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 浮遊都市『ユミル』には何度か行ったが、『エデン』は初めてだ。

 『リアじゅー』では、新新エリアとして何度か仲間たちと、時には一人で見て回ったし、『ユミル』の時と同様に、集められるだけの情報を集めて頭に叩き込んであるが、実際に行くとなると、やはり違うものだ。


 最近の技術的発達はめざましく、着工したとニュースで見たのは、ついこの間にも関わらず、既に八割方完成している『エデン』に脅威すら感じる。


 まだ『原生区』、現・東京に掛かる橋は建設途中でこれは使えないが、橋が掛かれば俺たちの知る新新エリアだと、分かるやつには分かるようになるかもしれない。


 夜、闇に紛れるようにグライダーの集団が、東京のランドマーク各所から飛び立った。

 高度なステルス性能、空を覆い隠しているのに誰もそのことを気に止めることはない。

 これも、Bグループが『リアじゅー』から拾い上げた技術でできている。


 百近い数のグライダーが浮遊都市『エデン』に向けて降下していく。

 ここまでは良かった。


 上手く風に乗って、『研究区』近くまで飛んだやつらは、『遺伝子組み換え人間デザイナーズチャイルド』に匂いで感知されてしまった。


 『エネルギー区』までしか飛べなかった俺は、そこから走った。

 『研究区』では既に戦闘が始まっていた。


 正直、作戦という作戦はなかった。

 強いて言うなら、外国のスパイグループにどぶマウスの情報網を使って、情報を流したくらいだろうか。

 上手く行けば、敵を混乱させられるかもしれないが、静観を決め込まれてしまうと、何の意味もない作戦だ。


 ただ、どぶマウスは情報を上手く操って、スパイグループが強襲作戦に出るよう仕向けたと胸を張っていた。


 その関係で、俺たちは船も空中ドローンも使えなかったという話もある。


 『研究区』のBグループが使っている建物は特定できていたし、そこが厳重な警備に固められているのも判別している。

 作戦とも呼べない運任せの作戦が上手く動いていれば、多少は警備も薄くなっているはずだ。


 この戦闘音は外国スパイグループか、それとも味方の超能力者か、どっちだろうか。

 まあ、俺たちが飛んで来たことによって、起こった戦闘なのは間違いない。


 必死に『研究区』を目指して走る。

 背中の荷物は三十キロ以上の重さがあるが、超能力に目覚めた俺たちにとっては、軽いものだ。

 何しろ『リアじゅー』の能力値が適用されている。

 俺のへぼへぼな能力値でも、一般人と比べれば数倍以上の力がある。


 本物のアサルトライフルには大仰なサイレンサーが付いていて、音は抑え目だが、当たれば人を殺せる。

 今まで非殺傷武器を使っていた俺たちだが、今回は違う。

 悪の組織として、悪に手を染める覚悟がある。

 百年後のオーバーテクノロジーを現代に持ち込むことで科学文明の台頭を推し進めるBグループの所業は、今の時代を科学的ディストピアにして、『リアじゅー』世界へと向かわせるのに充分な力を持ちつつある。

 今のままでは、止められないところまで行ってしまう。

 戦う理由はそれだけで充分だ。


 『エネルギー区』の出口、『研究区』の入口に鼻を鳴らして警戒するドーベルマン種のワードッグがいる。

 こちらが風下のため、バレていないが、それも時間の問題だろう。


 俺は、他の戦闘員たちと視線を合わせて、アサルトライフルを構えた。

 くぐもった音が断続的に流れる。

 ワードッグたちもアサルトライフルを用意していたが、それを放つことなく散っていった。


 既に『研究区』ではそこかしこで戦闘が起こっている。

 それは次第に拡大していき、爆発音が混じる。

 街が目覚めたかのようにあちこちで照明が焚かれ、闇が消えていく。


「アオーンッ!」「グアァァァッ!」「ガルルルルッ!」


 まるで『原生区』だ。

 凶暴化した『遺伝子組み換え人間デザイナーズチャイルド』が徘徊し、銃撃と爆発に埋め尽くされていく。


 正直、甘く見ていたかもしれない。

 これはもう、戦争なのだった。



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