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398〈爆破痕〉


 都内各地で謎の爆破痕事故多発。

 朝一番に見たニュースはそんなモノだった。

 芸能人の結婚も、季節の時事ネタも、一瞬でどこかへ、ぶっ飛んでいた。

 謎の爆破痕事故はたくさんの犠牲者を生んだ。

 しかも、政界や財界の大物と呼ばれる人物が多数含まれていて、これが話題の中心となった。


 謎の爆発は現代科学では解明不可能な爆発であり、一部では『スターレジェンズ』残党の仕業ではないかとの見解が強まっていた。


───謎の爆破痕事故は、番組では事件ではないかという見方を強めています。

 突如として爆発音もなく、広がる惨状は悪夢のようであり、気づけばそこに爆破痕が残っているという奇妙な状況。

 これは解明不可能ゆえに、事故と表現されていますが、数百人規模の被害者が出ていることから、事件としか考えられません。

 番組ではその謎に迫っていきたいと考えています───


 ニュースキャスターが状況を説明していく。

 都内数ケ所にて、音もなく、はたと気づけばそこに爆破痕がある。

 それは建物などが傷ついている訳ではなく、ただその場にいた何人、何十人が爆発した痕跡が突如現れるというものだった。

 現場で助かっている人たちは何ひとつ覚えていない状態で、ほんの少し意識から外れていた人物が直後に爆破痕になっているというものだった。

 白昼夢の惨劇。誰も何も理解できないまま、例えば近親者が、例えば同僚が爆破痕になっているのだ。

 助かった人は知らぬ間に血を被っていた訳ではなく、どちらかと言うと、自分たちが除外された状態で被害者が爆発、その後、自分たちが戻されたような状況だったらしい。


 これを受けて番組での見解が提示される。

 話題は『スターレジェンズ』残党についてだ。


───超能力による犯罪となると実証がかなり難しいですよね。

 また『スターレジェンズ』は超能力テロ集団という触れ込みでしたが、軍の対処によって、そのほとんどが逮捕、または事故死を迎えています。

 これらの事実は、軍が超能力を認めているということになるかと思うんですが……───


 ニュースキャスターが問題提議をしている。

 それに答えるのは軍事アナリストだ。


───あくまでも、軍の見解としては『超能力という隠れ蓑を使った所属不明のテロ集団、又は殺人集団』というもので、『スターレジェンズ』の超能力というものには否定的立場です。

 実際、現場からは自作したと見られる武器が数々、押収されており、これらの武器によって今までの事件は起こされていたという発表もされております───


───それは、超能力の実証ができない状態で、法改正を待っていられなかった軍の暴走なのでは、と見る向きもあったようですが?───


───いえ、例えばですよ。例えば超能力があったとして、拳銃弾一発で人は充分に殺傷し得る訳ですよ。昨今のメディアで超能力的なものが取り沙汰される風潮は理解していますが、どれも殺傷力があるとは思えませんね。

 折り鶴が風のない部屋で浮かせられると、人を殺傷できますか?

 それとも、占いで人を殺すんですか?

 まともなテロ集団なら、世界の闇市にでも行って、拳銃を密輸する方法を考えますよ───


 すると超能力研究家が反論する。


───ですが、拳銃を密輸するのは犯罪ですよね。それを鍛え上げた超能力で成せば、現行法では裁けない。

 その超能力者を秘密裏に確保して、政府やその他の権力組織が『スターレジェンズ』の声明通り、秘密の実験などに使っていたら、当然、他の超能力たちから反発が生まれますよね───


───それは超能力があるという仮定の元の話ですよね?───


───あなただって、昨今の超能力が取り沙汰される世間の風は理解していると仰ってたじゃないか!───


───例えばだと、お断りしてのお話ですよ。

 それに本当に超能力があるかどうかも怪しいもんです───


───ありますよ! なんで今さらそこから話さなきゃいけないんですかね?───


───いえね。本当にあるものなら、なんで法整備が進まないのかと、そこが聞きたい訳ですよ。

 あるものなら進むでしょ、法整備───


───それは超能力に個人差があって、再現性が乏しいからであって、その超能力だって種類が色々とあるんですよ。

 現に今回の事件だって、現代科学では解明不可能だからこそ超能力者たちの仕業ではないかと言われて……───


───そこですよ。解明不可能な犯罪だから超能力だと結びつけるのは無理があるんじゃないかと思う訳です。

 思考が短絡的すぎませんか?

 願望を全て超能力に結びつけたんじゃ、郵便ポストが赤いのも、太陽が東から昇るのも超能力のせいということになりそうだ。

 私はそこに警鐘を鳴らしたいんです───


 話は軍事アナリストの『超能力否定』が有力な方向で進められている。

 だが、軍事アナリストの話しぶりが、煽りのように感じられて、視聴者は逆に『超能力肯定説』に流れる感じがする。

 報道内で超能力を攻撃的に否定することで、視聴者は超能力であって欲しい、と思うように誘導されている感じがする。


 これが感じた通りの計算された話術なのだとすれば、『スターレジェンズ』の残党説が有力だと世間は見るだろう。

 たしかに、俺たちが保護しきれなかった『スターレジェンズ』残党はいるが、彼らはそういう過激な方向に進むものだろうか?

 恐らくは、軍の追っ手がかかっている以上、逃げ回るのが精一杯な気がする。


 今回のニュースで亡くなった政財界の大物とはどんな人物だったのだろう。

 調べてみるが、これが超能力を否定している人物だった訳ではない。

 特に共通点もなく、正直、さっぱりだ。

 もしかして、表面的ではない理由で狙われたりしたのだろうか?


 白せんべいなら、その辺りまで深く調べられるのだろうが、俺には無理だな。


 会長かどぶマウスに聞いてみたら分かるだろうか。

 俺は二人と連絡を取った。


 すると、全貌が見えてきた。


 財界の大物というのは、いわゆる裏で死の商人をやっている腹黒い人物で、軍への影響力が強いだとか、浮遊都市計画に異を唱える人物が殺されていた。

 政界の大物は、軍縮を叫んだ人物と他人を蹴落とす天才と呼ばれる人物が亡くなっていた。

 現行政府からしたら、目の上のたんこぶ扱いされている人たちだ。


「これは、アレだね。Bグループの静かなるクーデターかもしれない……」


 会長は言った。


「政治的には、現行政府の歯止め役の中心人物がいなくなったでっす!」


 簡単に言えば、軍の発言力が増す結果になるだろうということだった。


 『リアじゅー』内で現実への影響を抑えたら、現実で無理やりそれを進められたような形らしい。


「SIZUの努力が水泡に帰す形になったでっす……」


「なんとなく、彼らも気づいてしまったかもかもね……『リアじゅー』と現実の繋がりは、分かってしまえば、肌で感じるレベルだしにゃ〜……」


 そういうこともありそうだ。


「どうする?」


「みんなを集めて、今後の行動を考えるべきかにゃー」


「それがいいと思うでっす!」


 俺たちは話し合いの場を持つことにするのだった。



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