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 俺はお孫様の偉業を早く伝えたくて、SIZUにチャットを送る。


グレン︰今、情動操作の薬の一部を中和するための組成が見つかった。


SIZU︰え、それ本当? 凄いじゃん、グレちゃん!


グレン︰いや、見つけたのはじいじのお孫様で、ロミオって子だ。


SIZU︰お孫様w あれ、でも、見つかったのって、それじゃあ……。


グレン︰ああ、リアじゅー内でだ。だが、組成式があるとかで、現実に持ち帰れるっておじいちゃん先生が保証してる!


SIZU︰おお! ん? ねえ、マギクラウンがやってることの意味、ちょっと分かったかも?


グレン︰どういうことだ?


SIZU︰シティエリアのNPCに対する超能力実験、現実で起きた『作戦行動』フィールド『アースガルズ』の発動。

 先生と同じだよ。『リアじゅー』の技術を現実に持ち込むための実験とその組成式を探ること。


グレン︰それって、例えばこっちの魔法金属を現実で再現するとかそういうことか?


SIZU︰うん、魔法金属はどうだか分からないけど、例えばヒーローの鎧の再現とかは今の技術でも代替品で八割方はできると思うし……もし、宇宙金属の再現ができたら、と思うとかなり怖いよね。


グレン︰ああ、バカ防御力で戦車の砲弾すら弾かれでもしたらと考えると、ヤバいな。


SIZU︰それにNPCにやっていたと思われる、超能力実験を現実にフィードバックして、一般人を超能力兵士にできたりしてもヤバいよ。


グレン︰ああ、緩やかな流れは人の革新、急激な進化は軋轢と争いを生むだろう。


 それこそが静乃が目指すバランスの問題になっていく。

 魔法文明世界が勝利すれば、今後、超能力者は増え続けることになる。

 問題は、その流れの速さだ。

 人間は、ひとつずつ問題をクリアにしていくための時間が必要なのだ。

 特に集団になれば、それは顕著になっていく。


 そう考えると、静乃は今、苦悩しているだろう。

 『リアじゅー』内でどうにかバランスを取ろうとしているのに、現実でBグループは直接的に急激な流れを作ろうとしているのだから。


グレン︰なあ、あまり考えすぎるなよ。一人で背負える問題でもないし、お前だけが背負わなくちゃいけないわけでもないんだからな。


SIZU︰え、あ、うん……そうだよね。うん、分かってる。大丈夫だよ!


 本当かよ、と言いたくなる。

 まあ、静乃は俺よりできる奴だから、余計に深く受け止めてしまう部分もあるのだろう。

 溜め込みすぎないように、こっちから少し気をつけてやらないとな。

 皆にもフォローしてもらえるようにしておこう。

 そう決めて、俺はチャットを閉じるのだった。


 さて、そうなると新フィールドに向かうための装備更新というのも、違うような気がしてくる。

 流れを緩やかにする方法はないだろうか?

 俺は自分の農場へと向かいながら、ぶつぶつと考え込む。

 すると、誰かに服の裾を引っ張られる。


 振り向くとそこには、誰もいなかった。


「ゐーんぐっ?〈は? 怪奇現象か?〉」


「グレンさん、こんにちは!

 できれば下を見て欲しいです」


 視線を下に降ろせば、そこには小学生の女の子。ばよえ〜んが立っていた。


「ゐーんぐっ!〈おう、ばよえ〜んか、久しぶりだな!〉」


 なんだろう? 久しぶりに見た、ばよえ〜んは少し大人びて見える。

 いや、元々ばよえ〜んは、周囲から『ばよえ〜んさん』と呼ばれるくらい、考え方や行動力が大人なので、見た目とのギャップが大きいタイプだが、今はその差が縮まってきたというか……。


「ゐーんぐっ!〈なんか大きくなったか?〉」


「グレンさんと違って、特にアバターは弄ってないです」


 ふるふると、首で否定された。


「ゐーんぐ……〈まあ、子供はある日、急に成長していくもんだしな……〉」


 基地内なら頭上に名前が出る。見た目が変わっても、キャラクターネームを確認すれば問題ない。

 だから、ばよえ〜んも俺に声をかけてくれたのだろう。


「ちょっと付き合って欲しい場所があるです」


「ゐーんぐっ?〈俺にか?〉」


 コクコクと、頷くばよえ〜ん。

 装備更新はお孫様の登場で延期してしまったし、今は静乃のやりたいことを実現するにはどうすればいいかを考えていたものの、俺が考える程度のことなら静乃はとっくに動いているはずだ。

 そう思うと、俺は今、暇なのかもしれない。

 それならば、ばよえ〜んの誘いに乗るのもアリかもな。


 俺は、ばよえ〜んに付き合うことにした。


「ゐーんぐっ?〈それで、付き合うってどこに?〉」


「シティエリアの観光区です」


 『観光区』か。リフレッシュには丁度いいかもな。

 俺はばよえ〜んに付き合って、『観光区』へと向かうことにするのだった。



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