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 『りばりば』『ガイア』『マンジ』『シメシメ団』他のレギオンからも次々に援軍がやって来る。


 フィールドボス戦は、お互いに貢献度の取り合いの場でもあるが、それ以上に怪人世界を一致団結させる効果があるような気がする。


 普段はライバルのはずの他レギオンだが、フィールドボス戦はその脅威度の高さ故に協力しないと倒せない。


 俺は少し、いいなと思うのだ。


 楽しいと思える。


「そろそろ残り二万切るぞ! 全員、注意しろ! 」


 シメシメ団のやつが大声を張り上げる。


「おし、一気にいくぞ! 」


 マンジ・クロイツェルは相変わらず統率が高い。

 全員が同じようなマシンガン装備で一斉射撃する様は、味方として見ると惚れ惚れする。


「くかああああああっ! 」


 『鬼一法眼』はHPが2万を切った瞬間、持っていた羽扇を閉じて、真上に投げ上げる。

 羽扇は一瞬で数百枚の紙束になると、それが舞い落ちる。

 落ちた紙は勝手に丸まって形を作ったかと思うと、ひとつ目、四足の翼ある猫の姿になって飛び立つ。


「雑魚、湧いたぞ! 落とせ! 」


 さらに『鬼一法眼』はここで腰の刀を抜いた。


 【式神】と【刀攻撃】、予想が一度にふたつとも、現実になった。


 そして、【八艘飛び】。


 式神の翼猫が辺りを飛び回り、ランダムで誰かが狙われる。

 それは、誰かに当たると爆発するのだ。


 羽扇がなくなり、フィールド︰強風が消えて、遠距離攻撃を中心にしているやつらが、ようやく『鬼一法眼』に集中できると思ったのも束の間、今度は式神落としに追われる。


 俺も慌てて『ベータスター』に通常弾を入れて、撃ちまくる。


「なるべく近接組の近くのやつから落としてくれ! 」


 レオナとサクヤが寄って来て、お互いの死角をカバーするように背中合わせに攻撃する。


 式神の一体はそれほど硬くはない。

 俺でも五、六発当てれば倒せる程度だ。


 フルオート射撃で翼猫を追いかけ、弾丸補充。

 MPポーションを消費し始める。


 さすがにフィールドボス戦は長い。だが、ここが踏ん張りどころだ。


「いやー、さすがにスキルじゃ効率悪いですねー」


 サクヤはそう言ってインベントリから火縄銃を取り出した。

 MP効率も大事だが、時間効率悪すぎねえか? 

 しかし、それは俺の杞憂に過ぎず、見た目は火縄銃だが、中身はボルトアクションのライフルだった。


 雰囲気出すためか知らんが、火縄振り回して、火を絶やさないようにするのに意味はないだろ。

 そう思っていたが、どうもその火縄がボルトアクションするらしい。


「古巣時代の武器ですが、性能は折り紙付きですのでー」


 技術の無駄遣いな武器だな。


 俺たちは延々と式神を落としていく。


「ゐーっ! 〈だいぶ減ったか? 〉」


「煮込みさんとムックさんは大丈夫でしょうか? 」


 レオナに言われて二人を視線で探す。

 二人はすぐに見つかった。

 他の近接攻撃組に混じって、ちまちまやっているらしい。


 しかし、四段階目に入った『鬼一法眼』はえげつないな。

 ヘイト管理をしていたガイアの騎士鎧と征服委員会は既にリタイア。

 まともにヘイトを取れる攻撃力と防御力を持っているのが蛍光緑の全身タイツだけだ。

 そいつを生かすために、無理やりヘイトを取って死んでいく戦闘員がたくさんいる。

 それは初期から参加していたやつらでタイツの色がそれぞれ全然違う。

 レギオンは違うが、全員の意志が統一されているような一体感がある。


 また一人、マンジの戦闘員が散った。


 『鬼一法眼』は刀を使う。それも、ちゃんと戦う。ボス戦らしく強引な一撃で倒すというより、ヘイトを取った相手にはキッチリと技で殺しに行く。

 フェイントを使い、刀で攻撃をいなし、首や関節を狙う。

 ただ、そのおかげで助かっているやつもいる。


 『りばりば』の知らない戦闘員は大斧の攻撃でヘイトを取ったが、『鬼一法眼』の返す刀で肘から先を飛ばされた。

 部位破損扱いで、ダメージが途中で止まるらしい。

 ただ、命が残っても片腕が無くなってしまって大斧はもう振るえない。

 実質、リタイアだ。


 HPポーションを頭から被った蛍光緑の全身タイツ、『ウィンタープレゼント』だったか。

 そいつが【八艘飛び】終わりの『鬼一法眼』に仕掛けて、ヘイトを取る。

 得物は青龍偃月刀だ。マニアックだな。


「来いやーっ! 」


 蛍光緑の全身タイツに向かう『鬼一法眼』に他の近接攻撃組が背後から、ちまちまと攻撃する。

 ヒットアンドウェイでなるべく素早く逃げるのが基本らしい。

 ちまちま攻撃には『鬼一法眼』は対応せず、まずはヘイト持ちの蛍光緑の全身タイツだ。


 刀が振るわれる。無造作な一撃。

 青龍偃月刀がそれを弾く。だが、重い武器なのか、身体が少し泳ぐ。そこに狙いすました一撃が振ってくる。蛍光緑の全身タイツは流れに乗って、わざと踏み込み、身体の正面で斬撃を受けて、ぶっ飛ぶ。

 一撃入れると『鬼一法眼』は満足したのか、辺りを見渡し【八艘飛び】を始める。


 ランダムで戦闘員たちが散っていく。


 マンジの援軍は動きが決まっているかのようにマシンガンの弾をばら撒く。

 一撃はそれほど重くないので、ヘイトは取らず、だがそれなりの成果を上げる。


 効率良いな、と思っていたが、弱点が露呈する。

 【八艘飛び】の跳んだ先がマンジ援軍の中心だったのだ。

 【八艘飛び】の攻撃は力押しのボスらしい攻撃だ。

 一人の首が飛ぶ。

 慌てたマンジ援軍は規律を失い、陣形が簡単に崩れた。

 ある者はマシンガンを乱射し、ある者は逃げ出す。強力なスキルで対抗して、次のヘイトを取ってしまうやつもいる。

 フレンドリーファイア無しだからいいが、これがアリだったら、俺の額を通り抜けていった弾で俺は死んでるな。


 『鬼一法眼』の【八艘飛び】は八回跳ぶまで終わらない。だが、ヘイトを取ってしまったのなら別の話だ。憎々しげにヘイトを取ったマンジの戦闘員の元へ一直線だ。


 本来、ヘイトを取っていた蛍光緑の全身タイツは、ヘイトを取り返しに移動を開始する。

 他の近接組も蛍光緑の全身タイツに続くしかない。


 ヘイトを取ったやつがあまり動かなければ、近接攻撃組は少ない労力で『鬼一法眼』の後ろを取れる。つまり、効率良くダメージが与えられる。

 だが、ヘイトが離れてしまったので、もう一度隊列を組み直す必要があるのだ。


 状況にもよるんだろうが、今のはマンジの悪手だ。


「おい、顔だ! 顔が弱点じゃないか? 」


 ヘイト持ちの周りにいたやつが声を上げる。


「ほんとだ! 顔が削れて赤く肉が見えてるぞ! 」


「ゐーっ! ゐーっ! 〈違う! 肩だよ! 肩! 〉」


 俺の声は彼らには遠く届かない。

 届いたところで【言語】スキルがないんだけどな。


「顔を撃て! 」


 十字砲火どころか、四方八方砲火とでも言うかのように全方位から銃弾が飛ぶ。

 蛍光緑の全身タイツは混乱ぶりに『鬼一法眼』に近づけない。


 『鬼一法眼』が刀を持ち上げる。

 その刀にはヘイト持ちのマンジ戦闘員がハヤニエのように刺さっている。

 『鬼一法眼』は刀の血糊を飛ばすようにマンジ戦闘員を飛ばした。

 地面に落ちたマンジ戦闘員は砕け散った。


 『鬼一法眼』の顔はカラス顔から覗く赤で凄い形相をしている。


 『鬼一法眼』が自分の顔に手を掛ける。

 べりべり、と皮が剥がれるような音がして、真っ赤な天狗が現れた。

 赤ら顔の鼻が長い天狗。手にはボロボロのカラス顔。


「カカッ! ミゴトナリッ! 」


 喋りやがった。


「見ろ! 勝手にHPが減ってるぞ! 」


 一万四千あったHPが九千九百九十九になった。



ここまでに出てきた怪人レギオンまとめ。


『リヴァース・リバース』〈最大規模〉

 黒い目出し帽に黒の全身タイツ。ベルトのバックルにRE


『ガイア帝国』〈大規模〉

 白い全身タイツに法衣。


『シメシメ団』〈大規模〉

 青い法被にねじり鉢巻、黄色の全身タイツ。胸に〆のマーク


『マンジクロイツェル』〈大規模〉

 赤い全身タイツにドイツ軍っぽい制服


『世界征服委員会』〈中規模〉

 黒いフルフェイスヘルメットにグリーングレーの作業着。


『ウィンタープレゼント』〈中規模〉

 蛍光緑の全身タイツに赤い仮面。


『ブラッククロニクル』〈消滅〉

 桃色の全身タイツに黒地に金の刺繍が入った陣羽織。


 抜けがあるかないか分からない。あったら、ごめんね。

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