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遅くなりましたm(_ _)m


 今日は自動車〈自動運転車だが、道路がガレキで埋まっているので、手動〉の修理が終わる。

 もちろん、『リアじゅー』内のネオ人集落での話だ。

 これで廃材集めが捗る。

 『ネオ人』に寝るという習慣は本来ないらしいが、人間のフリをするなら寝るという行為は必須事項だ。

 では、『べねむ』の寝るという行為は何かというと、どうやらスキルの力らしい。

 なのでベッドを作ろうと思っている。

 『べねむ』以外にも、形だけでも寝るという行為を覚えさせたい。


「ゐーんぐっ!〈よし、ちょっと廃材集めに行ってくる!〉」


「それなら、力があるやつが必要だろう。俺も行こう」


 そう言ったのはオオミだ。


「俺も行くー! しえみ、あまろ、行こうぜ!」


 ヤンチャ坊主の『えくさ』がそう言って、トラックの荷台に乗る。


「ゐーんぐっ?〈えーと、いいのか?〉」


「まあ、たまには息抜きも必要だろう」


 そう言って、『しえみ』と『あまろ』を助手席に乗せ、オオミは『えくさ』と荷台に乗った。


 ゴトゴト、と車が前後左右に揺れながらも前に進む。

 『ガレキ場』の中でも、すでに片付けられてガレキの山になっている辺りだと、良い廃材は手に入らない。

 良い廃材は、片付け前で大きな建物の影になっている場所なんかに残っていやすい。

 そういう所だと、少しの手入れで使える物なんかも残っていやすいしな。


 俺は目的の辺りで車を停める。


「ゐーんぐっ!〈目的はベッド用の木材だ。何度かに分けて運ぶからな。オオミくらいの長さがある木材をこの辺に集めてくれ〉」


「「「はーい!」」」


 言ってしまえば、この中で一番、力がないのは俺だ。

 俺はお気に入りの大工道具を取り出して、廃材の釘を抜いたり、割れ目を綺麗に加工したりしていく。


「グレンさん、持ってきた!」


 『えくさ』が一番乗りだ。


「ゐーんぐっ!〈違う! それは電柱だ! 俺が欲しいのは木材だ!〉」


「はい、グレンさん」


「ゐーんぐっ!〈偉いぞ、しえみ。次はもう少し長いのを持ってきてくれ〉」


「グレンさん、これだろ!」


「ゐーんぐっ!?〈えくさ、それは信号機だ!

 どう間違えたら、そうなる?〉」


「これは正解?」


「ゐーんぐっ!〈おう、それだ! あまろ、正解だ!〉」


「グレンさん、長いのあった!」


「ゐーんぐっ!〈それは鉄骨だ! 俺の力で加工できねえよっ!〉」


 『えくさ』は木材が何か分かっていない。


「はい、グレンさん」


「ゐーんぐっ!〈しえみ、もっと長いやつだ。手のひらサイズの木ぎれじゃどうにもできん!〉」


 『しえみ』は長さが分かっていない。

 別に三人の弱点探しに来ているわけじゃないんだがな。


「えーと、ここかな?」


 『あまろ』が座標爆破で残っていた家屋をぶっ飛ばした。


「ゐーんぐっ!〈あまろ! 座標爆破は使うな!〉」


 俺は慌てて、『あまろ』を止めに行く。

 そうか、『あまろ』は常識が弱いのか……。

 そんなことを考えると、離れたところで声が聞こえた。


「貴様ら、何者だ!」


「え、人間だけど……?」


「車の残骸を持ち上げるんだ、NPCってことはないよな? どこの所属だ!」


「まだ、言ったらダメなやつだから、ダメだ」


 この声は『えくさ』か。


「ゐーんぐっ!〈あまろ、車に戻ってろ……〉」


「はい」


 俺がここにいるのは、五人の護衛という意味もある。

 ガレキの山に隠れながら、素早く声のする方へ近づいていく。

 オオミも走っている姿が見えた。


「怪しいやつだ。拘束しよう」


 ようやく状況が見える場所まで来た。


 どうやら『えくさ』が四人組の男と対峙している。

 服装は山登りでもしそうな格好だが、言動からしてプレイヤー、しかも、ヒーロー側か。


 ガラリ、と音がして男たちがそちらを見ると『しえみ』がいた。


「もう一人いるぞ」「動くな! 動けば撃つ!」


「あ……」


「何をしている!」


 オオミが声を掛ける。


「さらに一人、撃て!」


 登山家たちはいきなり拳銃を抜いて発砲した。


 一点ダメージが『えくさ』と『しえみ』を襲う。


 コノヤロウ!


 俺は走って、手近な『えくさ』を抱えると、『しえみ』のところまで行って、二人の盾になる。


「ゐーんぐっ!〈痛え! くそがっ!〉」


「グレン、二人を連れて逃げろ!」


 オオミが登山家たちに殴り掛かった。


「グレンさん、大丈夫?」


「ゐーんぐっ!〈……いいから、お前らは車まで逃げろ! 俺も後から行く……〉」


「えいっ!」


 そんな掛け声と共に、登山家の一人が爆散した。


「なっ……」「座標爆破……」「ガイガイネンか!」


 そちらを見れば、『あまろ』だ。戻ってなかったのかよ。


「お兄ちゃんたちに何すんのよ!」


「本部に応援要請!」


「ちっ……グレン、やるぞ!」


「ゐーんぐっ!〈ああ、くそ! バレるの早すぎだろ! いいか、お前らは手を出すなよ……〉」


 『えくさ』と『しえみ』に言い聞かせて、俺は登山家共に向かうのだった。


 登山家たちがどこのレギオンかは分からず終いで終わってしまった。

 こんなところにパトロールを出すレギオンがいるのは驚きだ。ポイントにならないだろうに。


「あまろ、何故、奴らを攻撃した!」


 オオミが『あまろ』に厳しい目を向ける。


「ゐーんぐっ!〈オオミ、あまろは、えくさとしえみが攻撃されたことに怒ったんだ。それは人間として当たり前の感情だ。叱るな〉」


 ここが難しいところだ。

 『あまろ』は情緒面の発育が著しいため、怒った。

 これは人として正しいことだ。

 逆に『えくさ』や『しえみ』は攻撃されたことにキョトンとしていた。

 まだ、コミュニケーションのひとつと捉えて

いるのが分かる。


「ゐーんぐっ……〈あまろ、お前の怒りは正しい。ただ、座標爆破はダメだ。お前たちが人間になる上で、その力はネオの証明だ。人間は使えないんだ……〉」


「でも……」


「ダメだなあ、あまろは……」


「ゐーんぐっ!〈えくさ、しえみ、攻撃は敵意だ。お前たちは俺たちと違って復活がない。放置していたら存在が消えることもある。相手の感情を感じることを忘れるな〉」


「はーい……」「はい……」


 そもそもの感覚や認識のズレがあるからな。

 この辺りは難しい。どこまでを敵意として認識するのか。そういう意味では『あまろ』の情緒面の成長は素晴らしいとは思うんだがな。


 俺たちは廃材集めを辞めて、その場を逃げるように立ち去るのだった。



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