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373〈ガイア帝国VSマギクラウン〉


 『マギクラウン』。

 Bグループが『リアじゅー』内に作ったレギオンで、あちこちのレギオン、それも敵味方関係なくケンカを吹っ掛ける、『リアじゅー』内の嫌われ者。

 また、他レギオンにプライベートで参加していた軍関係者を強引に引き抜き、自レギオンを増強したり、『リアじゅー』本体であるA.I.システム『ユミル』に侵入、本来ならば不可能なはずの『シティエリア』のNPCを使って実験をしたりとやりたい放題のレギオン。


 これが俺の印象だ。


 実際、ネット内での反応を見てみると、彼らが超能力実験を行う特務部隊者で構成されていることや、NPCに不当な扱いをしていたことなどは秘匿されているものの、他レギオンと一切協調しない唯我独尊で、そのくせ強引な勧誘によってメンバーを引き抜いていく傲岸不遜なレギオンだという、結果的に嫌われ者というレッテルでやっているレギオンだ。


 もちろん、引き抜きにあったレギオンは即日、ポータル位置を変える、レギオン本部のポータルを一時的に停止する、といった対策はしているものの、それを素早く行う資源や資金を持たず、迂闊にポータルをそのままにしてしまう中小規模レギオンが的にされることは良くあった。


 では、今回の『ラグナロクイベント』は何故、起きたのか。


 答えは、『ガイア帝国』から仕掛けたものだったのだ。

 それが実際にどういう経緯だったのかは、正直、俺も分からない。

 ただ、まことしやかに噂されている内容によれば、ヒーローレギオンのくせに人間アバターを交換しない怠慢なのかポリシーなのか分からない『マギクラウン』のやり方のせいで、狙っていた『ガイア帝国』にポータル位置がバレた説と、『マギクラウン』の引き抜きに応じたものの、待遇が悪くて引き抜かれたプレイヤーが古巣に戻るための土産としてバラした説があるらしい。


 後者であれば、まだ人道的な心を持った軍人が居ることになるので、後者であってほしい願望はあるが、プライベートが軍務になったからと、それをできる軍人が今のご時世にいるのだろうか。

 戦争が近いと言われる今の状況で軍務規定を破るとどうなるか、また、それをたかがゲームのためにそこまでやる人間がいるのか、そう考えると前者の説が濃厚だろうとは思う。


 『ガイア帝国』から仕掛けた以上、もちろん勝算があってのことだとは思うが、勝っても負けても現実は大変なことになるだろう。




 静乃たちは火消しのための準備を始めた。

 俺は『ガイア帝国』に近しい者として、情報収集するのが仕事だ。


 大まかなことはレオナたち幹部会から情報として入ってくるが、今回は『ガイア帝国』が先に手を出したとあって、全体的には静観の構えのようだ。


「ガイア帝国は攻めあぐねているようですね」


 ウチの農場でひと休みしに来たレオナに、軽食を振る舞い、話を聞く。


「ゐーんぐっ?〈ガイアから攻めているんだろ? 勝算があったんじゃないのか?〉」


「ええ。プレイヤーの質も装備の質も、更にはプレイヤー人数もガイアの方が上です。

 ただ、マギクラウンは連携力とコアの数が大幅に上回っていたようで、攻めても攻めても跳ね返されてしまうと……ウチに協力要請が来ていましたね」


 (コア)か。

 今まで幾つものレギオンを潰して来た『マギクラウン』だ。

 言われてみれば、納得の話ではある。

 連携力に関しても、そうだ。

 全員が正式な軍人としての訓練を積んでいる。


「ゐーんぐっ?〈それで、協力するのか?〉」


「悩みどころですね……。

 ウチがラグナロクイベントで助けてもらった借りはすでに返しました。

 ガイア帝国が負ければ、ウチが魔法文明レギオンで名実共に一位になれますけど、マギクラウンにさらに資源やレギオンレベルが流れることになります。

 逆もまたしかりですね。

 全体で言うなら、魔法文明レギオンが勝つのが重要ではあるんですが、そうなると魔法文明側のパワーバランスが大きく崩れることになります」


「ゐーんぐっ?〈だが、ガイア帝国が負けるよりは、勝ってもらった方がいいだろ?〉」


「一番いいのは、ガイア帝国が疲弊した状態で勝つことなんですけどね」


「ゐーんぐっ……〈なるほどな……俺が個人でガイア帝国に助力するのは問題ないか?〉」


「ええ、ウチは自由が売りですから」


 やはり、幹部会でも『ガイア帝国』対『マギクラウン』については、大枠でしか理解していないな。

 ここは『ガイア帝国』幹部『霧雨』に協力を申し出る形で連絡を取って、直接、詳しい話を聞くのがいいかもしれない。


 俺は『霧雨』に連絡を送り、返信を待つのだった。



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