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392〈はじめての五人〉


 ネオ人、五人の受け入れは『ガレキ場』の巨大樹の近くに掘っ建て小屋を作ることから始まった。

 ネオ人、五人は『ネオ』の所属を外れて、一度、野良ネオ〈野良ネコではない〉となり、すぐさま『りばりば』の所属となった。


 ただ、これが大変だった。

 今回の秘密協定は『りばりば』内でも、幹部会、そして、ラグナロクイベント時の組み分けで言う白部隊、黒部隊までにしか明かされていない。

 それと、NPCドールたちは全員知っている。

 プレイヤーで言えば、全体の六分の一程度だ。


 新人や元『ガイア帝国』所属、また、エンジョイ勢の一部である戦闘を主にしていない人たち、『りばりば』への帰属意識が低いプレイヤーに今の段階で伝えるのは、かなり厳しいものがある。

 白、黒部隊の人間もかなり細かく規約を作り、プレイヤー人生を賭けて望んでいる。

 なにしろ、秘密を守れなければムック率いるPKK部隊の遊び相手となることが決定している。

 それはイコールでゲームから排除するという宣告に他ならない。


 それはそれとして、大変なのは野良ネオになった時だ。

 見た目は『ガイガイネン』なのだ。

 そんな『ガイガイネン』が野良フィールドに行くことになる。

 白部隊の人間が総出で野良フィールドにトラックを持ち込んで、隠すように彼らを運ぶ。

 そう、選ばれた『ネオ』の五人は『模倣人格』が一人、『シュリンプマン』が一人、大型ガイガイネン『ガンシップ』が一人、小型ガイガイネン『ウィザード』と『ジャマー』が一人ずつという構成だった。

 これは『巨大ナナフシ』や『ザクロダルマ』がいないだけマシと考えるべきかもしれない。


 彼らの移送のために、何日も前から偽装工作をしたり、戦争イベント用に何かやっているらしいと変な噂をこちらから流したりして、事実を隠蔽するために苦心した。

 さすがにこれはSIZUへのレポートにも書けなかった。

 ムックたちと遊ぶのは好きだが、ムックたちの遊び相手になるのは、嫌だからな。

 SIZUから探りを入れる連絡も来ていたが、これは『りばりば』の作戦だからと断りを入れた。

 ただ、現実に何か影響が出ることを考えると、完全に無視もできない。

 『ネオ』絡みの話だと言うことだけ、必死に匂わせた。

 SIZUならば、このヒントからでも答えまで行き着くだろう。


 『りばりば』本部基地内でも、大変だった。

 レオナは何日も徹夜しながら、一人で『ガイガイネン用人間アバター生成カプセル』を作り、野良フィールドと本部基地を繋げる特別ポータルをプライベート空間に設置、最悪の場合〈ここまでの一連の流れがネオの本部襲撃の伏線という可能性は関係者なら、どうしても疑ってしかるべきだ〉を考えて、白部隊で完全に周囲を包囲して、五人の『りばりば』ネオ戦闘員が誕生した。


 『りばりば』所属といっても、このまま本部基地に置かれる訳ではない。

 彼らは『シティエリア』の『ガレキ場』の掘っ建て小屋で生活することになる。

 彼らには、そこで生活しながら人間としての常識を教えていくことになっている。


 模倣人格ネオ『画鳥射(がどりい)る』、シュリンプマンネオ『別眠絵(べねむえ)る』、ガンシップネオ『江草柄(えくさえ)る』、ウィザードネオ『詞笑葉(しえみは)ざ』、ジャマーネオ『甘炉(あまろ)す』の五人は、素直に俺たちの言うことを受け入れていく。

 名前は日本人っぽくアダムがつけてくれたらしい。

 アダムの知識力の低さに言及すると、結果的に己に跳ね返ってくるので、あまり言いたくないが、漢字を使えば日本人なわけじゃねーぞ、と激しくツッコミたい。


 プレイヤー名なら変な名前もたくさんいるので、とりあえずはOKとしたが、彼らと交流する時は全員があだ名呼びになった。

 『がど』『べねむ』『えくさ』『しえみ』『あまろ』と呼んでいる。


 ネオ人への授業は多岐に渡る。

 小学校、中学校レベルの授業も大事だが、何よりも道徳や一般常識の授業こそが大事だ。

 発電機や料理機(ホームメイダー)、携帯用リンクボードに水の浄化装置を持ち込んで、使い方を教えるなどもしている。

 もちろん、俺は言語に不都合があるので先生役は不可だ。

 ネオ人は大抵、【言語】30がデフォルトなのでコミュニケーションに不都合はないが、俺が使う【言語〈古代〉】は一般的ではないからな。

 そう、ここで大事なのはガイガイネンである『えくさ』『しえみ』『あまろ』も【言語】を持っているということだ。

 彼らは、俺たちと違いガチャ魂を持たない。

 代わりにガチャ魂〈コピー〉というのを使っている。

 機能はガチャ魂と基本的に同じだが、コピーを重ねる毎に劣化していくものだ。

 『がど』以外は全員、第二世代コピーのガチャ魂を使っているので、劣化もそれほどではないらしい。

 選ばれた五人ということだ。


 先生役は不可だが、やることはたくさんあるので、俺がやっているのは主に生活周りの整備だ。

 『ガレキ場』で使えそうな廃材を集めて来て、机や椅子、棚を自作したり、自動車の修理なんかもする。


 これが意外と面白い。

 ちょっと『シティエリア』で昔ながらの大工道具なんかを集めてしまったくらいだ。


 そうして、仕事をしながら五人の生徒たちを眺める。

 『がど』はしっかり者の兄という雰囲気で、一番真面目だ。

 『べねむ』は名が体を表しているのか、よく眠そうにしている。ただ、物事の覚えは一番いい。

 『えくさ』は好奇心旺盛な悪ガキという感じで、知らないものを触りまくって壊す、ヤンチャ者だ。

 『しえみ』は真面目だが要領が悪い。『えくさ』に引っ張られてヤンチャに巻き込まれて、よく怒られている。

 『あまろ』は情緒面が一番豊かだ。よく泣き、よく笑う。人間アバターも十歳ほどの少女のものを選んでいて、皆に可愛がられるタイプだ。

 見た目的には二十代から小学生までで、まさに兄妹という感じだ。


 人の姿をしているだけで、随分と印象が変わるものだ。

 ただ、なんでも口の中に入れて分析しようとしたり、感情の昂りに合わせて座標爆破が発動したりする辺りは、やはり『ネオ』なのだと思わされる。


「しえみ、それは食べ物だ。分析が終わったからといって、吐き出すな……」


「はーい!」


「このフォークっての、脆くねえ?

 自分の爪の方が使いやすいぜ」


「べねむ、今はご飯だよ。寝ちゃダメ!」


「Zzz……」


 うん。やっぱり兄妹に見えるな。

 『しえみ』が地面に吐き出したものを食べたり、『えくさ』が人間アバターから大型ガイガイネンに変身解除したり、『あまろ』が『べねむ』に座標爆破を仕掛けているのは、見なかったことにすればだが……。

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