444〈十年後〉
本日、三話投稿の二本目になります。
まだの方は一本目からどうぞ。
あれから激動の時代は幕を開けた。
世界は次第に増えていく超能力者に混乱し、やがてそれが日常へと変化していく。
ある地域では超能力者は迫害され、また別の地域では超能力者たちだけの国が生まれた。
僕たちは歴史の表舞台に立たざるを得なくなった。
「代表、お時間です」
アパさんが僕を呼びに来た。
僕は立ち上がる。
すると、どこからか声がする。
「問題が起きそうなら、私たちが動く……」
「大丈夫だよ、山田さん。今更、誰にもこの流れは止められない。『黒』の出番はないよ」
僕は声に返すと、その場を後にして壇上へと向かった。
人が集まっている。
小さく咳払いをすると、その音を拾ったマイクが辺りに静寂を求めた。
皆が僕の声を待っていた。
「お集まりの皆さん、そして、この配信を見ている皆さん。
超能力者保護団体『新しい画布』代表の響 真也です。
本日は超能力基準法の提案をしに参りました。
超能力は誰にでも発現し得る、新しい文化だとも言えます。
今までの現行法では対処しきれない問題があるのは、この言葉を聞く全ての皆さんが感じていることと思います……」
『グレイキャンパス』は『白』と『黒』に別れて、表と裏からこの世界の構造にメスを入れることになった。
巨大資本を背景にした非営利団体として発足した『白』は、いずれ政界へと進出、古びた考えを駆逐していくだろう。
そんな僕たちを影から護る『黒』。
既に世界の一割は潜在的な超能力者だ。
これから次々に現れる超能力者が、平和に生きられる世の中を作る。
それが僕たちの役割になったのだった。




