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 『マギクラウン』の規模から言って、奥には首領の住む城的なものと、NPCの城下町、さらに専用フィールドが広がっているのは予想できる。

 せめて、専用フィールドを発見するまでは、怪人変身を我慢しなくてはならない。


 そして、残念ながら、そこまで一度もデスしないで行けるほど甘くないのは、俺でも分かる。


 案の定というべきか、何度か迷彩ヒーローに捕まって死んだ。

 俺の場合、リスポン位置が大首領たんの玉座の間になっているので、死んでから元の位置に戻るまで時間が掛かるのが問題だ。


 戦いは刻刻と変化していて、俺が戻ると白部隊の姿が『大部屋』から消えていた。

 右の通路を目指していたはず。

 俺は右の通路までを駆け抜けていく。

 途中、青部隊の会話が聞こえる。


「なるべくリスポン位置覚えろ!」「そうだ! 正々堂々やってる余裕はないぞ! 変身前を叩け!」「リスポン狩りじゃー!」


 恐怖を紛らわすためだろう。

 誰もが叫び、雄叫びを上げ、狂乱したように武器を振るっていた。

 『大部屋』での大勢は決したが、まだ局所的に組織立った抵抗を見せる『マギクラウン』戦闘員がいて油断はできない。


「HQ、HQ、こちらチャーリー、チームアルファ、チームブラボー、沈黙。応援を要請する!」


───五分保たせろ、そこで堪えろ───


「保たせられるなら、やってる!

 リスポン狩りでアルファは動けない!」


───NPCドールを投入する───


 専用の無線機でやりとりをしている。

 大時代的だが、繋ぐ場所が限定的なら思念入力のチャット機能より早い場合もある。


 相手が勢いを取り戻す前に早く進まないとな。


 そう考えて、どうにか敵の間を抜けようとするが、許されないらしい。


「おい、あれ、肩パッドじゃないか?」「くそ、アイツは自由にさせるな!」「おい、持ち場を離れるな!」「あんたら新規は知らないだろ! アイツはジャイアントキリングの常習犯だ!」「大局を見ろ! 点の防御より、線の防御を意識しろ!」「上官命令だ!」


 数発の攻撃が来たものの、結果的に許された。

 たぶん、古参連中は元々、趣味で『リアじゅー』をやっていた奴らで、Bグループの都合で集められた奴らなのだろう。

  そして、新規組はBグループの部隊員というところか。


 望まれているようだから、ジャイアントキリングを狙わせてもらおう。


 俺はどうにか白部隊に合流した。


 ここは装備部か?

 だが、NPCドールしかいないようで、はっきり言って包囲され、殲滅を待つばかりとなっている。

 本命じゃないのは分かっているが、相手のアイテム系リソースは削りたい。

 NPCドールは必死に防御陣を敷いて、抵抗しているが時間の問題だ。


「くそ、ホントにここ潰す意味なんてあるのかよ!」「意味なんか知るか! 抵抗される以上、戦うしかないんだ!」「殺さなきゃ殺される。それがこのイベントなんだよ!」


 葛藤があるのは分かる。特に新規組は覚悟が決まらないのだろう。

 今回のラグナロクイベントは、俺たちが攻める側だ。

 攻めようが守ろうが、始まってしまえば、やるしかないのだが、攻めているという心の余裕が余計に葛藤を生んでいるのかもしれない。


 俺は合流と同時にNPCドールたちの中に【雷瞬(ラビリニア)】を使って飛び込んだ。


 言葉はいらない。葛藤もいらない。例え相手がNPCドールだろうと、俺は躊躇しない。

 その魂を傷付け、下手をすれば消滅してしまうのだとしても、これは生存競争だ。

 『マギクラウン』というレギオンを選んだのは、その魂なのだ。

 『リバース・リヴァース』のために消えろ。


 『ショックバトン改』を振るい、スキルを使って、砕く!

 命ごと、魂ごと、砕く! 砕く! 砕く!


「肩パッドに続けー!」「アイツ一人にやらせるな!」「時間を無駄にするな!」


 俺の行動を契機に、古参組が動き、引きずられるように新規組も動き出した。

 数値に表れていないが、疲労が溜まっているのが分かる。


 それを、ひとつ大きく息を吐き出して、振り払うと、俺たちは装備部から伸びる通路へと入っていくのだった。



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