忘れられた323〈side︰オオミ〉
頭の痛い話だ。
科学文明と魔法文明、ふたつの文明の生き残りを賭けたゲームのはずが、『ガイガイネン』という存在によってかき乱されている。
奴らは何だ?
このゲームの運営が用意したとは思えない。
運営はこのゲームに関しては、フェアにやってきた。
それなのに、『ガイガイネン』はプレイヤーとは一線を画す力を持っている。
過去のアーカイブを漁って、現実での『ガイガイネン』らしき存在は確認できた。
ニュースによれば、海中で網に掛かった、突然変異の甲殻類ではないかと言われていた。
大学の研究室に運ばれたとなっていたが、しばらくして、その大学の研究室は猟奇殺人事件で有名になっていた。
もしや、『ガイガイネン』の仕業かと疑うものの、一般のニュースではその辺りのことは分からなかった。
いちおう、報道関係者を装って調べてみたが、『ガイガイネン』らしき突然変異の甲殻類は別の大学に移されたらしい。
それならばと、更に追跡調査を続けるものの、別の大学から更に移されたと聞き、その先の情報が入らなくなった。
確度の低い情報を俺の『サードアイ』のホームページに載せる訳にはいかない。
正直、手詰まりだった。
世間的に大きなニュースになっていないということは、俺の予想が外れたということだろうか。
『リアじゅー』プレイヤーとしては、ベータ時代からの最古参組になる俺は、ある時、現実と『リアじゅー』というゲームの関わりに着目して、ひたすらソレを追った。
そして、自分なりの考察を踏まえて、『サードアイ』の名前でサイトを立ち上げた。
始めは興味本位だった。
だが、次第に怖くなった。
科学文明が大きな勝利を収める度に、新しい技術が現実に浸透していき、誰もが闇を恐れなくなっていく。
進んだ時は戻すことができず、魔法文明が大きな勝利を収めた時、魔法が現実となっていく。
これはどういうことなのだろうか。
俺に分かるのは、このまま魔法文明が消滅まで行ってしまった時、現代の科学文明は上限を突破して、世界はディストピアになるだろうということだ。
海洋汚染は進み、食料生産力は十分の一以下になり、何もかもが代替品になって、それは今の肉体の一部に科学的デバイスを埋め込むのではなく、科学的ハードウェアに人間をソフトウェアとして埋め込むような時代が来る。
そして、世界は『1』か『0』かだけで進むようになるだろう。
時代の流れを止められないのなら、せめて絶望だけではない未来が欲しい。
普段はあまり饒舌になれない俺も、『サードアイ』としてなら熱弁を振るえる。
第三の道が欲しい。
そう思いながら、俺は今日も文章を綴るのだ。
いつか、誰かの目に止まって、俺と同じように世界を憂える者が現れるその日まで……。
おまけのおまけのお化け。
数字ズレてんなーと気づいていたあなた!
すごーい!
作者は数字がズレて二十話以上進んでから気づきました。(´・ω・`)
これにて本当に終幕となります。
ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました!
ということで、お約束していた新作のご案内です。
『最近、街にプレイヤーという人が来ます。』
https://ncode.syosetu.com/n2709he/
訪れた旅人に街の名前を教えてくれるNPCが主人公の物語。
魔法が世界の中心となり、科学は今、潰えようとしている時、新たなるゲームがはじまろうとしていた!
おや? どっかで聞いたような……。
ifなのか、それとも有り得るべき未来か。
そんな関わりがありそうでないお話です。
何卒、よろしくお願いしますm(_ _)m




