発、腹に食らった。
衝撃が腹を抜けていった。
熱くて冷たい感じがする。
撃ったやつを見る。
「ゐーっ!〈てめぇか! 【正拳頭突き】〉」
そいつの顎を砕く。銃弾を周囲にばら撒く。
「ひっ! 痛みがあるんじゃ……」
おっと、近くにもう一人居たか。
「ゐーっ!〈痛えにきまってんだろ! 【一刺し】〉」
俺の蠍尻尾が伸びてそいつに『熱毒』プレゼント。
お、綺麗に敵が並んでやがる。
「ゐーっ!〈貫通だったよな! 【一揆呵成】【一揆呵成】【一揆呵成】〉」
俺の蠍尻尾の先から赤い光が伸びる。三人に三発ずつ。よし、粒子化してアイテムをドロップした。
だが、俺の快進撃もここまでだった。胸に一発。俺は血反吐を吐いて死んだ。
───死亡───
───防衛位置に自動的に復活します。残り30───
半透明の俺が岩場にいる。
「グレンさん! くそう!」
シシャモが重機関銃を撃ちまくる。
「くっ……リージュさん、まだなの!」
俺は半透明なまま、自分の心を落ち着けようとするが、無理そうなので、じっと次に向かうべき方向を確認する。
血反吐を吐くとか、久しぶりだ。
いや、あんな込み上げるような血反吐はさすがに初めての経験で、ちょっとビックリだ。
俺は復活した。
「ゐーっ!〈よし、いってくる!〉」
「え?」
シシャモの驚きをそのままに俺は走り出した。
「すごいサイ……」
俺は狙いを定めた方向に走りながら、ステータスバーを確認。
ちゃんと回復している。
よそ見をしたら、右腕を撃たれた。
「ゐーっ!〈いてえっ! くそ!〉」
左手で『ベータスター』をインベントリに仕舞う。
「ゐーっ!〈【封印する縛鎖】〉」
右腕が余りにも痛いので、消し飛ばした。
ギーンッとした痛みが、ズキズキに変わる。
こっちの方がマシだ。
鎖が『シャーク団員』に巻き付く。
「なんだ?」「アーツ?」「う、腕が無い……」
「ゐーっ!〈【神喰い】〉」
左腕を狼頭に変える。そのまま鎖に巻き付かれたやつの所まで行って、頭から喰った。
───能力値が全て3上がります───
ちっ! そう都合良くユニークスキルは持ってないか。
───【全属性耐性】発動、成功───
俺の右腕から流れる血が止まった。『流血』の状態異常だったか。
「く、喰った……」「なんで動いてんだアイツ」「ちゃんとコード入ってんだよな?」
次のやつに到達する直前、今度は左脚に弾が入った。
ぬおっ、転ぶ。
「ゐーっ!〈【緊急回避】〉」
敵の目の前へ。
敵に掴まって転倒を回避しようとしたが、俺の手は狼頭だった。
相手の肩口に食らいつく。
「ひっ……」
「ゐーっ!〈くそ! 【希望】〉」
口の中に短剣。それが俺の喉を突き破る。
同時に大量の水が口から溢れる。
───『思考操作』の方向性を決めて下さい───
なんだ、このアナウンス?
敵の頭上には『炎上』『感電』『魅了』『目眩し』『昏倒』『方向誤認』『流血』『混乱』『神経毒』『氷結』『思考操作』『ショック状態』『魔力酔い』『弱毒』『胞子寄生』と出ている。
あるな。思考操作。いつ食らった?
そもそも『思考操作』ってなんだ。
わからん。わからんから却下だ。
───以後、『思考操作』は作為なしの方向性をデフォルトとします───
うん、どうでもいい。
たぶん、コイツは死ぬ。次だ、次!
俺は辺りを見回す。
何故か『シャーク団』の手が止まっていた。
俺は手近な奴に狙いを定めて、一歩、また一歩と近づく。
「か、怪物……」
「ゐひぃ……〈逃がさねえよ……〉」
逃げようとする『シャーク団員』の足を蠍尻尾で払う。
べしゃり、と『シャーク団員』が転んだ。
俺は何とか近づいて、そいつの頭を喰った。
う〜ん……この空腹感はなんとかならんものか……。
「ぎゃあ!」「なんだっ!」「水着!?」
「はいはい、逃がさな〜い! 全員、きっちり始末すんのよ!」
「は〜い、姉さん!」「天然食材、ひゃつほう!」「死ねや、蛆虫〜!」
『シャーク団』の背後からリージュ率いる『シメシメ団』の肌色美女たちが、手に手に剣や手斧などの武器を持ってやってくる。
「な〜に〜、反応薄いわね〜!
せっかく美女たちが猟奇的なPKKしに来てあげたんだから、もう少し喜びなさいよ!」
そう言ってリージュはごついマグナムを『シャーク団員』に放った。
「ごはっ……」「て、敵襲、敵襲だ!」「なんだコイツら!」
ようやく『シャーク団』の反撃が始まる。
「ゐひぃ……〈来てくれたか……いてて……〉」
ひょいひょいと軽快に歩いて、リージュが俺のところまで来る。
「うっわ〜! 良い男! 頑張ったのね〜」
「ゐひぃ……〈冗談はいいから、ポーション奢れ……〉」
「やあね。ホントのことなのに……」
悩ましげな顔はやめろ!
リージュがポーションを取り出そうとした瞬間、俺に流れ弾が当たって、俺は死んだ。
「ちょっと、グレンちゃん!」
リージュがマグナムを構える。
「アンタら、許さないわ……」
リージュの呟きを聞きながら俺は粒子化した。
岩場で俺は復活する。
復活する前から俺は両手、両膝をついてしまっていた。
痛いのは覚悟の上だ。だが、リージュたちが来て、ホッとしたら精神が摩耗した。
「ゐーっ!〈辛い……〉」
「グレンさん……」
レオナの心配する声が耳に響く。
「ゐー……〈PKどもの手が一瞬止まるくらいの怪物扱いって、代価払ってるだけなのに酷すぎねえか?〉」
「グレンさん……?」
レオナの目線が冷たい。
俺は無言で『ベータスター』を出すと、『シメシメ団』の援護に入った。
死にまくってると精神が摩耗するのは事実だ。
好きで死んでる訳じゃないしな。
まあ、あんまりレオナに心配かけるなってことだな。
そういえば、俺たちに変な違法コードを入れて来た三人はどうしたんだろうか?
海を眺めてもアイツらの影は見えない。
「ゐーっ!〈あの三人、見つけたらぶっとばす!〉」
俺は海に向かって誓った。
リージュたちがやって来る。
「終わったわよ。これ、アイツらのドロップね」
キャンピングシートを四人がかりで拡げた美女たちが、その上に大量のドロップアイテムを載せて持ってくる。
「いえ、それはそちらで分けていただければ……」
「ううん、これはアナタたちが分けてちょうだい。その代わり、浜辺でバーベキューしたいのよ。約束の品、お願いね!」
リージュのウインクを、サッと避けて、俺は落とした自分のアイテムを拾い上げる。
「ゐーっ!〈んじゃ、超特急で帰るとするか! 姫様たちに食材持って来ないとな!〉」
「ま、姫だなんて! アンタたち、グレンちゃんがすぐに取って来るって! このまま砂浜に戻って、今日はパーティーよ!」
「ひゅー!」「さーいこーう!」「グレンちゃん、話分かるー!」
「あら、そこにいるの長鳴き神鳥じゃないの?」
「え?」「レアアイテム!」「いいね!」
俺は慌ててキウイの前に立つ。
「ゐーっ!〈すまんな。コイツは俺のテイムモンスター。手出し無用で頼む〉」
「こけ〜……」
キウイはデブい身体を縮こまらせて、俺の後ろに必死に隠れようとする。
「え?」「レアモンスター、テイム?」「すっご!」
俺たちは急いで戻って、途中ムックたちに会ったので事情を説明しつつ、ドロップアイテムをロッカーに突っ込んでから、代わりに野菜を詰めて、リージュたちがバーベキューをやる『二番島』の砂浜に行って、一緒にバーベキューをした。
───運営により脳波スキャンが行われています───
───問題なしと判断───
───違法コードを削除します───
───レギオン『シャーク団』に警告、違法コード作成者スミツキをアカウント削除、違法コード使用者トガリ、ニシレモン、ドチを厳重注意の上、三日間のアカウント停止処分とします───
───処分に不服がある場合は運営までご連絡ください───
アナウンスが流れた。
───レギオン『リヴァース・リバース』より申し立て───
───全体アナウンスです。『シャーク団』と『リヴァース・リバース』のレギオンイベントを強制開催致します。賭け品はレギオンLv1・八億六千六百万マジカ、またはその相当品とします───
「あら、レオナってば、シャーク団潰すの?」
全体アナウンスを聞いたリージュがレオナに言う。
「ええ。アカウント停止なんて温いことさせませんよ。辞めるなら自分から辞めてもらいます!
ついでですから、ウチの戦争イベントのために礎になってもらいます」
どうやらレオナが処分に不服を申し立てたらしい。
それで処分の代わりに、レギオン同士の抗争イベントを起こさせた。それも『シャーク団』に出せるギリギリまでの全てを賭けた抗争で、その全てを接収するつもりらしい。
「あ〜ん……羨ましい! ウチもどっかと喧嘩しようかしら……」
リージュが悔しそうに呻いた。
面白かったよーと思っていただけたら、まだの方はポイント入れてくれると作者の執筆速度があがります!
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来たれ、ぶーすと!




