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今日は二話投稿予定。

こちらは一話目。


 虹放つ銀の鎧に身を包むマギミスリルの登場に『大部屋』内では様々な声が挙がる。


 「げぇーっ! またミスリルかよ! 」「この前もミスリルだったじゃんよー」「もしかしてミスリルって一人じゃない疑惑とか? 」「それ怖ーよ! 」


 などと嫌ミスリル発言やミスリル多人数説まで出てくる。

 そんな中、俺の肩を叩く人物がいる。


「お、グレン、今日はよろしくシザ! 」


 煮込みだ。


「僕も面白そうなんで一緒にやりますからね」


 ムックもいる。


「私もお付き合いすることにしましたー」


 サクヤも声を掛けてくる。


「ゐーっ! 〈一緒に? お付き合い? なんの話だ? 〉」


「こほんっ……説明が遅れましたね。

 実はグレンさんが前に提案していた『敵戦闘員殲滅部隊』案を『参謀部』に通しました」


 レオナが眼鏡の端を、くいっと上げながら近づいて来る。


「まあ、まずはお試しということで、希望者のみの実験部隊ですね」


 『大部屋』の照明がレオナの眼鏡を光らせる。


「はいシザ!」


 煮込みと共にムック、サクヤが手を上げる。


「ゐーっ! 〈この流れって、俺もか? 〉」


「言い出したのは、グレンさんですよね」


 レオナの口角が上がる。

 俺は肯定の「ゐーっ!」を片手と共に上げた。


 だが、レオナはちゃんと経験値が貰えないという部分に答えを出していたらしい。


「この四人には、参謀部より一人につき五個の魔石を支給します。

 つまり魔石五個を使い切るまでは、敵戦闘員の殲滅に注力して下さいという意味ですね」


「ゐーっ? 〈復活石の紐付けは全員同じなのか? 〉」


「いいえ、まとめると危険かと思い、バラしてあります」


「ゐーっ? ゐーっ! 〈まとめられないか? 敵戦闘員から見えない位置に復活石を置ければ、数的不利を減らせる〉」


「なんなら数的優位を保てるかもしれないシザ」


「それは、諸刃の剣ですねー。

 私たちの湧き位置が見つかったら、リスキル放題ですよー」


「でも、実験だと言うならそれぐらいしてもいいんじゃないかな? 」


「それはそうかもですねー。

 元より嵌ればめっけものという実験ですしねー」


 レオナは俺たちの話を聞いて頷く。


「分かりました。では、そのように…… 」


 レオナが空間にパネルを開いて、少し弄ると、俺たちの紐付けはすぐに変更される。


「ゐーっ! 〈じゃあ、煮込み。お前が運び屋な〉」


「僕たちは煮込みさんがいい場所を見つけるまでの盾だね」


「りょーかいですー。久しぶりに楽しそうでいいですねー」


 サクヤが締めくくると、ライブ映像を映す大画面では『ドリルクスシー』こと歯医者が『マギミスリル』に掴まれて、歯科医院からぶっ飛ばされるところだった。


「ぐはぁっ! もし普通の歯医者だったらどうするつもりドリー! 」


 デカいガラスをぶち割るように『ドリルクスシー』は投げ出されるも、器用に受け身を取って構える。


「ふん、ほぉれは間違えなひ! 」


 だっさ!


 未だ『擬似歯劇薬』が効いてるのかよ。

 だが、これが一般流通に乗れば、アフレコされて何事も無かったようになるのは目に見えている。


「ゐーっ…… 〈ふん、動画になればだけどな……〉」


「何か言ったシザ? 」


「ゐーっ! 〈ああ、ヒーローが倒されたら、動画になるのかと思ってな〉」


「ああ、ここでマギミスリルを倒して、こちらから動画化、ネガティブキャンペーンを張るのも楽しそうですねー」


 サクヤ……なかなかにやべぇ奴かもしれん。


「データは撮ってますよ。頑張ってくださいね! 」


 レオナが拳を、ぎゅうっと握り言ってくる。

 普段の才女っぽい雰囲気を急に崩されて、年相応の仕草に思わず俺は微笑む。


「ゐーっ! 〈紅茶、用意しとけよな〉」


 レオナの頭に、ポンと手を置く。


「あ、グレンがレオナを誑かしてるシザ! 」


「ほうほう……やはり、女王様タイプにぐっとくるんですねー」


「ああ、そういう…… 」


 ムックが、納得したように手を打つ。


「ゐーっ! 〈いや、納得すんなよ。レオナとは貢献度を稼いだら紅茶を奢ってもらう約束をしてるだけだ〉」


 にひひ……と煮込みが笑うと同時に、大画面でも動きがあった。


「ドリルチェーンジドリ〜! 」


───これよりレイド戦に移行します───


 人間アバターから白衣を着たモグラドリルに変身する。

 尖った口がドリルで、左手にドリル、足のつま先もドリルという、ドリルドリルした姿だ。

 頭に巻いてる反射板は古き良き時代の歯医者アイコンだな。


───『レイド戦』ルールにより、NPCは隔離されます───


「くっ……はあくしろ…… 」


 早くしろ、か? おそらく『マギミスリル』が早く自陣営の戦闘員を寄越せと通信しているのだろう。


「先にこちらから行くドリ〜! 」


 『ドリルクスシー』の右手が白衣のポケットに伸びる。


 レオナが叫ぶ。


「それでは皆さん、張り切ってお願いします! 

 いってらっしゃい! 」


 画面の中の『ドリルクスシー』が虹色の復活石をバラまいた。


「りばりば戦闘員、かも〜んドリ〜! 」


 歯科医院の駐車場、辺りは民家が多く、高い建物はそう多くない。

 俺は、やってやるぞと気合いを入れて、他の戦闘員たちと共に「イーッ!〈ゐーっ!〉」と叫ぶのだった。


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