表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
374/447

374〈霧雨の話〉


───グレン、リアじゅー世界から永遠の闇に堕ちたと聞いたが?───


 『ガイア帝国』幹部、厨二病発症中の十七才、霧雨だ。


───仕事でしばらくログインできなかっただけだよ───


───それで、獄炎の裁定者たる俺に用とは?───


 ああ、今は戦闘後だし、霧雨も興奮しているのだろう。

 完全に厨二病(そっち)モードみたいだ。

 俺はひとつ息を吸って、そちらに自分のチャンネルを合わせる。


───ああ、その獄炎の裁定(ラグナロクイベント)に華を添えたいと思ってな。それも先の戦いで大いに役立った禁断の果実(ウチのやさい)を分けてやろうかとな───


───ほう……それは重畳……それでグレンは代わりに何を得る?───


───幾ばくかの礎たる力(マジカ)欲に塗れた好奇心(じょうほう)、だな───


───よかろう……といってもグレンの好奇心を満たす話か……そうだな、光の勇者(ヒーロー)を名乗る鎧の騎士たちについてはどうだ?───


 霧雨が言ってくる。

 俺としては願ってもない話だ。

 それがいいと、続きを促す。


───無秩序と無法の王冠を被るやつらには、数多の鎧を揃えるだけの充分な核がある。

 だが、そうは言っても、その核は数に比して有象無象がそのほとんどなのだ。

 科学文明側の核の有り様についての知識は?───


 (コア)についてか。

 確か、魔法文明側の(コア)は、(コア):ハサミや(コア):バズーカのように、物体そのものが(コア)として存在しているのが普通だ。

 これらには倍率というのが設定されていて、物によって、能力値がどこまで伸びるかが変わる。そして、(コア)を持つと語尾に変化が現れる。


 一方、科学文明側の(コア)というのは、丸いエネルギー体として見つかるらしい。

 基本的には極大、大、中、小の四種類だ。

 これを鎧にエネルギー源として組み込むことで能力値アップの変身ができる。

 要はデカいエネルギー体の方が、能力値アップの倍率が高いということだ。


 その程度の知識は俺にもある。

 霧雨の話によると、「有象無象」、すなわち『マギクラウン』のヒーローは、能力値アップが五倍程度のそこまでじゃないヒーローがほとんどだと言うことだ。

 たしか、科学文明側の『遺跡発掘調査』でごく稀に拾える(コア)の中でも、希少性は大きさに比例しているはずで、『マギクラウン』がケンカをふっかけた中小レギオンはたくさんあるが、基本的にレギオンが保有していたのは小さな(コア)ばかりだったということなのだろう。


───知識はある。しかし、帝国の質にも量にも勝る働きをしていると聞いている。やはり、連携か?───


───一部、啓蒙深き者(ぐんじオタク)には、視える世界もあるとは聞くが、それだけではない。

 二人、鬼神の如き者がいる───


 これは初耳情報だな。ただでさえ『マギクラウン』は表に出て来ないので、ヒーロー情報が少ない。

 中でも、『ガイア帝国』幹部が鬼神の如きと評するほどのヒーローが二人もいるらしい。


───ひとりは、先の大戦の古兵ふるつわもの、マギシルバー……───


───マギシルバー……───


 あいつ、『リアじゅー』に帰って来たのか……。

 なんだよ……こっちの世界でも洗脳されたままかよ。

 なんだか、哀れに思えてくる。


───もうひとりは、古代鮫の戦士、メガロスペード。

 奴は魔法文明世界の裏切り者だ。俺たちのことに精通し、ガイアの古き英雄を良く知る男……───


 は?

 魔法文明世界の鮫と言われると、俺に思い当たるのは、たった一人だ。

 だが、その名を聞いて、俺は色々なことが繋がるのを実感した。

 奴がガチャ魂酔いを発症しているとは思わなかったが、ベータテスターで、親に勘当され、近親者が少なく、奴が超能力に目覚めたとすると、Bグループに狙われるのも良く分かる。

 何より、俺のリアルを知る男……鮫島。

 

 まさか、俺が三ヶ月、現実で殺されたことの裏には、アイツがいるのか……?


 そうだ、考えてみれば、現実で五杯博士と面識を得た時、俺と『りばりば』のグレンがつながったとして、リアルがバレるにしても、やけに早かった気がする。

 だが、もしアイツが関わっているとするなら、納得できることが多い。

 確かめなくては。


 俺は霧雨との商談もそこそこに、慌ててログアウトするのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ