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本日も連続投稿です。
レオナによる初心者講習は続く。
ロッカールームに続いて案内されたのは、『装備部』とプレートがついた部屋だった。
「普段の私はここに配属されているんです」
レオナの説明によると、ファンタジーRPGなんかで言うところの、武器屋、防具屋、道具屋であり、生産職が使う設備もここにあるらしい。
この『装備部』は学校を思い浮かべるとその構造が分かりやすい。
要は、三階建ての建物に教室が並んでいるようなものだ。
一階はレイド戦用武器・防具の貸与カウンター。
レイド戦用の武器・防具は貸与が基本らしい。
何故なら、魔石を全て失った戦闘員は一部デスペナルティが適用されるらしく、その一部というのが、武器・防具を高確率で落とすというものだからだ。
なので、レイド戦用武器・防具には自滅機能があるらしい。
敵に拾われたら、技術流出が起きるということだ。
そういえば、と自分のインベントリを開くと、最初にレオナから渡された『ショックバトン』が無い。
「落としたシザね。まあ、落とす前提の貸与だから問題ないシザ。
逆に持って帰って来られた時はラッキーで、返却金が貰えるシザ! 」
煮込みが教えてくれる。
『ショックバトン』の能力すら確認してなかったな……。
二階はNPC店舗。これはレギオン〈MMO系ゲームで言うギルドのことで、このゲーム『REEARTH_JUDGEMENT_VRMMORPG』内で使われる、同じグループに所属している者たちの意〉の発展度によって品揃えが変わるらしい。
ちなみに怪人側レギオンとヒーロー側レギオン、さらにシティエリアではお金の単位が違うらしい。
怪人側レギオン、俺が所属する側で使われるのが、マジカ。
ヒーロー側レギオンで使われるお金の単位は、プラネ。
シティエリアでは、ゴールドの単位が使われる。
1マジカ=100ゴールドらしい。
ただし、100ゴールドは1プラネに交換できる。
なら、怪人側とヒーロー側のお金の単位は同じでいいだろうと思うが、このゲーム、レギオン移籍ができるらしく、怪人側からヒーロー側に移籍したりすると、それまでに稼いだマジカは、価値がなくなるという話だった。
自分の所持金をゴールドに全て両替したりすると、移籍するつもりなんじゃないかとあらぬ疑いを持たれるので、要注意なんだと。
NPC店舗にいるNPCは基本的に球体関節人形だ。
受け答えは顔部分に文字が浮かぶ。
「HPポーションとMPポーションは最初は二階売りの物で充分だと思いますよ」
そうレオナが説明してくれる。
初期所持金は100マジカ。
HPポーションが1マジカ、MPポーションが3マジカで、一本で30点回復なので、各5本ずつ、20マジカ払う。
球体関節人形の顔に「まいど、ありがとうございます! 」と文字が流れた。
「NPCドールたちって面白いんですよ。全部、性格が違うんです! 」
「見た目も違うシザ! 」
「そうそう。今、グレンさんが買い物したのが『アカマル』ってみんなが呼んでるドールです」
アカマルと呼ばれた球体関節人形、ドールか。
そのドールが滑らかな動きで肩を見せてくる。
その肩には赤い丸印がついていた。
それから「どうぞ、ごひいきに! 」と顔に浮かんだ。
三階へと移動する。三階はプレイヤー店舗らしい。
店構えなんてものはなく、一階、二階と同じようなカウンターが並んでいるだけだ。
プレイヤーの生産職が持ち回りで店番をしていて、裏でアレコレと生産に勤しんでいるらしい。
生産職は白衣を着るものらしい。
「あ、レオナさん、納品ですか? 」
白衣に全身黒タイツな戦闘員がレオナに話し掛ける。
「今日の私は戦闘員人事部なんです」
にっこり笑って、そう返すと、カウンターの戦闘員はとろけた顔になって、えへえへと笑いながら、「そうなんですね…… 」と悶えていた。
目出し帽してても、分かるもんだな。
まあ、それはそれとして、煮込みとレオナの説明を聞く。
要約すれば、プレイヤーメイドの商品は高いが、それに見合うだけの独自性と品質があるという話だ。
ちなみにマジカと素材があれば、自分専用の装備なんかも作ってくれるらしい。
「では、次は食堂部にいきましょう! 」
今の時点で、俺に買えるものはないというか、レベル1なら防具なんかはまだ早いということで、次の場所へと案内されるのだった。