表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
425/447

425


 ぞわぞわと背中に嫌なモノが走る。

 『マギシルバー』と相対するといつもそうだ。

 俺は【野生の勘(ウルフ・センス)】の赤いラインがいつ走るかと、目を皿のようにして周囲に視線を送る。


「正義の刃にひれ伏せ!

 俺が正義だ!」


 『マギシルバー』の踏み込みと同時に、赤いラインが見える。

 いや、匂った。

 見えるというより、それは匂いとして俺に感じられた。


「ゐーっ!〈【緊急回避(ウルフステップ)】!〉」


 その感覚に合わせて、俺は瞬間移動で跳んだ。

 ちゃんと見ていたら間に合わなかっただろう。


 また、匂う。

 この感覚に身を任せるように【逃げ足(ステップバック)】を使い、大きく距離を取る。


「その動き……覚えがある……」


「ゐー……〈だろうよ……俺もお前のことは良く知っている……〉」


 『マギシルバー』が嫌な記憶を振り払うかのように頭を振る。

 俺だって嫌だ。お前の攻撃はトラウマ級で記憶に残っている。

 ただ……それでも……お前の曲げられてしまった意志に憐れみは感じる。


「俺の嫌いなやつにそっくりだ……【退魔の矢(シルバーバレット)】」


「ゐーっ!〈見えてるぞ。【ウサギ跳び(ラビジャンプ)】!〉」


 敵の銀光の奔流を避けて、ライフル弾を浴びせる。

 圧倒的に火力不足だ。

 衝撃で仰け反らせるので精一杯だ。


 だが、星一スキルのウェイトタイムくらいは稼げる。


 また匂う。

 戦車から赤いラインが伸びている。


 くそ、逃げろ!


 【正拳頭突き(ラビロケット)】で着弾地点から逃げる。


「逃がすかっ! 肩パッドめ!」


 『マギシルバー』の言葉は、俺を肩パッドだと認識して発せられたものではないだろう。

 どこか夢見心地のように発せられた言葉は、俺ではなく『リアじゅー』の肩パッドを見ているようだ。


 『マギシルバー』が追って来る。


 さすがにここで死んでやれるほど俺の命は軽くない。

 死ねば、二十四時間、現実では復活がない。

 そして、また捕まることになるのは、ゴメンだ。


「グレンさん、こっち!

 【気力刃(オーラブレード)】、【三枚おろし】」


 壁に隠れた、まりもっこりに呼ばれ、彼女はナイフに纏わせた『気力刃(オーラブレード)』を三角形にして飛ばす。


「ちっ! ぬぐぅっ!」


 『マギシルバー』の左肩から先が消し飛ぶ。


「ふん、こっちだって特訓を重ねて来ているんだ、甘くみるんじゃないよ!」


「こんの……程度でえぇぇぇっ!」


 『マギシルバー』の『退魔の剣(シルバーソード)』が炎の照り返しで、ぬらりと光る。


 俺への攻撃ではないため、【野生の勘(ウルフセンス)】が働かない。

 ただ、ヤバいことは分かる。


 『マギシルバー』の繰り出す剣が、まりもっこりへと向かう。

 まりもっこりは、ギリギリで『気力刃(オーラブレード)』を持ち上げることに成功し、『マギシルバー』の剣を受け止めた。


「だから、伊達に特訓してきたわけじゃないって!」


 まりもっこりと『マギシルバー』の鍔迫り合いが起こる、かと思った途端に『マギシルバー』の足が出た。

 蹴られた、まりもっこりは後退しつつ、たたらを踏む。


「雑魚が!」


 銀光一閃。まりもっこりが倒れた。

 一瞬の攻防で、口出しすらする暇がなかった。

 まりもっこりの横腹から赤いモノが染みた。


「まりもっこり!」


 咄嗟に【雷瞬(ラビリニア)】で体当たりを入れる。

 『マギシルバー』の体勢が崩れた所へ、【回し蹴り(ベスト・キッド)】で蹴り飛ばす。


 距離が離れたと思うやいなや、俺は後ろを向いて逃げ出した。


 ヒーローをやっているヤツらは、本能的に一撃入れれば、戦闘員が消し飛ぶと思っている。

 まあ、間違いではないが、現実で(コア)は使えない。


 俺が逃げれば、『マギシルバー』はまりもっこりにトドメを刺そうとは思わないだろう。

 わざとアサルトライフルで注意を引きながら、俺は走るのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ