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祝え! 新たなる記録の登場である!どんどこどーん!
と脳内ウォズくんが騒いでおりますw
これも応援してくださる読者様あってのこと。
ありがとうございます!
誤字報告、感想、ご指摘、大変に助かっております!
重ねて感謝を! m(_ _)m
「とりあえず、シシャモはそれ使っておくといいサイ」
「いいんですか?」
「俺は予備武器があるから大丈夫だサイ」
オオミはシシャモに重機関銃を使わせて、自身は巨大な斧を取り出した。
全員後衛よりは一人前衛がいた方がバランスがいい。
俺たちは隊列を組んで進む。
「ゐーっ!〈なあ、赤実の広場とかいう場所に行きたいんだが〉」
「ああ、トマトもどきのあるぐちゃぐちゃ広場ですよね!」
「ゐーっ?〈トマトもどき?〉」
聞けば、見た目は熟れたトマトだが、青臭くて食べられたものじゃない赤い実の群生地らしい。
ここ『静寂に漂う小島』というのは橋で繋がれた五つの小島と、どことも繋がっていないひとつの小島、さらにその小島から繋がる洞窟ダンジョンという三つのフィールドがあるらしい。
シシャモたちがボス狩りをしたのが洞窟ダンジョンで、橋で繋がれた五つの小島のどこからでも海を渡れれば六つ目の小島に行けるということで、ここではボス狩りが一番簡単だと言われていると聞いた。
俺たちが行うのは五つの島めぐりだ。
スタート地点の『一番島』ではバナナモンキーという猿が出る。
このバナナモンキーのドロップはそのものバナナなのだが、レアドロップだとバナナの木というアイテムが出る。
バナナもバナナの木も普通の戦闘員からすれば消費アイテムに過ぎない。感覚設定リアルじゃないと味もぼやけるしな。
だが、俺からするとバナナは濃厚で甘味が強く、しっかり天然物だし、バナナの木は【農民】スキルで植樹可能と出ている。
「グレンさん……」
「ゐーっ!〈ああ、このバナナ、育てられるぞ〉」
シシャモも【農民】スキルを少し上げたようで、気づいたようだ。
俺たちはレアドロップを狙って狩りまくる。
ドドドドドドドドドッ!
シシャモの重機関銃が唸る。
「「「モキーッ! モキーッ!」」」
木の枝にいるバナナモンキーたちが幹の一部や枝と一緒に、ボトボトと落ちてくる。
重さを無視できる強さの一端を垣間見た。
さらに、落ちた枝に鮮やかなオレンジ色の柑橘系の実がついているものがある。
それを拾う。
▽魔女レモン ▽魔女レモン ▽レモン ▽魔女レモン
「あ、それは『魔力酔い』が起きる食べられないミカンですよ」
レオナが忠告してくれる。
「どうも【農民】スキルだと魔女レモンという名称になるみたいですよ」
「ゐーっ!〈それにごく稀にただのレモンが混じってるな〉」
「え? 全部同じじゃないんですか?」
「ああ、【農民】スキルがないと名称出ないんですかね」
「ゐーっ!〈たぶんな。薬草なんかも今のところ詳しく分類されずに、ただ薬草だからな〉」
「あ、でも薬草は乾燥させると【薬師】スキルで名称が出ますよ」
一次産業と二次産業の違いとかあるのかもな。
まあ、それはそれとして、魔女レモン。
『魔力酔い』という『酩酊』によく似た状態異常。
これだな、静乃が言っていたのは。
がぶり、と齧ってみる。
「ゐーっ!〈うひぃぃぃ! すっぱー!!〉」
───【全属性耐性】失敗───
お、ちょっとふわっとする。
───『魔力酔い』に掛かりました。一時的に全スキルが利用不可です───
「え……食べたサイ?」
「ゐーっ!〈おほー! 結構キクな、コレ!〉」
「あの、グレンさん、『魔力酔い』に掛かるって言いましたよね?」
「ゐ〜!〈おう、聞いたぞ。コレ酸味が強すぎるが、最高だな!〉」
「いえ、スキル利用不可になるんですよ」
「ゐ〜っ!〈おう、それがまたイイな! これで俺も酔える!〉」
───『魔力酔い』から回復しました───
「ゐっ!〈え! もしかして普通に回復しちまったのか!〉」
「ほっ……グレンさん異常耐性も上がってるはずですもんね。良かったです……」
「ゐー……〈いや、これで俺もようやく酔えると思ったのに……〉」
体感一分くらいか。短い春だな……。
いや、もう一度、食べればいいのか。
俺はもう一度、同じことをする。
───【全属性耐性】成功───
「ちょ……グレンさん、何やってるんですか!?」
「ゐーっ!〈なにぃ、弾いただとぅ! くっ……ならば、もう一度!〉」
食べようと思ったら、レオナに止められてしまった。
「グ、レン、さんっ!」
「ゐーっ!〈お、おう。すまん。どうしても確かめたくてな〉」
「モンスターが出る状況で『魔力酔い』は致命的だサイ」
「ゐー……〈あ、そうか。そうだな……すまん……〉」
「もう、気をつけて下さいよ!」
改めてレオナに怒られて、俺たちは先に進む。
「ゐーっ!〈お、結構、生えてるな〉」
「面白いですね。ミカンにグレープフルーツ、いよかん、すだち、ゆず、ポンカン……全部同じ見た目で種類が違うんですね!」
シシャモが楽しそうだ。
シシャモに枝ごと撃ち落としてもらい、様々な種類の柑橘類を手に入れる。
まあ、ついでに魔女ミカンやら魔女ゆずなんかもインベントリへ入れるけどな。
「甘い! 爽やか! 良い香り! それに『魔力酔い』にならないですよ」
レオナがミカンを口に入れて叫ぶ。
「ゐーっ!〈そりゃ、ミカンだからな〉」
「なんですかね、この、甘いけどしつこくない感じ……」
ん? やけに味に敏感な反応するな。
少し気になったので俺はレオナに聞いてみる。
「ゐーっ?〈なあ、レオナ。もしかして感覚設定上げてないか?〉」
「ええ、今日は試しに80%でやってるんです」
「ゐーっ!〈おいおい、大丈夫なのか?〉」
「まあ、このフィールドなら滅多にダメージももらわないですから、ならしにちょうど良さそうなので」
ならし? 良く分からんが、本人が間違えてないならいいか。
「そろそろ次の島に行くサイ」
『二番島』に渡るには石造りの結構立派な橋を渡ればいいそうだ。
この橋というのが意外と厄介らしく、一つ目の橋は石造り。二つ目が木製でまあまあしっかりとした造り、三つ目は丸太とロープのアスレチック要素のある橋で、四つ目は水中に立てられた丸太を渡り、五つ目は鮫の橋? いわゆる日本神話の大国主命の神話に見立てたうさぎと和邇の橋らしい。数とか数えるんだろうか?
ただ、鮫の橋はみんな眺めてから戻る形で帰るらしい。
前に足を滑らせて落ちたやつが鮫に食われて、酷い目にあったとか聞いた。
そんな話をしていると、レオナが急に咳払い。
何故か怖い話をする時のテンションで話し始める。
「この静寂に漂う小島ではフィールドボスが出たことがないんですよ。
それで、噂では鮫の橋を渡りきって、鮫たちにお前たちは騙されたって言うと、フィールドボスが出るって言うんですけど……鮫の橋を渡りきれる人がいなくて、検証不可ってことになったんですよ。フカだけに……」
俺たちは全員黙っていた。
そんなオヤジギャグみたいなことも言うんだな……と、遠くを眺めて石造りの橋を渡り始めたのだった。




