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377〈スターレジェンズの消滅〉


 超能力。リアルスキルの行使にはMPが必要だ。

 『スターレジェンズ』の面々は、本気になった軍隊を相手に善く戦った。

 だが、負けた。


 敵の弾丸を千発防ぐリアルスキルがあっても、千一発目は防げない。

 『スターレジェンズ』の戦いはそういう戦いだった。


 後から聞いたことによれば、この戦いは主に遺伝子組み換え人間デザイナーズチャイルドとの戦いだったらしい。


 この先にある戦いを制するための物量作戦。

 他国との戦争を視野に入れた作戦なのだろう。


 一時期、戦争はどんどん無人化が進み、最終的に各国がこぞって無人兵器を作っていったが、お互いが無人兵器を使った場合、A.I.判断によりお互いの無人兵器の潰し合いを避け、人間だけを的確に狙うようになり、さらに相手を屈服させるために非人道的手段を使うようになり、結果的に無駄死にが出ると分かった。

 そこから、国際条約でA.I.にはロボット三原則に準じた細かい学習要項が科されることになり、A.I.の戦争利用ができなくなると、戦争という行為は泥沼化していった。

 人と人が血を血で洗うことになり、泥臭い昔ながらの戦争行為へと人類は後退していった。

 相手が持たない武器を持ち、如何に効率化させるか。

 相手がこちらの意見を鵜呑みにできるまで人数を減らせば勝ちという行為だ。

 至極、単純な構図。

 戦争とは極論、そういうものなのだろう。


 では、どれだけ人数を減らそうと相手がこちらの意見を聞かなかった場合はどうなるか?


 それは『リアじゅー』世界に答えが出ている。


 レギオン消滅だ。


 誰もいなくなる。

 いや、正確には誰もそこに所属できなくなるのだ。




 その時、『スターレジェンズ』は岐路に立たされていた。

 矢崎は全員を集めて説明するつもりで、『スターレジェンズ』側も全員が話を聞きたがった。


 廃工場に集合した彼らは格好の的だった。


 超能力に覚醒した人たちを次々に勧誘していった『スターレジェンズ』は、百五十人ほどまで膨れ上がっていただろうか。


 今回の攻撃で、公表されたのは死者百三十三名〈内、三十名はテロリスト集団による凶行の犠牲者で軍人六名が〉、逮捕者二十五名というものだった。

 数名の逃亡者を出して、事件はいちおうの幕を閉じた。


 実際のところはと言えば、俺たちが調べた限り、死者五十八名〈アースガルズフィールドの分類間違いによりテロリスト認定された一般人三十名とスターレジェンズにより殺された軍人六名〉、拘束後監禁七十五名、逮捕者二十五名で、俺たちが保護できたのは十八名にすぎなかった。

 逃げられたのはもう少し居たはずらしいが、散り散りに逃げたので、どうなったかは分からないとのことだった。


 『スターレジェンズ』はただ超能力者というだけではなく、『リアじゅー』経験者の集まりでもあった。

 そのため、超能力者としてはそれなりに能力が発現している者が多く、それもまた今回の悲劇を加速させてしまっていた。

 戦えると過信したのだ。

 いや、実際に戦えはした。だが、現実には痛みがあり、ポーションもアンプルもない。

 まさに、いきなり『ラグナロクイベント』に突入してしまったレギオンよろしく、思うような動きはできなかった。

 そうして、『スターレジェンズ』は消滅したのだった。


 俺たちはどうにか十八名の保護に成功はしたが、彼ら彼女らはトラウマを抱え、十二名が海外への亡命を希望した。


 手配を済ませた、どぶマウスが、俺たちの基地の椅子で疲れたように首を回す。


「あ゛ーーーようやく作っておいたルートが使えたのはいいでっすけど、なかなか骨が折れたでっす……」


「オーゥ、どぶマウスさん、お疲れ様デース!」


 アパパルパパが肩を揉んでいる。

 どぶマウスは、あーそこそこ、などと言いながら疲れを全身で表していた。


 実際、会長やどぶマウスがどういう人間なのか知らないが、その知識や伝手は相当なものだ。

 どぶマウス辺りは、たぶん政府関係者かそれに準ずる裏の世界の人間ではないかと思うが、俺から聞く気はない。


 俺たちは、全員が緩く繋がっている。

 知らないことが多い方が、捕まった時に情報を吐かずに済むしな。


「さて、次は新たに奴らに捕まってしまった七十五名についてだが……」


 おじいちゃん先生、先導の元、俺たちは次の動きを考えなくてはならない。

 現実も『リアじゅー』もなかなか忙しくなりそうだ。

 俺は自分で自分の頬を叩いて、気合いを入れるのだった。



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