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おおっと、嬉しくて手が滑ったー!

本日、二話目です。

皆様、読んで下すってありがとうございます!

まだの方は前話からお願いします!


 橋は多少、波に削られ、苔むしているものの立派なものだった。

 俺たちの前を赤い仮面に蛍光緑の全身タイツたちが歩いている。


「『ウインタープレゼント』ですね。

 この前の『鬼一法眼戦』で名前を上げて、着々と人を増やしているみたいですよ」


「へえ。そんなところもあるんですね」


「まだ新興の勢力だから、実力は未知数だサイ」


 レオナとオオミは、シシャモに色々と教えてやっている。

 他のレギオンの情勢も把握しなければいけない幹部というのは、好きじゃなきゃできないな。


 そんな『ウインタープレゼント』を見ていると、いきなり横合いから影が迫る。


「来たぞ!」「無理に受けるな!」「わぁ!」


「あれが『飛太刀魚』であっちが『飛烏賊』、あ、空から『槍カモメ』とかありますから、基本的に全方位警戒が必要です」


 飛ぶ魚たちと飛ぶ鳥、いや飛ぶ鳥は普通か。

 どれもモンスターらしい。

 『飛太刀魚』はトビウオと太刀魚の合体したような細長くて胸びれを拡げて飛んでくるやつで、口も槍みたいに尖っている。

 『飛烏賊』は頭が刃物のようになっていて、飛ぶ時だけ頭を固めて来るらしい。

 『ウインタープレゼント』のやつが腕を斬られて部位破損を起こしている。

 飛行スピードはかなり速い。

 何匹か倒すと『槍カモメ』がやって来た。

 倒された『飛太刀魚』と『飛烏賊』のドロップを狙っているらしい。


「まともに相手すると大変だから、ドロップ狙いじゃないなら、走り抜けるのが正解だサイ」


「前にここを通った時は酷い目にあいました」


 シシャモが嫌そうに見ていた。

 レオナが同意するように頷いて説明を続ける。


「確かに初心者だとキツい所ですね。ただ、橋の上だと無料コンパク石や『飛太刀魚』なんかのガチャ魂が落ちやすいんですよ、何故か。

 それが罠なんですけどね」


「コンパク石落ちた!」「守れ! 槍カモメが狙ってるぞ!」「くそ! 俺の腕、持ってかれた!」


 言ったそばから『ウインタープレゼント』が騒がしくなる。


「ゐー〈これ、戦闘終わりまで待つしかないのか〉」


「まあ、下手な誤解を生むよりはいいですよ。あまり時間が掛かるようなら走り抜けてもいいですけどね」


「ひと声掛けて、脇目もふらずに走るのがマナーだサイ」


 暫し待つと、戦闘がひと段落したようだ。


「通りまーす!」


 レオナが声を上げる。


「おお、すまない。通ってくれ!」


 俺たちは走り抜けて、『二番島』に入った。


「ここに赤実のぐちゃぐちゃ広場がありますよ」


 シシャモが教えてくれる。


「ゐーっ!〈おお、そうなのか!〉」


「でも、赤実って本当に不味いですよ」


「ゐーっ!〈シシャモが見てもそうなのか?〉」


「あ、当時はまだ【農民】スキル持ってなかったので……それに感覚設定もデフォルトで食べましたし……」


「ゐーっ!〈今、見たら変わるかもしれないってことか〉」


「そうですね。その可能性はあると思います」


「それじゃあ、まずはソコから行きましょうか」


 レオナが案内してくれる。


 トマトだ。見た目は赤く熟れたトマトの群生地だ。

 自立できず、確かに広場のように見える。

 赤実と謳っているが、赤だけでなく白っぽいものオレンジのものなんかもチョロチョロ生えている。


「せっかくですから、写真でも撮りましょう」


 レオナの発案で、四人並んで赤実広場をバックに写真を撮る。


 さて、赤実を近くに寄って見回してみる。


 ▽トマト〈原種5〉 ▽トマト〈原種3〉 ▽トマト〈原種17〉 ▽トマト〈原種1〉


 トマトの原種? 食べてみれば分かるか?


 俺は原種1から食べてみる。青臭いがゼリー部分が多い。正直、あまり美味しくはない。


「ゐーっ!〈シシャモ、そこら辺に原種2ってないか? 〉」


「ありますよ。これです」


 もらった原種2は色がオレンジだ。味は……青臭いが原種1ほどではないか。果肉が厚い。

 原種3はどうだろう? これは香りが良いな。だが、食べてみると青臭さは強烈だ。

 だが、それぞれの違いがあるのは面白いな。


 とりあえず、片っ端から食べてみるか。


「うっ……青臭い……良くこんなの食べられますね……」


「ゐーっ?〈まあ、確かに美味くはないけど、微妙に味が違うのって面白くないか? その内、当たりを見つけられそうだろ?〉」


 当たりは見つからなかった。

 ここにあった三十種ほどを食べたが、確かに味、色、形、香りに差はあれど、どれも美味しくない。

 まあ、全部食べた記念に種は持ち帰るか。


「まあ、そういうこともありますよ」


 レオナに慰められる。


「ゐー〈いやあ、まさか全部ハズレだとは思わなかった。それぞれいい所、悪い所はあるけど、結局、美味くはないなんてな……〉」


「私もこのマップのすべてを知っている訳ではないですから、探せば良いとこ取りのトマトなんかもあるかもしれないですね!」


「ゐーっ!〈良いとこ取り? ……それだ!〉」


「どうしたサイ?」


「ゐーっ!〈いや、実は今日、リアルの方で本物のトマトを食ったんだけどな……〉」


「え? グレンさんて、お金持ちなんですか?」


 シシャモが驚く。いや、驚くのも失礼だぞ。

 確かにお察しの通り、安月給だけどな。


「ゐーっ!〈いんや、全然。昼間に六時間掛けて農家の方に安く譲ってもらったんだよ、知人の見舞いにと思ってな。それで……〉」


 俺はその農家の方が「家は品種改良して病気に強い野菜にしている」と語っていたのを思い出したという話を皆にする。


「ああ、銃とナイフの組み合わせで銃剣みたいな……」


 レオナが、ポンと手を打ったが、違うと思う。


「ゐーっ!〈まあ、つまり、その品種改良というのを『リアじゅー』でできないかと思った訳だ〉」


「どうなんですかね? できたら面白いかもしれないですけど……」


「ゐーっ!〈いや、このゲームならやれそうな気はするんだけどな。連絡先は聞いてあるから、明日にでも品種改良のコツがないか聞いてみるか……〉」


「じゃあ、僕もウェブで調べてみます!」


 シシャモとそんな【農民】トークをして、俺たちは先に進む。


 途中、途中で適度に狩りをする。

 角のあるアナコンダやら巨大ヤドカリ、極彩色のアリクイは腹に貯めた小さなアリの牙に『弱毒』を着けて吹き掛けてくる。広範囲で牙ひとつ「1」点ダメージだが、範囲にいると結果的に「20」点くらいダメージが蓄積して、死ぬかと思った。


「ゐー……〈ひぃー、いてて……〉」


「大丈夫サイ?」


 オオミが心配してくれる。むむ、ムック的イケメン臭がする。モデル体型だしな。


「ゐーっ!〈おう、このHPポーションがあれば大丈夫だ〉」


「それ、NPC売りのポーションだサイ?」


「ゐーっ!〈ああ、色味で分かるだろ。薬草の中でもフレーバーってのが入ってないと、感覚設定︰リアルじゃキツいことに気づいたからな〉」


 NPC売りのHPポーションは青い。

 一方、プレイヤーメイドは緑やら黄色やらが多い。

 『りばりば』基地のNPC、アカマルによると、薬草〈フレーバー〉が多いと青くなるらしい。

 薬草〈フレーバー〉はいわゆる痛み止めだ。


「ああっ! そういうことなんですねっ!」


 レオナが迫って来る。


「ゐーっ!〈お、おお……どういうことだ?〉」


「薬草〈フレーバー〉って痛み止めですよね」


「ゐーっ!〈おう、そうだ〉」


「そうか……盲点でした。感覚設定を上げるなら必要な成分ですよね」


「ゐー?〈マジで、レオナは感覚設定上げてプレイするつもりなのか? オススメはしないぞ〉」


「あ、えと、まあ、色々と思うところがありまして……」


 うーむ。感覚設定上げると死ぬほど痛いと伝えるべきか?

 いや、分かってるはずだよな。

 まあ、理由もあるようだし、本人の好きにやるのが一番だよな。



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― 新着の感想 ―
[一言] ゐー… <品種改良は…沼だな。果ての無いエンドコンテンツだ…> ゐー? <それにこの肩パッドは手を出してしまうのか?> ゐー… <しかしこのゲームの中の作物の成長速度を考えると、受粉タイミン…
[一言] この肩パットは言語が古代帰りしてるのに、しっかり農家してるなぁ。あれ?農家?
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